紙を使い続ける人は時代遅れか?
今、日本中でペーパーレス化が進んでいる。建設業界においても、ペーパーレスの方針が少しずつだが浸透してきている。
成果品の電子納品は、建設会社でも建設コンサルタントでも当たり前になりつつあるし、資料のやり取りはメールなどを介してデータで行われるのが普通だ。
たとえば、報告書はワードやPDFであったり、図面であればCADデータであったりと、少し考えただけでも日常的に電子データが飛び交っている。
一方で、紙に打ち出す人は、実は今も多いように感じる。人によっては「データでちょうだい」という方もたくさんいるが、紙に出してほしいと主張する人も多い。
それを「なんだ?この古い考え方は」と、足蹴にしてしまうのもどうなのか?と私は思う。
なぜかというと、“理由があって”紙にプリントアウトしている人が少なくないからだ。その理由とは何か?
プリントアウトするとミスに気づきやすい
その理由は、「間違いに気づきやすいから」ではないかと私は考えている。
私がよく出くわす場面なのだが、パソコンの画面上でチェックしても見つからなかったのに、紙にプリントアウトするとすぐにミスしていることに気づく、なんてことがよくある。
たとえば、鉄筋の加工図と鉄筋表の不整合、横断図に記載した土工表と数量計算書の土工計算と数値が違っている、条件とアウトプットが異なっている、などなど。
紙に出すとすぐ気づく間違いが、画面上で見ると不思議と気づかない、なんで?と思うことがよくある。皆さんはそういった経験はないだろうか?
なぜミスに気づかないのかというと、『全体を見れる』と『部分的なところしか見えない』の違いだと思っている。
紙にプリントアウトすると、頭から足のつま先まで俯瞰して見ることができる。報告書であれば、文章の最初から最後まで見通せて、話の流れやロジックがおかしくないか、すぐ気づきやすい。
しかし、パソコンの画面上だと、どうしても全体を見通しにくくなる。部分的なところしか画面に映らず、全体を俯瞰して見ることが難しくなってしまうのだ。
建設現場で働いていると、いろいろな工事を経験していくにつれて勘が働きやすくなる。「あれ?なんかおかしいぞ」とか「どうも違和感がある」といったことが、紙に出されている図面を見ると感じることがある。経験豊富な方であれば尚更ではないだろうか。
紙を使うことのメリットは他にもある
紙にプリントアウトすることは、ミスに気づきやすいということ以外に、他にもメリットがある。
建設業界で働く人だけでなく仕事をしている人であれば、パソコン上のデータを見ながら、あれこれと分析したり思案したり検討するという方も多いだろう。
これは個人的な考えでしかないが、分析したいデータを紙に出すことで、分析・思案・検討により向いている状況になると考えている。気づいたことや思ったことなどを、メモ書きでも殴り書きでも箇条書きでも、好きな形ですぐに書き込めるからだ。
書くことで頭が整理しやすくなるし、手と目を通して頭にインプットしたり、間違いにも気づきやすくなる。文章の表現やロジックがおかしい場合には、違和感を感じやすくなるという側面もある。
ペーパーレス化が進む時代に逆行する行為であることは承知しているし、その取り組みは環境保護の面から重要であることも理解している。しかし、なんでもかんでもペーパーレスにする必要があるとも思えない。
ペーパーレス化が進む今だからこそ、紙を使うことの重要性を様々な観点から感じることが多い。自分にとってそれが必要な行為なのであれば、紙を使ったっていいのではないかと私は思っている。