工事現場の困難を克服するのは「アイディア」
現場管理者・技術屋は、様々な条件下で、仕事をしなければいけない。特に、中小の建設企業になると、現場の運営を一人でやらなければならないことも多いので大変だ。
施工計画、発注者への対応、地元との調整、協力業者の手配、事務的作業……etc.
そして、実際に現場が始まれば、当初計画とは異なる想定外の事態が起きる。そうした時に、困難を突破するのが現場監督、技術屋としての「アイディア」だ。
「通行止め」せずに、カルバートBOXを敷設
私が数年前に担当した工事現場は、総延長約1㎞の区間の古い排水路を撤去・新設して、舗装を全面打ち換える工事だった。
いわゆる普通の工事。ただし、少々条件が厳しくて、以下のような工事だった。
- 車道幅員が約3mと狭い。
- 地域のメインストリートになっている。
- 住宅は勿論、会社や店舗、スーパーなどが沿線にびっしり張り付いている。
- 片側歩道、しかも一方通行。
地元の挨拶廻りと、交通規制だけでも頭が痛かったが、工区の中程に脳みそをフル回転させなければいけない関門があった。
それは、交差点角にある集水桝間の道路を横断する排水路(カルバートBOX)を敷設する、というもの。その交差点は、主道路(メインストリート)が一方通行、従道路は両側通行になっていて、従道路から主道路側に車が流れ込んで来るという場所だった。
そして、地元と発注者からは、「通行止めにしないでね」と優しく釘を刺されていた。
通行止めにできないのに、道路を横断させなければいけない?
いくら悩んでも答えが出ないので、その日はとりあえず「寝て待つ」ことにした。
フツーの工事でも現場監督は「直感」が大事
あくる日、現場を眺めていると、交差点の角に材木屋さんの事務所があり、その裏の敷地内がコンクリート舗装になっていることに気付いた。
ふと、「ここにミニ・バイパスを作ろう!」という考えが浮かんだ。
主道路側に面した箇所は、もともと乗り入れになっているし、従道路側は、蓋無しの現場打ちの排水路なので、覆工板や敷鉄板などで養生すれば、乗り入れが作れる。
早速、材木屋の社長さんに許可をもらい、勢いに乗って次は、仮設計画を作成して、発注者へ連絡。さらに、地元への周知、予告看板の設置、誘導員の確保なども抜かりなくやった。
結果は、大成功。同じ路線、他工事の協議会メンバーからも「良く思いつきましたね!」と褒められた。
自分でも、「ナイスアイディア!」と思ったが、たまには、こんな自画自賛もあってこそ、現場は楽しい。
やはり同じ現場は1つもないので、ICT施工やi-Constructionが進んでも、現場での直感的な判断や閃きなどは、熟練の技術屋の領域だと思う次第。
フツーの工事現場でも、創意工夫を常に忘れてはいけない。