「猪突猛進型」が私の長所。山形の測量設計事務所でICT化を担う若き女性技術者

成田 南さん(株式会社寒河江測量設計事務所空間情報部)

「私は猪突猛進型」 山形の測量設計事務所でICT測量技術者を目指すドボジョ

会社のICT化を担う若き女性技術者

株式会社寒河江(さがえ)測量設計事務所(本社:山形県寒河江市)には、同社のICT化を担う若きドボジョがいる。入社4年目の成田南さんだ。

「まちづくりに関する仕事がしたい」ということで同社に入社。実際に史跡の保存整備や測量業務に携わる中で、ICT化を司る空間情報部に配属。ICT化というミッションも与えられ、現在に至っている。

最近では、UAVレーザ測量などによる三次元計測、データの解析・処理、納品まで手掛けるほか、最新のICT機器、ソフトウェアに関する情報収集も重要な仕事の一つになっている。

そんな成田さんにとって、日々の仕事はどう映っているのか。オススメのソフトはなにか。ICT化をはばむカベにはどのようなものがあるのか。いろいろ話を聞いてみた。

「私は建築学科出身ですが、土木をやりたかったんです」

――土木に興味を持ったきっかけは?

成田さん もともとは「建築士になりたい」と思っていて、地元の仙台市内にある大学で建築を学んでいました。大学で都市計画・地域計画の講義を受けて、「おもしろい」と思ったのが土木に興味を持ったきっかけだと思います。今思えば、父も土木業界で働いていて、仕事の話を聞いていたので、その影響もあったのかもしれません。

――建築から土木に興味が移ったのは、どういうところで?

成田さん 自分の興味の対象が「建築物」から「まちづくり」に変わったのが、大きいと思います。「この分野で仕事をするなら、土木業界に行ってみたい」という感じで、自然に土木にシフトしていったところがありました。

所属していた研究室では、伝統的な町並みや農村景観の調査をしていました。自分の研究では、茅葺き屋根のある町並みが好きだったので、実際に全国の茅葺き屋根のある集落でフィールドワークをしながら、景観形成に関する研究をしていました。

ハキハキ話すスタイルが印象的な成田さん

――就活はどんな感じでしたか?

成田さん 建設コンサル関係を中心に就活をしたのですが、かなり苦労をしました。はじめは、建設コンサル系を複数受けたのですが、最終面接まで行って全部落ちちゃったんです(笑)。

周りの友人はどんどん内定をもらっていて焦りや不安はありましたが、土木業界をあきらめきれませんでした。そんなときに受けた面接で「私は建築学科出身ですが、土木がやりたいんです!」と熱い気持ちをぶつけた会社があって、その気持ちを受け入れてくれたのが寒河江測量だったんです。

――地元である仙台市内で働きたいというのはとくになかったですか?

成田さん 地元志向みたいなものはありました。仙台市内というよりは「東北で仕事をしたい」と考えていました。

――やりたいまちづくりの仕事とはどういうイメージだったのですか?

成田さん 都市の再生整備をやりたいと考えていました。地域ならではの景観や特性を活かししつつ、次世代につながるような町の整備をするといイメージです。


測量の知識ゼロでICT測量

空間情報部メンバーと成田さん

――会社に入ってからはどういう仕事を?

成田さん 入社後1~2ヶ月ごろから、山形県大江町の国指定史跡左沢楯山城という史跡の保存整備事業に関わりました。整備後の城内外からの景観がとても重要視されていたので、UAVレーザ計測のデータと学生時代に培った3DCADの技術を使ってVRシミュレーションによる眺望環境整備の検討を行いました。この業務がきっかけで三次元データを扱うことが増えて、現在ではレーザ測量の計測、解析、処理などのICT技術を使った業務を担当しています。

――入社後いきなりやりたかった仕事ができた感じですか?

成田さん そうです。本当にラッキーだったなと思います。

UAVをセットアップ中の成田さん

――仕事で苦労したことは?

成田さん 測量ですね。トータルステーションが何に使う機械なのか分からないような状態で入社しました(笑)。なので、測量のやり方や測量用語を覚えるのにかなり苦労しましたし、たくさん失敗もしてしまいました。新しい測量技術はもちろん、従来の測量のやり方について今も勉強中です。

ICT技術はあっても、まだ使い切れていない

――会社として早くからICTの導入をしていたのですか?

成田さん 私が入社したころには、当時最新と言われたICT関係の機器がいろいろ導入されていました。なので従来の測量機器を覚えるのと一緒にICT機器の扱い方も覚えていった感じです。はじめは社内での3Dデータの処理がほとんどでしたが、3年目あたりから三次元計測の計測者として現場に行けるようになりました。

――どういう機器などを使ってきたのですか?

成田さん おもにUAV測量やレーザ測量をするので、現場の状況に合わせて数種類のUAVやレーザスキャナを扱っています。ソフトウェアで言えば、三次元点群データを解析・処理・図化するソフトをよく使っています。

――発注者に3Dデータをそのまま納入することはあるのですか。

成田さん 最近は増えてきているように感じますが、全体でみるとそのまま納入は少ないですね。3Dデータから図面を作成して納入することが多いです。業務でも、社内全体でもICT化が定着するには、まだ時間がかかるのかなと思っています。もっと3Dデータを活用してもらえるように、様々なギャップを私なりに埋めていきたいという思いながら、日々の仕事をこなしているところです。


点群処理は私にまかせて!

――ICT系の技術や商品の開発は日進月歩なので、情報収集するのも大変でしょう。

成田さん そうですね。ウチでは部署内での情報交換が多くて、ICT担当者でネットや雑誌、同じICT系の計測機器を使うユーザー仲間から集めた情報をよく共有しています。気になるものがあればメーカーに問い合わせをしたり、デモをしたり、常にアンテナを張っている感じです。

――自分で探して、実際に使ってみて良かった商品は?

成田さん 最近だと、オンライン上で点群処理ができる「スキャン・エックスクラウド」ですね。自動フィルタリングの精度が圧倒的に高いです。今は「スキャン・エックスクラウド」と福井コンピューターの「トレンドポイント」を併用して点群処理をすることが多いです。三次元データの処理は、使う計測機器や現場の状況、目的によって使いやすいソフトが違ったりするので、どのソフトがベストかという見極めを大切にしています。

様々なソフトを駆使しながら点群処理作業をする成田さん

――「土木系はソフトウェアが価格が高い」という声を聞きますが。

成田さん そうですね、高いと思います。今はいろんなソフトが出ていますし、それぞれに得意不得意があるので、良い処理環境をつくろうとするとかなりのコストになると思います。

――用途に応じて、複数の3Dソフトウェアを使い分けている感じですか。

成田さん そうですね。例えばUAVレーザ測量をした場合だと、飛行計画・計測・解析・処理・図化のそれぞれの作業でソフトが違ったり、複数ソフトを使用したりします。なので、6つとか、多いと10のソフトを使い分けたりします。

――これ一つで全部の作業ができるというソフトはないわけですか。

成田さん ないですね。一本化できれば断然良いのですが(笑)。

先を行くICT測量技術者になりたい

――これからやりたいことは?

成田さん 次世代の測量に対応できるICT測量技術者として技術をつけたいです。資格だと測量士・技術士の取得を目指して、測量の分野で頑張っていきたいと考えています。

――個人的には、寒河江測量設計事務所のアイコンとなって、ICT化の取り組みをドンドン外に発信していってもらいたいところです。

成田さん ぜひそうしたいと思っています(笑)。多くの人にお会いして、いろいろなことを勉強したいと思っているので、そういうつながりはたくさんつくりたいと常々考えています。

――結構ガンガン前に出るタイプなんですね(笑)。

成田さん そうかもしれません(笑)。私は干支が亥(イノシシ)年なのですが、そのことを言うと周りからは「だから猪突猛進なのね」とよく言われます。自覚はあるので(笑)、これが自分の長所だと思って、様々な業務に挑戦していきたいです。

クラウドで3D点群データを自動解析する「スキャン・エックスクラウド」が始動

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