福岡市役所がつくった「FUKUOKAモデル」を紐解く
国土交通省をはじめ、全国の自治体では、ずいぶん前から「無電柱化」に取り組んでいる。
無電柱化とは、道路沿いに設置されている電柱や電線などを地中に埋設することを指す。なぜ地中化するのかと言えば、まちの景観を損なうということほか、地震や台風などで倒壊すると危ないとか、倒れた電柱が道路をふさぐと通行できなくなることがある。
筆者としては、「非常にもっともなことだし、早く電柱がなくなれば良い」と以前から思っていたわけだが、その進捗となると、全国的に見ても芳しくないところがある。この点、「やっぱりちゃんと予算がつかないからだろうな」と漠然と考えていた。
そんなとき、福岡市役所が無電柱化を推進するために「FUKUOKAモデル」をつくったという情報を耳にした。FUKUOKAモデルとは、どのようなものなのか。これによって何がどう変わるのか、興味が湧いた。ということで、福岡市役所の無電柱化推進プロジェクトチーム(PT)のメンバーの方々に話を聞いてきた。
「コスト」、「スピード」、「住民理解」という課題
――無電柱化を進めるうえで、どのような課題があるのですか?
蓮尾さん 無電柱化を進めるうえで、3つの大きな課題があります。1つ目が「コスト」、2つ目が「スピード」、3つ目が「住民理解」です。これらのため、無電柱化は、福岡市をはじめ、全国でもあまり進んでいません。
福岡市内の道路延長は約3,900kmありますが、無電柱化率はわずか3%(市内の国道、県道、市道、平成29年度末)にとどまっています。日本で一番進んでいる東京23区でも8%です。一方、海外では、ニューヨークが83%、ロンドンやパリに至っては100%に達しています。
――緊急輸送道路の無電柱化率はどの程度ですか?
蓮尾さん 20%程度です。市が管理する緊急輸送路の延長は233kmほどありますが、無電柱化されているのは、そのうちの45kmほどです。緊急輸送路の無電柱化率を100%にすることが、われわれがまず目指すべきところだと考えています。
――そもそもなぜ無電柱化が必要なのですか?
蓮尾さん まず、地震などの災害が発生した場合、電柱が倒壊し、周辺の建物などを損壊するリスクがあります。道路上に倒壊すると、緊急車両をはじめとする車両交通の妨げになります。あと、電柱、電線によって、周辺の景観が損なわれるケースもあります。
近年は、地震や水害などの自然災害のリスクが高まっています。福岡市役所としても、「無電柱化をなんとか前に進めなければならない」という思いがありました。そこで、福岡市役所として、無電柱化推進PTを立ち上げたわけです。
柔軟な発想を期待し、若手中心PTが発足
――無電柱化推進PTを立ち上げた理由はなんでしょうか?
安河内さん 無電柱化がなかなか進まない中、柔軟な発想のもと、抜本的な対応が必要だということで、若手主体で考えてもらおうということで、道路下水道局として、PTを設置した経緯があります。PT設置には若手職員の育成というねらいもあります。
――無電柱化推進PTのメンバーはどういった方々ですか?
蓮尾さん 無電柱化推進PTは、福岡市役所の20才代、30才代の職員を中心として、電気・通信事業者の社員を加えた15名のメンバーから成る組織です。平均年齢は33才(2021年4月時点)です。道路下水道局だけでなく、観光や景観の視点から経済観光文化局、住宅都市局の職員も入っています。職種も、土木だけでなく、事務職や建築職などの職員がいます。
――いつPTを設置したのですか?
古市さん 国では11月10日を「無電柱化の日」と定めています。福岡市では2020年11月10日にキックオフ宣言を行いました。PTでは、ビジョンに「無電柱化リーダー都市の実現」、コンセプトに「空を感じる道づくり」を掲げ、無電柱化を推進するための手法について、様々な検討を行ってきました。そして今年5月、これまでの検討成果をとりまとめ、高島宗一郎市長に対し、令和2年度の活動報告を行いました。