【恐怖】杭を打ち終えたはずなのに、1本だけ杭が残った「根固め工法」

施工管理の失敗を隠さず、建設業界全体の糧に!

半世紀近く施工管理の仕事をしてきた私は、これまでにオフィスビル、分譲マンション、公営住宅、病院、学校、スーパー等さまざまな建設現場を手掛けてきました。たくさんの現場を経験したぶんだけ、見舞われたアクシデントの種類も豊富です。

施工管理技士にとってアクシデントは勲章とは言えませんが、最良の教師ではありますので、施工管理に関する失敗の体験を共有することで、業界全体の糧になれば良いと考えています。

「品質」に日本一厳しい工事監理者

あれは日本で一番品質に厳しい、という定評があった発注事業者の現場を担当した時のことです。

RC造2階建、PCφ450、L=11m、200本程の杭を打つ「根固め工法」の現場でした。

1日12~3本の杭を打つので、トレーラーに載せられた杭が1回につき10本で運ばれて来るのですが、その杭を発注元の工事監理者がくまなくチェックします。これがまた厳しい!普通の現場なら問題なく使えるような、ちょっとした擦り傷なんかもチェックされて、NGをくらうといちいち送り返さないといけないんですね。

工事監理者の基準で毎回チェックするわけですが、10本のうち、NGの杭が1本あった場合でも、梱包の問題で1本だけ返品するわけにはいかないわけです。これも仕事ですが、これがまた面倒で仕方がなかった。

大きな杭をいつまでも現場に転がしておくわけにもいかず、次の杭6本が運ばれて来たら、4本降ろして2本を載せたまま、前回の要返品の杭1本を載せて3本にして返品。こんな作業を搬入の度にしなくてはならず、面倒ながらもチェックと返品を繰り返しました。

杭(悔い)が残った根固め工法

そして、いよいよ杭打ちの最終日。あと4ヶ所打てば終了のはずなのに、なぜか杭が5本残っていました。じわじわと湧き上がる、不安と疑問。

作業員の皆さんも、うすうす気付いているし、他の管理メンバーも気付いているけれど、とりあえず残り3ヶ所、2ヶ所と杭打ちは進み、図面上でラストの杭を打って印を付け、最後の杭の作業を終えても、やはり1本残っている。

全ての杭を打ち終えたはずなのに、1本だけ地面に杭が転がっているんです。もちろん杭担当者も、杭メーカーの人も、杭の数を勘定していましたが、これはきっと、返品作業の時に忘れられたに違いない。

常識的に考えて、きちんと日付別に色分けして図面に印を付けているのですから、間違えているはずがありません。そう思いながらメーカーの担当者に確認すると「ちゃんと数をカウントしているので絶対に間違いない。1本余計に出すわけがない!」と断言されたのです。

とすると、もしや打ち忘れ……身の毛もよだつ状況です。そんなミス、絶対にあるはずがないと思いながらも、実際に現場に杭が1本残っている現状は変わるわけでもありません。

しかし、全ての杭を掘って確認するとなると、大変な作業量となります。時間が掛かりますし、杭打機を一度解体するとなると、工程の日数も無駄にしてしまう上、組みバラし及び回送費も発生します。この現場はかなりの突貫工事でしたので、さてどうするべきか?

杭メーカーに何度も確認しましたが、「杭を余計に出すわけがない!間違いない!」と主張します。あってはならない事ですが、強いて言うなら打ち忘れの可能性……打ち忘れがあるかもしれない場所、基礎3ヶ所(18群)を仮掘りしてみましたが、当然杭が埋まっているワケです。

いつまでも作業を中断しているわけにもいかず、早く決断を下さなければなりません!かなり悩みましたが、自分達のチェックを信じ、予定通り杭打機を解体する事にしました。そして掘り方が終わった時点で、杭が全てきちんと施工されていることを確認できました。その後の工事は順調そのもの。

ここまで工事が進んでようやく杭メーカー側は出荷間違いを認めざるを得なくなったわけですが、杭メーカーにとってはまさに「杭(悔い)が残る」現場となったのでした。

無事に竣工を迎える事ができたから笑い話になりましたが、この現場と同じ間違いをしないよう、悔いが残らないよう、杭の数え間違いには注意しましょう。という施工管理の昔話でした。

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引退間近の土木施工管理技士。娘も建築業界で働く建設一家。 施工管理技士の教訓につながるよう、さまざまな体験談を共有する。
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