「自分は会社員に向いていない」 現場で出会った技術者の話

「自分は会社員に向いていない」 現場で出会った技術者の話

某現場で出会った、フリーの技術者

数年前、ある地域で仕事をしたときに一緒に働いていた技術者の話だ。

その方は50代前半で、基本はフリーで仕事をしていた。時々、契約社員や派遣社員として会社に雇用されて、いろいろな職場で働いてきたと話をしてくれた。その時は某派遣会社の派遣社員として、その現場に来ていた。

20代の頃は、ゼネコン社員として現場管理や技術支援などの業務を経験し、30代になってからは一貫してフリーで仕事をしていて、その人曰く「自分は会社員に向いていない」とのことだった。

正直どこまでが事実かはわからないが(笑)、いろいろ話を伺うと数年先まで仕事の依頼があると言っていた。自治体勤務の役人からも声がかかるそうで、時々電話で話をしているのを聞いたこともあった。

その人と出会うまでは、どこかの会社に雇用されて働くことしか知らなかったし見てこなかったので、その人の働き方は異色に感じた。一方で、「こんな形で働くことができるのか」という驚きもあった。

「仕事に人がつく」ではなく「人に仕事がつく」

その人と出会い、話を聞いた時、私の中で衝撃が走ったのを今でも覚えている。

「人に仕事がついてまわる」というのをそれまで見たことがなかったし、何かしら会社に属さないと仕事をさせてもらえるわけがない、と思っていたからだ。

しかし、派遣社員として働いていたときを振り返ると、仕事ができる人には常に仕事の声かけがあったし、「次はこっちに来てよ」と言われることが絶えなかったように思う。

建設業はずっと人手不足で、どこの現場・職場でも人を欲しがっている。なので、よっぽど使い物にならない限りは、給料の多い少ないはあるにせよ、仕事に困ることはほとんどないだろう。

そういう意味では、派遣社員という立場はフリーに近いかもしれないし、フリーで働いている人との相性もいいかもしれない。

通常であれば、「仕事に人がつく」のが当たり前だろう。建設業界だけでなく、製造業でもサービス業でも同じだ。日本のみならず外国であっても、何かしら仕事があって、それに見合う人をあてていくのが普通ではないだろうか。

そう思って生きてきた私にとっては、人ありきでその人に見合う仕事をあてていくというのは、まず見られない光景だったし、とても新鮮だった。

だが、冒頭で話した技術者のように、私が知らないだけで実は、人に仕事がついてくるという状況は意外と多いのかもしれない。この記事を読んでいる読者の方にも、実はそういう人がたくさんおられるのではないだろうか。

常に選ばれる人であれ

人に仕事がつく、人に仕事が回ってくる、ということは、会社や顧客、あるいは市場からその人が常に選ばれる人である、ということと同義ではないかと思っている。

なんでもこなせる必要はなく、たとえば「橋梁工事の設計図面や工事に必要な施工図作成ができる」とか「工事現場で起こる問題解決ができる」、「トンネル工事の施工管理ができる」といった「○○ができる人」が、常に選ばれる人ではないだろうか。

だが、「マネジメントができる」とか「管理ができる」だけだと、常に選ばれる人となれるかどうかは疑問である。部長職や課長職などの管理職の人に多く見られる傾向だが、「こういう組織をマネジメントしてきました」では、ちょっと弱い気がする。

「マネジメントをして、こういう成果を出した」という指標がないと難しいだろう。「こういう現場をマネジメントして、このくらい利益を出せた」とか、「こんな現場で発注者から表彰を受けた」といった、目に見えるものがあると、その人に「仕事がつく」ようになるのではないだろうか。

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大手建設会社に勤務する30代の建設技術者。 工事費1000億円超の現場で、計画・設計等を担当しています。
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