技能実習と特定技能の受入れ目的の違い
技能実習と特定技能との大きな違いは受入れ目的にあります。また制度的に技能実習が2016年に開始、特定技能は2019年に開始された制度になります。
それぞれの制度の違いを説明すると、技能実習制度の趣旨は、日本での技能実習を自他発展途上国へ活かすための技能移転です。
受入れる人材も、入国時には技能を持っていなくても、技能実習2号の場合であれば3年間で技能検定3級相当の技能を、技能実習3号の場合であれば5年間で技能検定2級相当の技能を身に付ければよいことになっています。
母国で日本語教育を受け入国時には最低限の日本語能力が求められ、技能を習得するのは入国後になります。そして日本で修得した技術・技能を本国へ持ち帰り、それらを本国で伝播するということが目的となっています。
一方、特定技能制度の目的は、生産性向上や国内人材確保の取り組みを最大限行ってもなお人手不足が深刻な産業分野のための人手不足解消なので、その目的から技能実習とは大きく異なります。
特定技能は、すでに相当程度以上の知識又は技能を持っているものであることが必要です。1号特定技能の外国人は、技能検定3級相当以上の技能を有し、かつ、日本語能力試験N4以上の能力を有するという、いわば「即戦力」が求められるところが違いとなります。
技能実習2号を終了した方であれば、特定技能1号に移行が可能となり引き続き5年日本で技術を磨くことが可能です。建設分野は、特定技能2号まであり特定技能2号になれば在留期間の上限はなくなり家族帯同が許可され家族へも在留許可が付与されます。
建設技能実習のはじめ方
建設分野での技能実習生の失踪が多発したこともあり、2020年1月より制度が変更され、新規技能実習生の受入れ基準が強化されました。
技能実習をはじめるにあたり、重要な4つのポイント、変更された点、受入れ可能職種をご紹介します。
【ポイント1:建設業法第3条の許可】
建設業法第3条の許可を所得していなければ、これから新規の技能実習生の受入れはできません。こちらの許可は、受入れ職種以外の建設業許可でも問題ありません。
【ポイント2:建設キャリアアップシステムの導入】
受入れ企業、技能実習生ともに建設キャリアアップシステムの登録が必要になります。2024年までにすべての建設にかかわる技能者の登録が求められています。
【ポイント3:給与の支払いは月給制のみ】
技能実習生に報酬を安定的に支払うことを目的に、天候を理由とした休業も含め、使用者の都合による休業の場合には、労働基準法に基づき、平均賃金の60%以上を支払う必要があります。休業する日について、本人から年次有給休暇を取得する旨の申出があった場合、年次有給休暇としても問題ありません。
【ポイント4:監理団体への加入】
外国人実習生を企業が受入れる際には、企業単独型と団体監理型のどちらかを選択します。企業単独型は、日本の企業が直接、海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受入れて技能実習を実施する型式です。団体監理型は、非営利の監理団体(事業協同組合、商工会など)が技能実習生を受入れ、傘下の企業などで技能実習を実施する型式です。
企業単独型の場合、自社で受入れを行わなければいけないので、業界の最大手であれば可能ですが、自社での場合は難しく、ほとんど団体監理型を選択するのが現状です。各監理団体を通して技能実習生を受入れを行うことになります。
団体監理型の場合、監理団体に加入して送り出し機関より技能実習生を受入れることになります。
【変更点:受入れ人数の制限】
企業が受け入れられる技能実習生については、上限数が定められています。
ポイントは下記の3つです。
- 常勤職員数には、外国にある事業所に所属する常勤の職員、技能実習生、外国人建設就労者及び1号特定技能外国人を含みません。
- 下記の人数を超えることはできません。
・1号実習生:常勤職員の総数
・2号実習生:常勤職員数の総数の2倍
・3号実習生:常勤職員数の総数の3倍
※団体監理型技能実習にあっては、申請者が同条の基準に適合する優良な実習実施者であり、かつ監理団体が一般監理事業に係る監理許可を受けた優良な監理団体である場合には、「技能実習生の総数が常勤の職員の総数を超えないこと」という要件は課されません。 - 建設関係職種等に属する作業に係る技能実習生の受入れ人数の基準は、令和4年4月1日より施行されます。
※現状、技能実習1号・2号の実習生が常勤職員数より多い場合は、施行期日までに調整する必要があります。
また、理事、監事、取締役などの役員は、会社から労働の対価を得ている場合を除いては、常勤職員としてカウントすることはできません。「取締役部長」という肩書があっても、会社から役員報酬しか支払われていない場合には、常勤職員とすることはできません。「部長」としての労働の対価(給与)が支払われていれば、常勤職員としてカウントすることが可能です。
【受入れ可能職種】
建設で受入れ可能な職種は下記になります。
各職種で作業内容が決まっており、作業には必須業務、安全衛生業務、関連業務・周辺業務があります。必須業務は50%以上の作業と安全衛生業務は10%以上必要と定められています。
職種 | 作業名 |
さく井 | パーカッション式さく井工事 |
ロータリー式さく井工事 | |
建築板金 | ダクト板金 |
内外装板金 | |
冷凍空気調和機器施工 | 冷凍空気調和機器施工 |
建具製作 | 木製建具手加工 |
建築大工 | 大工工事 |
型枠施工 | 型枠工事 |
鉄筋施工 | 鉄筋組立て |
とび | とび |
石材施工 | 石材加工 |
石張り | |
タイル張り | タイル張り |
かわらぶき | かわらぶき |
左官 | 左官 |
配管 | 建設配管 |
プラント配管 | |
熱絶緑施工 | 保温保冷工事 |
内装仕上げ施工 | プラスチック系床仕上げ工事 |
カーペット系床上げ工事 | |
銅製下地工事 | |
ボード仕上げ工事 | |
カーテン工事 | |
サッシ施工 | ビル用サッシ施工 |
防水施工 | シーリング防水工事 |
コンクリート圧送施工 | コンクリート圧送工事 |
ウエルポイント施工 | ウエルポイント工事 |
表装 | 壁装 |
建設機械施工 | 押土・整地 |
積込み | |
掘削 | |
締固め | |
築炉 | 築炉 |
塗装 | 建築塗装 |
鋼橋塗装 |
※外国人技能実習機構HPより作成
建設特定技能のはじめ方
2019年4月より施行され新しく創設された特定技能外国人制度では、建設分野のみ受入れの際に、国土交通省に建設特定技能受入れ計画の申請が必要になり、また建設技能人材機構(JAC)の賛助会員の加入が必要になります。
特定技能をはじめるにあたり、重要な6つのポイント、受入れ可能職種をご紹介します。
【ポイント1:建設業法第3条の許可】
建設業法第3条の許可を所得していなければ、これから新規の技能実習生の受入れはできません。こちらの許可は、受入れ職種以外の建設業許可でも問題ありません。
【ポイント2:建設キャリアアップシステムの導入】
受入れ企業、技能実習生ともに建設キャリアアップシステムの登録が必要になります。2024年までにすべての建設にかかわる技能者の登録が求められています。
【ポイント3:建設技能人材機構(JAC)等の賛助会員への入会】
特定技能人材を受入れる際には、建設技能人材機構(JAC)の賛助会員になるか、建設技能人材機構(JAC)の正会員である39団体(2020年9月29日時点)の賛助会員になることが必要です。
入会のポイントは2種類
- 建設技能人材機構(JAC)の賛助会員に入会する
※建設技能人材機構(JAC)の正会員になることは現実的に不可能なため、賛助会員への入会となります。入会の際は、下記の会費が必要となります。 - 正会員の39団体の賛助会員に入会する
※各団体により入会条件・審査・入会費などはすべて異なります。
【ポイント4:受入負担金】
建設業界の特定技能受入れには、建設技能人材機構に受入負担金を毎月一人当たり下記金額を支払う必要があります。技能実習との大きな違いはこの部分になります。
【ポイント5:給与の支払いは月給制のみ】
技能実習生に報酬を安定的に支払うことを目的に、天候を理由とした休業も含め、使用者の都合による休業の場合には、労働基準法に基づき、平均賃金の60%以上を支払う必要があります。休業する日について、本人から年次有給休暇を取得する旨の申出があった場合、年次有給休暇としても問題ありません。
【ポイント6:登録支援機関への委託】
下記に記載した業務を、自社内で対応可能であれば登録支援機関への委託は必要ありませんが、不可能な場合は委託されることをお勧めいたします。
特定技能1号外国人に対する支援内容(法務省の資料を元に要点を抜粋、詳細は特定技能運用要領を参照)
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- 雇用契約や日本で行える活動内容など、事前ガイダンス提供
(在留資格申請前。対面/テレビ電話/Skype等で本人確認が必要なため、郵送やメールのみは不可。外国人が十分理解できる言語により、例えば3時間程度) - 出入国時に空港などへの送迎
(出国時は保安検査場の前まで同行、入場の確認が必要) - 住宅確保の支援
(保証人の確保、1人当たり7.5平方メートル以上の居室面積) - 生活に必要な契約の支援
(金融機関の口座開設、ライフラインや携帯電話の契約など) - 生活オリエンテーションの実施
(生活一般、行政手続き、相談・苦情の連絡先、外国人の対応が可能な医療機関、防災・防犯・急病など緊急時対応、出入国・労働法令違反など法的保護。少なくとも8時間以上行い、確認書に署名が必要。ポータルサイトやガイドブックに参考情報掲載) - 日本語を学習する機会の提供
(日本語教室/自主学習教材/Eラーニング講座の情報提供など) - 相談・苦情に対して遅滞なく適切に対応
(外国人が十分理解できる言語により、平日のうち3日以上、土・日のうち1日以上、相談しやすい就業時間外などにも対応できる体制が必要。対応は相談記録書に記録する。行政機関へ相談や通報した場合は、支援実施状況の届出書に記載) - 日本人との交流の促進支援
(必要に応じ、地域住民との交流や地域の行事、自治会等の案内や参加手続きの補助) - 非自発的離職時の転職支援
(次の受入れ機関の情報提供、ハローワークや職業紹介事業者等の案内、推薦状の作成など。求職活動のための有給休暇付与、離職時に必要な行政手続きの情報提供は義務) - 外国人及びその監督をする立場にある者と定期的に面談
(当該外国人が十分理解できる言語により、3ヶ月に1回以上の実施。定期面談報告書を作成) - 労働関連法令違反時に行政機関へ通報
- 雇用契約や日本で行える活動内容など、事前ガイダンス提供
上記を委託可能な機関が登録支援機関になります。登録支援機関により金額やサポートは異なりますので、確認が必要です。
【受入対象職種】
下記が受入対象職種です。作業内容も技能実習より柔軟な作業が可能となります。また、まだ対象職種にない技能実習にある職種も今後検討されています。
また、下記が技能実習からの移行可能職種を示した図になります。
【受入け人数】
建設では、特定技能と特定活動で就労する外国人の合計が、受入れ企業の常勤職員の人数までとなっています。
ここでの注意点は、「技能実習生の数がすでに常勤職員数を超えている。なおかつ特定技能に移行を希望しており、その人数が常勤職員を超えている場合に調整が必要」ということです。
【申請の流れ】
申請の流れは、下記とおりです。ポイントは、国土交通省に承認をもらい、その後に法務省に1号特定技能外国人支援計画を提出になります。
技能実習・特定技能のまとめ
技能実習制度が始まって以降、多くの技能実習生に技術移転されてきました。その多くの方が帰国して活躍されています。
そして、国内の深刻な人材不足を背景に成立した特定技能。まだまだ始まったばかりの制度ですので、これからの業界のためにもしっかり理解して活用していただくことが必要です。
第2回は、技能実習・特定技能のメリット・デメリットについて掘り下げていきます。
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