建設業法のポイントを解説。目的や禁止されていることを知っておこう

建設業法のポイントを解説。目的や禁止されていることを知っておこう

建設業で仕事を行う上で避けては通れない法律は、建設業法です。建設業法は29種類の業種が建設工事を請負う場合に適用される法律です。

建物そのものだけでなく、工事方法も建設業法によって定められています。しかし、建設業法をすべて読み込み、頭に入れることは困難です。

この記事では、建設業法の目的や変遷、守るべきルールを詳しく紹介していきます。改めて、建設業法のポイントを理解し、法律違反することなく建設業を行いましょう。

建設業法の目的と変遷

建設業法の最終的な目的は、「公共の福祉の増進」です。その目的を達成するために建設業法が定められています。

また、建設業法は制定されてからずっと同じではなく、時代背景によって改正されています。特に国内において災害や事件、イベントがあったときに改正されることが多いです。

建設業法の目的や改正の変遷について詳しく紹介していきます。

建設業法の主な目的

建設業法には、目的である「公共の福祉の増進」を達成するために、以下の3つのことが定められています。

  • 建設工事の適切な施工の確保
  • 発注者の保護
  • 建設業の健全な発展

これにより、建設業を営む人の資質向上と、建設工事の請負契約の適正化が実現できます。手抜き工事や中抜き工事といった不正行為を起こさないための法律ともいえます。

建設業法の変遷

建設業法は戦後復興により、建設業者が急増したことによって不適正施工や代金未払いといった契約面での問題が発生したことから、1949年に制定されました。

建設業法は時代背景によって改正されています。東京オリンピック開催のようなイベントだけでなく、不祥事の発生などにより、関係者を守るために法律改正が行われてきました。

また、バブル崩壊やリーマンショック、東日本大震災といった、受注競争が激化する要因があった場合にも法律改正が行われています。

すべては建設業にかかわる人を守るための改正です。

禁止されていること

建設業法では以下のような事項が特に禁止されています。

  • 下請けへの不当に安い請負報酬での発注
  • 一括下請けの禁止

建設業において、弱い立場になってしまうのが下請け業者です。立場を利用した元請業者が、不当に安い金額で発注するケースが発生していました。それを守るために、禁止事項が定められました。

禁止事項の制定は下請け業者を守るだけでなく、発注者を守ることにもつながっています。安い金額で発注された場合、最終的に影響がでるのは品質です。

適正な金額で発注することで、品質が担保されたものが出来上がり、発注者を守ることにもつながるのです。

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建設業法のルール

建設業法で定められているルールは多岐にわたります。主に以下のものがあり、違反した場合の罰則も規定されています。

  • 建設に関する許認可
  • 現場管理
  • 書類等
  • 下請け契約

国土交通省から「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」や「建設企業のための適正取引ハンドブック」が発行されていますので、目を通しておくと良いでしょう。

とはいえ、ガイドラインやハンドブックを読み込むことも困難かもしれません。ここでは、建設業法のポイントを押さえたルールを紹介していきます。

対象となる工事・業務

建設業法は、以下の29種類の工事が対象とされています。

  1. 土木一式工事
  2. 建築一式工事
  3. 大工工事
  4. 左官工事
  5. とび・土工・コンクリート工事
  6. 石工事
  7. 屋根工事
  8. 電気工事
  9. 管工事
  10. タイル・れんが・ブロック工事
  11. 鋼構造物工事
  12. 鉄筋工事
  13. 舗装工事
  14. しゅんせつ工事
  15. 板金工事
  16. ガラス工事
  17. 塗装工事
  18. 防水工事
  19. 内装仕上工事
  20. 機械器具設置工事
  21. 熱絶縁工事
  22. 電気通信工事
  23. 造園工事
  24. さく井工事
  25. 建具工事
  26. 水道施設工事
  27. 消防施設工事
  28. 清掃施設工事
  29. 解体工事

思い浮かぶ工事のほとんどが対象となるため、対象外となる工事の種類については気にする必要はありません。

建設業法の対象外となる工事の基準は金額です。以下の会社については、国土交通省大臣や都道府県知事により建設許可が不要なため、建設業法の対象外となります。

  • 500万円以下の工事しか行っていない会社
  • 建築一式工事で、1500万円以下の工事のみを行っている会社

作ったものを自分で利用する場合も建設業法の対象外です。あくまでも、請負契約が発生する場合、建設業法の対象となります。

また、重機を使って積雪や残土を運搬する場合も建設業法の対象外となるので注意してください。

主任技術者

建設業法では26条により、主任技術者と監理技術者についての規定があります。主任技術者とは、現場監督や作業における責任者のことで、監理技術者とは主任技術者の上位資格を持った者とされています。

工事現場における技術上の管理を受け持つため、請け負った工事を施工するときには必ず主任技術者を置かなければいけません。監理技術者の配置は条件付きです。請負金額が一定以上の場合に配置が必要とされています。

また、公共性がある重要な工事では、現場ごとに専任の主任技術者または監理技術者の配置が必要です。

契約書

元請業者は、下請け業者に契約書の交付が必要です。契約書は、工事着工前に締結することが法律で定められています。

建設業の許可を取らずに工事ができる業者であっても契約書は交わしてください。トラブルを回避するためにも、以下の内容を書面化しましょう。

  • 工事内容
  • 工事場所
  • 工期
  • 請負代金
  • 支払い方法
  • 調停人

また、契約書と合わせて約款の提出も必要です。約款は、様々な利用者との契約内容を画一的に対応するために定められた契約条項です。

トラブル発生時の解決方法といった、契約書には記載していない詳細な事項を記載します。工事ごとに個別に契約条項を定める労力を回避するために制定されています。

見積もり期間

見積もりは、契約書を作成する前に必要です。下請け業者に負担をかけないために、見積もりについても、建設業法で定められています。

建設業法では見積期間について以下のように定められています。

  1. 500万円未満の工事:1日以上
  2. 500万円~5,000万円未満の工事:10日以上
  3. 5000万円以上の工事:15日以上

ただし、2と3の工事については、”やむを得ない理由がある場合に限り”は中5日以上とされています。

このとき、1日という表現には注意が必要です。民法には「初日不算入」という原則があり、依頼した日は1日としてカウントしません。そのため、1日は実際には2日後となりますので気を付けてください。

営業所

営業所についても建設業法で定められています。その理由は、建設工事は社会への影響が大きなインフラを担っているためです。

インフラの工事に関しては、国や都道府県は各建設会社の活動範囲を把握しなければいけません。営業所とそれ以外の倉庫や事務所を区別することで、行政側の管理が円滑になります。

営業所を設ける場合、都道府県の許可を得る必要があります。複数の都道府県に設ける場合は、国土交通大臣の許可も必要です。

建設業法では、本社や請負契約を締結している支店や事務所、または請負契約を指導監督している支店や事務所を「営業所」と定めています。

資材置き場や倉庫は「営業所」ではありません。これらを「営業所」とした場合、資材置き場を動かすだけでも届け出が必要になるため、事務手続きの負担が増加します。負担を軽減するためにも、「営業所」が定義化されています。

建設業法を守るための行動

建設業法を守るためには、正しい行動をする必要があります。元請と下請での立ち位置の違いや違反行為を把握することで、正しい行動をとれます。

また、組織として違反行為が無いかをチェックする体制作りも必要です。

ここからは、建設業法に違反しないための行動や、違反してしまった場合の罰則について詳しく紹介していきます。

違反しないための行動

まずは、違反行為を知ることが大切です。国土交通省や各自治体では、建設業法令遵守ガイドラインを公開しています。ガイドラインには違反行為や過去の事例が記載されているため、わかりやすく学べるので目を通しておきましょう。

建設業法は、ひとりの社員が違反しただけでも、会社の責任も追及されます。そのため、社員として建設業遵守に取り組む必要があります。

勉強会や講習会といった社内教育を実施するほか、チェックする仕組みをつくることも大切です。

違反した場合

違反した場合の罰則を知ることで、建設業法遵守への意識が高まります。一番重い罰則は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」で、許可なく工事を行った場合や、営業停止処分中の営業が対象となります。

提出する書類に虚偽があった場合は、「6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金」となります。当たり前ですが、正確かつ誠実に書類を作成しましょう。

工事現場に主任技術者や監理技術者を置かなかった場合や、許可行政庁からの要請に対して不誠実な対応をした場合も罰則の対象です。この場合は「100万円以下の罰金」になります。

また、刑事罰ではないものの過料の対象となる罰則もあります。廃業届提出を怠った場合や、標識の掲示義務違反、帳簿の漏れや虚偽の記載をした場合は「10万円以下の過料」になります。

一度、建設業許可が取り消されると、5年間は建設業許可を取得できませんので注意しましょう。

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建設業法を理解して適切な現場管理をしよう

この記事では、建設業を行う上で押さえておきたいポイントについて紹介しました。

建設業法は、「公共の福祉の増進」を最終目的として制定された法律です。時代の変化に沿って改正も行われています。立場が弱くなりやすい下請業者を守るだけでなく、発注者も含めた建設業にかかわるすべての人を守る法律です。

建設業の発展のためにも、しっかりと内容を把握し、法律違反することなく建設業を行いましょう。

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