黒川 誠司さん(首都高技術株式会社 インフラデジタル部次長)

黒川 誠司さん(首都高技術株式会社 インフラデジタル部次長)

【首都高技術インデジ部シリーズ第2弾】公認会計士資格でインデジ部のチャレンジを支える

【首都高技術インデジ部シリーズ第2弾】次長・黒川 誠司さん

首都技インデジ部シリーズ第2弾は、首都高技術株式会社インフラデジタル部(以下、インデジ部)次長の黒川誠司さんだ。黒川さんは、首都高速道路株式会社プロパーのドボク屋さんだが、首都高時代は、アメリカや東南アジアなど海外滞在期間が長いという珍しいキャリアを持つ。

首都技出向の前は、バンコク駐在員事務所長の職にあった。さらユニークなのは、米国公認会計士(USCPA、以下CPA)を取得していることだ。以前、建設会社の役員を務める公認会計士の方に取材したことはあるが、CPAを持つドボク屋さんは初めてだ。黒川さんのこれまでのキャリアを中心にお話を伺った。

メンテナンス業務をDXするセクション

今年4月、首都高速道路から首都高技術インデジ部に出向。「メンテナンスに携わったのは、今回が初めて」と言う。ただ、インデジ部は、自らメンテンナンス業務をこなすセクションというよりは、メンテナンス業務をDXすることに軸足を置くセクションだ。

そういう意味では、インデジ部の仕事は「やりやすいし、おもしろい」と話す。インデジ部では、営業活動がメイン。国や地方自治体などに出向き、インフラドクター、インフラパロトールについてプレゼンする日々を送る。

ドライブが好きで首都高に入社

大学生のころから車好きで、アップダウンやカーブのある首都高はドライブコースとして好きで、よく走っていた。大学で学科を選ぶ際、最初は社会工学に行きたいと思ったが、「ドボクのほうが就職が良いぞ」というウワサを耳にし、なんとなくドボクを選んだ。

大学院では交通計画を専攻。構造物というよりは、交通需要予測や交通政策を研究していた。首都高就職には、転勤がないことや海外留学制度があったことも決め手になった。

日本国内の転勤はイヤだが、海外勤務はウェルカム

バンコク駐在時代、現地の交通安全キャンペーンイベントに参加した黒川さん(右から2人目)。お隣のハッピを着た人物はタイの運輸大臣。

最初の仕事は、大宮線の都市計画決定手続き。次の勤務先は海底トンネルの現場事務所。その次は鶴見つばさ橋の設計。その後、アメリカのロサンゼルスにある南カリフォルニア大学に留学。マスター課程で都市計画や公共政策について学んだ。

帰国後は計画部に2年間勤務した。中央環状線の調査事務所などを経験した後、JICA専門家としてカンボジアに2年間の赴任。帰国後は、国際部門に所属し、JICA業務でフィリピンに4ヶ月ほど長期出張した。その後、日本高速道路インターナショナル株式会社、通称JEXWAY(ジェックスウェイ)に出向し、海外道路投資事業のファイナンス業務などに3年間携わる。

出向から戻ると、首都高のバンコク事務所で4年3ヶ月ほど勤務し、インフラドクターの海外展開にも携わる。海外で勤務した期間は、留学も含め、トータルで8年以上に上る。

黒川さんの首都高での仕事は、とにかく海外部門が長かった。とくに2010年以降はずっと海外部門だった。「海外部門と言っても、仕事の内容は国内と基本的に同じ。高速道路の計画、建設、維持管理などの課題について現地政府などと意見交換し、解決策や日本の技術ついて提案する。」のが主な仕事だったと振り返る。

そもそも、転勤がないのが理由で首都高に入社したはずだが、海外滞在は苦にならなかったのか、素朴な疑問が湧く。本人いわく「いつも新しいことを発見できる海外勤務はウェルカム」とのことだ。

新しいことをやるには、ゼロベースで考える必要がある

これまでの仕事で印象深かったのは、バンコク事務所に駐在中、ある事業権入札案件に関わったことだ。現地政府関係者と入札条件を交渉したり、金融機関と金利などを交渉したりしながら、現地パートナー会社とは応札に向けた様々な検討をした。

日本ではまず経験する機会がない海外ならではの経験だった。結果的には、現地の鉄道会社グループが低価格で落札したが、「世界から様々な企業の参加する国際競争入札だったので、非常に勉強になった」と振り返る。

海外で日本との違いを痛感したのは、「徹底した合理主義」、「自分の足でしっかり立たないとやっていけない」ところだ。

例えば、大学の授業で意見を求められたときに、日本では他の学生と似た意見を言っても、なんとかなるが、アメリカでそれをやると、「あなたの存在価値はない」という烙印を押されてしまう。「常に人と異なる意見を求められるので、最初はツラい思いをしたが、結果的には非常に鍛えられた」と言う。

この点、「なにか新しいことを始める際には、物事をゼロベースで考える必要がある。ゼロベースで考えることで、新たな視点が生まれたり、新たなマーケットが見つかったりすることがある。」と指摘する。

「何か役に立つかな」でCPAを取得

黒川さんがユニークなのは、仕事のかたわらCPAを取得したこと。取得のきっかけは、首都高の民営化だった。財務を担当していたわけでもなかったが、「会計の知識があれば、仕事でなにかの役に立つかな」というのが動機だった。大学の先輩がCPAの取得を目指しているという話を聞いて、触発されたというのもあった。

最初は日本の公認会計士も考えたが、国際資格で筆記試験だけで取得できるCPAを選んだ。CPAの試験のユニークなのは、決まった日時に決まった会場で試験を受けるのではなく、オンラインで試験を受けられることで、日程も試験会場も比較的に自由に選ぶことができた。

試験科目は4科目だが、4科目すべて1回で合格する必要はなく、1科目ずつ合格すれば、1年半以内であれば、CPAの資格が取れた。

ジェックスウェイ出向時やバンコク駐在時に、PPP事業の入札案件や現地法人設立に向けた検討業務に携わったときは、CPAで勉強した知識が大いに役立った。「まさかCPAの知識が本当に仕事に役立つとは思わなかった」と振り返る。

「将来的には、インデジ部として国内事業のみならず、タイを中心にASEAN諸国などへ事業展開する機会があれば、ビジネスモデルの策定など資金面での検討も必要となってくる。技術だけでなくファイナンスという面からも、インデジ部のチャレンジを支えていきたい」と力を込める。

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