ヤング係数とは?単位や求め方、木材や金属類のヤング係数まで簡単解説

構造力学や構造設計には、ヤング係数という概念があります。ヤング係数は、材料の強度や弾性を表す指標のひとつで、建築材料として使用されている金属類やコンクリート、木材といった材料によって値が異なります。

建築業界では、このヤング係数を用いて、たわみや歪みを計算しています。この記事ではヤング係数の考え方や計算方法について、わかりやすく解説していきます。

ヤング係数とは

ヤング係数とは、材料の強度や弾性を表す指標のひとつです。

イギリスの物理学者トーマス・ヤング氏が定義したことから、ヤング係数と命名されました。トーマス・ヤング氏は、他にも、エネルギーという用語を最初に使い、その概念を導入したことでも有名です。

ヤング係数が大きければ材料が固くなり、逆に低い場合は材料がやわらかくなります。コンクリートのたわみや歪みの変形を計算する場合や、応力を推定する場合に使用します。

単位

ヤング係数の単位は「N/mm²」「MPa」「GPa」を使用します。建築では「N/mm²」が多く使用されています。

物体は外力を受けると、それにつりあうように内力が働きます。この力を応力と呼び、単位断面積当たりの力「N/mm²」や「kgf/cm²」で表します。

応力が発生すると物体は変形します。その時の変形量を長さ当たりの単位に換算したものを「ひずみ」とよび、単位を持たない「無次元量」で表されます。

「ひずみ」は弾性体においては応力に比例し、応力とひずみの比率を表す値がヤング係数になります。

他の呼び方「縦弾性係数」

ヤング係数には、様々な呼ばれ方があります。ヤング係数の次に多く使用されている呼び方は「縦弾性係数」でしょうか。垂直に加えられた力に対する材料の固さを表したものになるため、「縦」弾性係数と呼ばれています。

他にもヤング率・伸び弾性率・弾性率という呼び方がありますが、全てヤング係数のことを指しています。

横弾性係数

ヤング係数は別名「縦弾性係数」と呼ばれていることを解説しましたが、ヤング係数(縦弾性係数)とは別に「横」弾性係数も存在します。

縦弾性係数は引張りに対する抵抗値を表していますが、横弾性係数はせん断力に対する抵抗値を表す値です。他にも、横弾性率・せん断弾性係数・せん断弾性率・剛性率・ずれ弾性係数・ずれ弾性率などの呼び方があります。

ヤング係数比

ヤング係数比とは、鉄筋のヤング係数Esとコンクリートのヤング係数Ecの比率のことで、nで表します。ヤング係数比を用いることで、鉄筋とコンクリートに作用する応力を計算できます。

ヤング係数比はこのような式で算定します。
n=Es/Ec

鉄筋とコンクリートのヤング係数はそれぞれ以下の値になっています。
鉄筋:Es = 205,000[N/mm²]
コンクリート:Ec = 21,000[N/mm²]

そのため実務上、鉄筋とコンクリートのヤング係数比はn=15として計算しています。鉄筋とコンクリートのヤング係数とヤング係数比はよく使用するため、覚えておきましょう。

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ヤング係数の大きさによる材料の特徴

ヤング係数とは、材料の強度や弾性を表す指標です。ヤング係数は値が大きければ材料が固いことを表し、値が小さければやわらかいことを表しています。

材料によってヤング係数の値は異なり、値の大きさは材料の特徴を表します。建材として使用するには、材料の特徴を踏まえることが必要です。

ここからは、ヤング係数の大きさによる材料の特徴を解説していきます。

ヤング係数が大きい場合の材料の特徴

ヤング係数の値が大きい材料には以下のものがあります。

  • 金属類
  • セラミックス
  • 鉱物

ヤング係数の値が大きい材料は、ある一定の力を超えるまでは変形することがありません。しかし、限界を超えると、一気に破損するという特徴を持っています。

そのため、ヤング係数の値が大きい材料は、脆いと考えられています。変形すると危険な場所や、変形してはいけない場所に使用します。

ヤング係数が小さい場合の材料の特徴

ヤング係数の値が小さい材料には以下のものがあります。

  • 木材
  • ゴム類
  • 樹脂類

ヤング係数の値が小さい材料は、力を加えても突然破損することはありません。力を加えても、伸びたりたわんだりします。ゴムなどを想像すればわかりやすいでしょう。そのため、ヤング係数の値が小さい材料は、柔軟性が求められる場所に使用します。

ヤング係数の求め方

ヤング係数の求め方にはポイントがあります。力を加えると変形しますが、力を加えることをやめると、元の形に戻る物体があります。

そのような物体を「弾性体」と呼びます。「弾性体」には、「応力」と「ひずみ」の関係性に「フックの法則」が成り立ちます。この「フックの法則」を利用することで、ヤング係数の算出が可能です。

「フックの法則」と「応力とひずみの比例」について解説していきます。

応力とひずみ

応力とは、物体に外部から力を加えたときに発生する内力のことです。外力と応力が釣り合うことで物体は破損しません。応力の単位はkNまたはNです。

ひずみとは、物体に外部から力を加えたときに発生するひずみのことです。ひずみは無次元数のため単位はありません。ひずみは以下の式で表されます。

ε(ひずみ)=ΔL(変形量)/L(元の長さ)

フックの法則

ヤング係数は「フックの法則」よって求められます。「フックの法則」は「弾性状態では応力とひずみが比例関係にある」ことから、以下の式で表されます。

σ(応力)=E(ヤング係数)× ε(ひずみ)

ただし、「フックの法則」が適用されるには条件があります。材料が「弾性状態」であることです。鋼のように力を加えると変形してしまい元の形に戻らない材料には適用できません。

材質ごとのヤング係数

建築材料には様々な材料が存在します。硬いものや、やわらかいもの、変形しやすいものといった多種多様な材質があり、材料によってヤング係数の値も異なります。

使用頻度が高い材料については覚えておくことで、算出が容易になります。金属類やコンクリート、木材といった建材として使用頻度が高い材料のヤング係数と特徴について解説していきます。

金属類

鋼やアルミをはじめとした金属類のヤング係数の値は一定です。強度の変化にも影響されません。例えば、鋼材のヤング係数は約205,000N/mm²、アルミのヤング係数は70,000N/mm²と言われています。

ヤング係数の値は種類によって異なるため、使用頻度が高い金属類に関してはヤング係数の値を覚えておくと良いでしょう。

コンクリート

コンクリートのヤング係数は金属とは異なり、以下のような式によって求めます。

Ec(ヤング係数)= 3.35×10^4×(γ/24)^2×(Fc/60)^(1/3)

強度(Fc)が大きいほどヤング係数も大きくなります。近年では、コンクリートの研究が行われており、より高い強度を持つコンクリートが作られています。鋼よりも優れた材料になる日も近いかもしれません。

木材

木材のヤング係数は7,000N/mm²~12,000N/mm²と言われています。しかし、木材はヒノキやスギをはじめとして種類が多いため、種類によってヤング係数や強度が異なります。

また、木は生き物です。木の種類だけでなく、その日の天候や気温によってもヤング係数は異なります。机上の計算だけでなく経験に基づく見極めも必要です。

ヤング係数の求め方を知ろう

この記事ではヤング係数の考え方や、計算方法について解説してきました。ヤング係数は材料の強度や弾性を表す指標のひとつで、材料によって値が異なります。

ヤング係数の値が大きい材料は脆く、値が小さい材料は柔軟性があることが特徴で、それぞれの特徴を活かして使用することが必要です。

使用頻度が多い材料のヤング係数を頭に入れておくことで、構造計算がより容易になるので、覚えておきましょう。

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