平成30年7月豪雨から3年。災害復旧工事現場で働く建設従事者の苦労と苦悩

平成30年7月豪雨から3年。災害復旧工事現場で働く建設従事者の苦労と苦悩

広島から届ける、災害復旧工事現場の”生の声”

平成30年7月豪雨から3年が過ぎた。

西日本を中心に、全国的に広い範囲で記録的な大雨を観測し、多くの人が被災、命を落とした悲しいニュースは記憶にまだ新しい。中でも、非常に深刻な被害を受けた広島は、3年経った今でも残酷な爪痕が各地に残っている。

広島の土木工事は災害復旧工事が多く、河川、法面、道路の復旧、砂防堰堤の設置など、急ピッチで工事が進められている。現場では、災害後に降った雨の影響で二次災害も多く発生しており、災害復旧工事は深刻な状況が続いている。

私もここ数年は全て、災害復旧工事を請け負ってきている。そんな広島から、リアルな災害復旧工事現場の”生の声”を届けたいと思う。

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現場の最前線で働く者の苦労と苦悩

当たり前だが、災害復旧工事もボランティアでやっているわけではない。大きいお金が動く事業である。そんな災害復旧工事だが、難しいポイントがいくつも存在する。

中でも一番頭を悩ませるのが、施工業者とのお金の折り合いの付け方だ。

我々元請けも、工事を受注する際には発注者からの依頼もある。大抵、今の時期まで残っている災害復旧工事は、誰も入札に参加したがらないような施工条件の悪い現場か、もしくはブロックや構造物ばかりの、業者が嫌がるような仕事ばかりだ。

誰も入札に参加しない工事は、当然発注者も営業に出回る。普段からお世話になっている発注者からの頼みは断れない時も多い。そんな時は、会社としても赤字覚悟で工事を受注する。その場合、どうしても下請け会社に満足のいく支払いをすることが難しくなってしまう。

お金が払えなければ当然、下請けも腰が重い

当然の話だが、お金が払えなければ工事は成り立たない。下請けからすれば、最初からお金がない工事と言われてやりたがるはずがない。

しかし、受注した以上、下請けの方々に仕事をしてもらわなければ工事は進まない。そこで、なんとか交渉をして、工事をやってもらうところまでたどり着けたとしても、また何かしら問題が待ち構えている。

工事を進めていく中で、お金がない現場ほど、現場監督と下請けの関係がギクシャクしやすい。下請けとしては、赤字とわかっている現場は一刻も早く終えたいのだろう。そうなれば当然、施工が早くできるように現場監督への要求は多くなる。

一方、現場監督としては、いくら儲からない工事だろうが、品質や安全管理は厳格に行わなければならない。こうした意見の食い違いから、関係にヒビが入ってしまうのだ。

私も実際、同じような状況の現場で、自分のやるべきことをやっているだけでも「細かい」だとか、色々と陰口を叩かれてきた経験がある。

現場によって問題は様々あると思うが、災害復旧工事の現場では、日々こういったことが起こっていることを知ってほしい。

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最前線で働く建設従事者の苦労を報道してほしい

テレビや新聞などのメディアでは、災害復旧工事の課題など色々な報道がされているが、そんなことは私たち現場の人間が一番よく理解している。

メディアで取り上げてテレビの中で議論を重ねるよりも、赤字工事を請け負っている最前線の建設従事者たちの苦労をもっと取り上げて、それを解決できる取り組みをしてほしいと強く思う。実際に工事をしているのは我々なのだ。

どこぞのコメンテーターが、「一刻も早く工事を進めてほしい」と言っているのを目にすると、現場の何が分かるんだ…と正直憤りを感じることもある。

災害復旧工事現場で働く我々は、毎日直面する様々な問題と向き合い、一刻も早く現場を復旧できるようにと奮闘している。災害で被災した方々の土地が工事の目の前にあっても、境界の問題で何もできない、何もしてあげられないもどかしさや、それに対して、必死に頭を下げている現場の方々の苦労を知っているだろうか。

テレビや新聞など、本当に取り上げなければならないのは、そういった現場での活動内容なのではないかと私は感じている。

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