性能向上リノベの会

YKK APが「性能向上リノベの会」を発足。ストックの課題である「断熱と耐震」を解決へ

1万棟の戸建性能向上リノベを目指す

YKK AP株式会社は2021年10月1日、全国の住宅事業者を対象に中古戸建住宅リノベーションの活性化を目的とした「性能向上リノベの会」を発足した。古くなった建物に新築以上の価値を与える「戸建性能向上リノベーション事業」に取り組みやすい環境を整え、市場の普及促進を図る。

YKK APは、「性能向上リノベの会」で事業者と連携した取り組みを通じて、2030年度に累計1万棟の戸建性能向上リノベーションの実施目標に掲げ、リノベーション市場の活性化に向けて取り組む。事業の拡大により、住宅からの CO2排出量削減、そしてカーボンニュートラル社会の実現へ貢献することが狙いだ。

現在、40社ほどの住宅事業者が参加に前向きであり、リノベーション業界や関連協会も設立を歓迎する声が上がっている。

今後のYKK APのリノベーション戦略を俯瞰する意味では大きな注目点と言えるだろう。

「性能向上リノベの会」関連の施工は2030年度に累計1万棟を目標に

性能向上リノベで社会課題の解決目指し、新たな市場を狙う

「性能向上リノベの会」は、主に住宅事業者などのプロユーザーを会員対象とし、物件選定の事前相談・調査・契約・設計・工事管理・引き渡しなど工程ごとに業務フローやプロセスを公開することで、リノベーション事業への参入にボトルネックとなる要素を解消する。

また、温熱計算、耐震診断、住宅ローンや補助金の申請など、煩雑な業務面では、各分野の専門企業による提携サービスを取り揃える。

専用サイトを通して、認知拡大に向けた施工物件の事例紹介による営業サポートや、有識者のオリジナルセミナーを通じた交流や事業者同士をつなぐネットワークの場を提供していく。

なぜYKK APは、「性能向上リノベの会」を設立したのか。それにはさまざまな背景がある。YKK APの菊井 利樹執行役員リノベーション本部長は言う。

「ストック住宅において、温水便座普及率は80%だが、複層ガラス・二重窓は29%であり、窓の高性能化はまだ道半ばであり、この分野のビジネスチャンスは大きい」

窓は断熱にも大きな役割を果たし、YKK APの主力商品の一つだ。さらには、「ストック住宅の活用や空き家対策」や「カーボンニュートラル社会の実現」という社会課題の解決を図るうえで、性能向上リノベーションという新たな市場を生み出す意味は大きく、ストックの時代にふさわしい市場といえる。

さらにストック住宅そのものの課題も山積している。たとえば、国土交通省によると、2017年というやや古いデータだが、断熱性能では90%が現行基準を満たしていない実情や、木耐協が約2万7,000棟の耐震性能を確認したところ、90%以上が震度6強以上の地震で倒壊の可能性がある・高いという耐震診断結果が出ている。

こうした背景もあり、YKK APは、窓やドアなどの開口部メーカーとして日本の中古住宅市場が抱える課題に向き合い、実物件で実証する「戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト(以下、PJ)」を 2017年度から日本全国でリノベーション事業者と共働で取り組んできた。

そこで、リノベーションでも「HEAT20 G2」(概ね13℃を下回らない)、耐震等級では安全・安心の3相当(熊本地震でもほぼ無被害)を実現してきた。ちなみに、PJの「鎌倉の家」では、リノベーション後の冷暖房費シミュレーションでは38%を削減している。次に「福岡橋本の家」の耐震性能は、リノベーション前は震度6でも、「倒壊する可能性が高い」であったが、リノベーション後は、「倒壊しないという」というシミュレーション結果となった。

一連のPJでは、下記5点の気づきがあったとのことだ。

  1. リノベでもG2×等級3は十分実現可能
  2. ただし、改修費用は2000万円前後
  3. どこまで改修コストを抑えて、性能向上できるか?
  4. 補助金活用は有効だがハードルが高い
  5. 物件の選び方・見立て方は大切な要素

PJでは施工などでも再現性も高く、ほかの事業者でも実現可能であるとも分かった意義も大きい。


入会すれば技術面など幅広くサポート

性能向上リノベーションのメリットは提案の幅が広がるなどがあるが、一方ノウハウ不足などのデメリットもある。だからこそ、全国でPJを繰り返して実施し、ノウハウを蓄積する必要があり、2022年度も継続して行う予定だ。

このPJで得られた知見やノウハウをもとに、満を持して、提案メニューを充実させ、全国で本格的に展開するため、「性能向上リノベの会」の発足に至ったのである。これには各種サポートメニューを取り揃えることで、性能向上リノベーションの敷居を低くするのが狙いにある。

例えば、技術面では、性能向上リノベーション特有の業務フローの可視化を行い、そのフローに沿って、実務に特化した独自のマニュアルやツールを提供、ボトルネックになりやすい事前相談・調査・契約などの入り口フェーズから、施工、引き渡しまで技術的業務をトータルにサポートするメニューを用意する。中でも興味深いのは、建物全体を総合的に調査するなど、全工程の52項目についてチェックできるチェックリストや工事コストを容易に算出できる仕組みだ。

 

さらに、提携サービスによる業務サポートでは、省エネ計算や、補助金申請などの煩雑な業務や住宅ローンまで性能向上リノベーション特有の悩みに応える専門会社による独自のサポートメニューを各種用意、住宅事業者を断熱、耐震、住宅ローン、補助金や保険などの面からサポートする。

また、会員同士のネットワークでは、先進的な実績がある会員との交流はもとより、有識者からの情報共有を図り、性能向上リノベーションに関する最新情報や必要情報を適切にアップデートし、様々なコトや企業をつなぐ役割を担い、順次展開するコンテンツの拡充を進める。

入会により、事業者のブランディングも

このほか、営業サポートでは、性能向上リノベーションの認知拡大と、普及促進を図る取り組みや活動を通して、個社ではできない企業ブランディングの向上を図るだけでなく、営業ツールの提供など幅広い役割を担う。

例えば、断熱と耐震のそれぞれの現行基準を3段階のグレード呼称に分類し、性能向上リノベーションがされた証として可視化した「性能向上登録証」を物件ごとに発行し、生活者にとって分かりやすい情報を提供する。

また、施工物件事例を専用サイトで公開し、紹介を進めていくことで、性能向上リノベの認知拡大に繋げていく。

現在、日本国内に6000万戸以上ある住宅のうち、約9割は現行の省エネルギー基準の断熱性能を満たさない住宅とされる一方、政府の掲げる「2030年までに温室効果ガス排出量 46%削減(対2013年比)」や「2050年のカーボンニュートラル社会の実現」のためには住宅の断熱化・省エネ化が欠かせない。

特に、戸建住宅では、窓からの熱の流出入は最も大きな割合を占めており、住宅における冷暖房費抑制のためには窓の断熱化が重要だ。また、耐震性能においても、開口部は弱点となり得る重要な部位といえ、開口部の設計配慮を行うことで住宅の耐震性能を高めることができる。

まず足元での目標は、2022年度には200社による累計200棟を、2024年度では500社による累計1,000棟の施工をそれぞれ目指す。

加盟条件だが、国土交通省リフォーム事業者団体登録簿の構成員もしくは建設業許可、宅建業、設計事務所登録のいずれかを取得されていることなどで、YKK AP商品を積極的に採用する事業者だ。元請事業者、工務店やリフォーム店などは正会員となり、入会金は5万円で、年会費は3万円。対価として、性能向上リノベーションのマニュアル、基本メニュー、各種専門メニュー、研修会・セミナー、事業者紹介、事例掲載などの情報を取得できることで、事業者としての実力をよりアップすることが可能だ。

断熱と耐震の性能向上リノベーションでこれからを暮らす家の新しいスタンダードをつくるためのプラットフォームを目指す「性能向上リノベの会」。これから、YKK APは地域工務店や建設会社の戸建性能向上リノベーションのビジネス展開を支援することになり、これらの住宅事業者との連携について新たなステージに入ったと言えるだろう。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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