「土木に関わる人間が土木を隠してどうする」 九大OG系ドボジョが語る"土木の魅力"とは?

「土木に関わる人間が土木を隠してどうする」 九大OG系ドボジョが語る”土木の魅力”とは?

九州大学 土木系OG・学生の同窓会組織「乙未の会」

九州大学に土木系OGの会「乙未(いつび)の会」という同窓会組織があるという話を聞いた。定期的に集まり、OGと現役女子学生との交流を深めているらしい。つまり、ドボジョの集まりだ。

土木業界にドボジョの集まりはいくつかあるのは知っていたが、このようなハイスペックな集まりがあるとは知らなかった。さぞかし、ハイレベルな話が聞けることだろう。ということで、事務局を務める福岡女子大学の松永千晶さんはじめ、4名の九大OG系ドボジョの方々に参加いただき、話を聞いた。

  • 松永 千晶(まつなが ちあき)さん
    福岡女子大学国際文理学部環境科学科准教授(乙未の会事務局)
  • 吉岡 麻子(よしおか あさこ)さん
    福岡市港湾空港局港湾計画部計画課港湾計画係長
  • 塚本 恭子(つかもと きょうこ)さん
    福岡市港湾空港局
  • 増田 淑稀(ますだ しづき)さん
    株式会社東京建設コンサルタント関西本社

※所属などは2021年11月下旬取材時点

土木系同窓会「壬子の会」を母体に2015年に発足

――まず、乙未の会について教えて下さい。

松永さん 乙未の会は、九州大学の土木系学科OG・学生の同窓会です。九州大学の土木系学科にはもともと、「壬子会(じんしかい)」という同窓会があるのですが、乙未の会は壬子会を母体にしています。同窓会および現役土木系女子学生との交流の場として、2015年に発足しました。活動内容としては、在福岡のメンバーを中心に、年1回程度、現場見学会や懇親会といったイベントを開催してきています。

メンバー数は300名ほどで、一番上には、1991年修了の方がいらっしゃいます。九州大学の土木系学部生に占める女子学生の割合は、例年1割ぐらいで推移しています。メンバーの所属で一番多いのは地方公務員で、次が建設コンサルタントですが、最近は、ゼネコンや国土交通省のメンバーも増えてきているところです。

――やはり福岡市役所が一番多いのですか?

松永さん そうですね。

吉岡さん 大学が福岡市内にあるので、学生が選びやすいのだと思います。

――まず、それぞれの今のお仕事について教えてください。

松永さん 現在は福岡女子大学の国際文理学部環境科学科というところに所属して、教鞭をとっています。福岡女子大学に来たのは2020年4月からです。

吉岡さん 1998年に土木職として福岡市役所に入庁しました。今年で24年目です。現在は港湾空港局勤務で、港湾計画を担当しています。

塚本さん 私は2014年学部卒で、福岡市役所に入庁しました。吉岡係長と同じ港湾空港局の東部建設課に所属しています。現在はアイランドシティの基盤整備工事の設計・監督業務を担当しています。

増田さん 私は2018年学部卒業で、東京建設コンサルタントに入社しました。現在は関西本社勤務で、治水関係の仕事に従事しています。

土木と知らず、受験した

松永さん

――大学で土木を学んだ理由はなんでしたか?

松永さん 昔のことなので、だいぶ忘れかけています(笑)。もともとは建築をやりたいと考えていましたが、当時の九州大学の建設都市工学科には推薦入学の制度があって、高校の先生から「受けてみたら」と勧められたんです。

恥ずかしながら、当時の私は建築と建設の違いが良くわからないまま受けることにしました。面接の際に、大学の面接官から「ウチは土木なんだけど、学科の名称を変えたことについて、どう思いますか」と質問されたのですが、そこで初めて土木だと知りました(笑)。

幸い受かったので、「これもご縁かな」と思って、入学した感じです。若干悩みはしましたが(笑)。なので、私が土木を学んだのはまったくの偶然でした。ただ、実際に土木を学んでみて、幅広くいろいろなことができるので、今思えば、土木を学んで良かったと思っています。就職先も、建築より選択肢が多いですし。

――当時は女子は少なかったのではないですか?

松永さん 女子は1割ほどいましたが、それでも少なかったと思います。

――土木ではなにを学んだのですか?

松永さん 研究室は交通計画学でした。まだ建築への未練があったのと、土木に対するふんぎりがついていませんでした。交通計画学は、「ザ・土木」という感じではなく、統計分析やモデリングをやる分野だったので、当時の私には、そっちのほうが興味が持てたからです。

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父親つながりで、土木の道へ

吉岡さん

――吉岡さん、土木を学んだ理由は?

吉岡さん 私も忘れかけていましたが(笑)、最初は医学部に進学したいと考えていました。ところが、センター試験で思うような結果が出せず、医者はあきらめることにしました。そこで、医者以外の仕事はなにが良いか考えたのですが、私の父親がゼネコンに勤めていて、土木はわりと身近な分野だったので、土木にしようと思いました。そこで、土木の学科を受験したら、たまたま受かったという感じで、土木を学ぶことになりました。

――大学ではなにを学んだのですか?

吉岡さん 研究室は都市計画でした。パーソントリップ調査という人の動きを分析する研究をしていました。とくだん希望して研究テーマを決めたわけではありませんでしたが、市役所に入ってから、仕事に活かすことができました。

環境的なことができるかなと思ったら、そこは土木だった

塚本さん

――塚本さん、土木を学んだ理由をお願いします。

塚本さん 私もとくに土木がやりたいと思っていたわけではないですが、物理メインで、環境的なことができるのかなと思って学科を選んだら、そこは土木だったという感じです。女子はきっちり8名、1割でした。

――大学ではなにを学びましたか?

塚本さん 交通計画学です。松永先生のもとで学びました。人が暮らすこととモノをつくることを融合させるみたいなところが、おもしろそうだなと思って、選びました。中学校の周りで交通量をはかったり、環境要因が犯罪発生にどう影響するかといったことを研究していました。

家業つながりで、土木の道へ

増田さん

――増田さん、土木を学んだ理由は?

増田さん 実家が建設会社を営んでいたので、小さいころから土木業に対して親しみがありました。それで土木を志し、大学で土木ができるコースに進みました。

大学の勉強では水理学が楽しかったので、研究室は流体力学を選びました。がっつり河川の研究室で、水害時に、どのくらいの流木が橋梁にひっかかって、洪水にどのくらいの影響を与えるのかといった実験をしていました。

「研究室に残ってやらないか」

松永さん

――卒業後の進路はどのように決めたのですか?

松永さん 学部在学中は、就職に対するイメージが漠としたものしかありませんでした。土木をしっかり勉強したという実感もなかったので、とりあえず大学院に行って、「ちゃんと土木を勉強しました」と言えるようになろうと考えました。

ところが、修士を終えて就職活動をするときになっても、依然として自分が社会に出るイメージが浮かばなかったんです。「国際機関に行きたい」というなんとなくした願望はあったのですが、そのために努力することはありませんでした。

そんなとき、私が所属する研究室の助教の先生が他の大学に移ることになって、ポストが一つ空くことになりました。研究室の先生から「研究室に残ってやらないか」と言われました。当時の私には研究者になりたいという気持ちはなかったのですが、数年の腰かけで研究を続けるつもりもありませんでした。

そこで、先生には「一回社会に出たい」と言って、お断りしようとしたのですが、「研究室は小さい組織だけど、小さな会社だと思えば、社会に出るのと同じだよ」と言われました。「そこまで言っていただけるのは幸せなことだな」と気づいて、助手として、研究者としてやっていくことを決めました。学位をとったのはだいぶ後でした。

――公務員とかゼネコンとかは一切考えなかった感じですか?

松永さん そうですね。たぶん向いてないので(笑)。

――研究室に残ってからは、どんな感じでした?

松永さん 研究室の助手として4年ほど働いた後、一旦退職し、1年半ほどフランスの大学院に留学しました。コース名は交通と持続可能な開発でした。2006年から同じ職場に復帰し、助教として働いていました。

――福岡女子大学ではなにを教えているのですか?

松永さん 大学では現在、生活コースというところに所属しています。女子大学ですので、土木工学科はもちろん、工学部もありません。二級建築士関連の科目を教えたり、どちらかと言うと建築よりです。文理統合科目として、主に文系の学生を対象に、土木の文化や歴史などを講義したりしていますが、概要だけという感じです。今の大学に来て、土木色は若干薄まっていますね。

働き続けるなら、地方公務員

吉岡さん

――吉岡さん、就職活動はどんな感じでしたか?

吉岡さん 私は在学中から「早く働きたい」と思っていて、最初から公務員志望でした。ゼネコンなど民間で女性が働いている事例は少ないということは知っていたので、働き続けるなら地方公務員という考えでいました。就活の際、地元の役所を受けようと思いましたが、ちょうど土木職の職員採用がゼロだったので、あきらめました。

――当時はそもそも女性を採用する枠がなかったという話を聞いたことがあります。

吉岡さん そうですね。就職活動をするまでは、男女の差を感じたことはなかったのですが、そこには大きなカベがありました。

――コンサルは考えなかったですか?

吉岡さん あまり考えなかったですね。公務員は、計画のほか、建設も携わることができるし、分野も幅広いので。

――地方公務員をやるなら、福岡市役所が良かったわけですね。

吉岡さん そうですね。採用枠も多かったですし。福岡県庁も考えたのですが、勤務エリアが広いので、馴染みのある福岡市役所のほうが良いと考えました。

まちづくりをするなら、やはり地方公務員

塚本さん

――塚本さん、就活はどんな感じでしたか?

塚本さん 私も吉岡さんと一緒で、すぐ働きたいと思っていました。公務員志望も同じでした。福岡市役所しか受けていません。ゼネコンやコンサルに対して抵抗があったわけではありませんが、やはり働き続けるには公務員が良いのかなという感じでした。まちづくりに興味があったので、どんなまちにするか決めるのは公務員、というのもありました。福岡市役所では、都市計画とか、まちづくりに関する仕事をやりたいと思っていました。

――福岡県庁とかは考えなかった感じですか?

塚本さん そうですね。福岡市は政令市なので、仕事の幅が広いですし、県庁と比べて転勤が少ないのも魅力でした。

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治水をやりたかったので、コンサル一本

増田さん

――増田さん、就活はどんな感じでしたか?

増田さん 私も早く就職したいとは考えていましたが、公務員ではなく、コンサル一本でした。いくつかのコンサルを受けましたが、最終的には東京建設コンサルタントに決めました。コンサルを選んだ理由は、研究室で河川をやっていたので、実際に自分で手を動かしながら、治水対策に関する業務などをやりたいと思ったからです。

――河川関連の設計をやりたかったのですか?

増田さん そうです。運良く、配属先も希望通りの部署でした。

――コンサル志望なら、大学院は考えなかったですか?

増田さん 院卒のほうが仕事の上でのアドバンテージはあるとは思いますが、早く実務経験を積みたかったので、それはあまり考えなかったです。

――転勤は大丈夫でしたか?

増田さん 基本的には転勤はしたくないと思っています。実際には転勤してしまいましたけど(笑)。

――最初から関西本社ですか?

増田さん いえ、最初は東京本社採用でした。東京のほうで主に治水関連の仕事をしていました。2021年夏から関西本社に異動になりました。

自分で計算して、自分で図面を引くのが魅力

――コンサルの仕事の魅力は?

増田さん 私にとっては、「自分の手で計算して、図面を引く」という行為が魅力です。私の場合は河川関連になりますが、インフラを一貫して見守る仕事であることにもやりがいを感じています。疫病の影響で、最近はあまり参加できていませんが、コンサル他社の若手による勉強会などもあるので、いろいろな人々と交流できるのも、楽しいです。

――実際に仕事をしてみてどうですか?

増田さん とても難しい仕事だと感じています。当然ですが、マニュアル本を覚えたから、できる仕事というわけでもありません。上司や先輩の仕事ぶりを見ながら、今も勉強しているところです。最近になって、やっと仕事のやり方が少しわかるようになってきたかなと感じています。発注者さんとの打ち合わせなども、任せてもらえるようになりました。

技術士という資格があって、院卒だと入社3年目から受験できるのですが、学部卒だと5年目からになっています。それでいくと、学部卒の4年目は「全然一人前ではないんだな」と感じているところです。

――仕事の内容はどんな感じなんですか?

増田さん 基本的には、河川氾濫の流れを計算したりとか、デスクワークが中心です。ただそれだけだと机上の空論になってしまうので、実際の現場に出て、河道のカタチだったり、植生の状態などを確認しながら、作業を進めています。そうやって資料をつくったら、発注者さんのところに行って、打ち合わせをしています。複数の案件に関わっていますが、基本的にはチーム単位なので、チームの一員としてそれぞれに関わっている感じです。

――流域治水関係とか、ハザードマップ関係ですか?

増田さん そうですね。河川が氾濫したときに、どういうハード整備が必要なのかという検討だったり、気候変動に伴う治水計画の見直し、ハザードマップのための浸水想定区域の作成といった仕事がメインになります。

――ツラかったことはありましたか?

増田さん あまりありませんが、発注者さんとの打ち合わせで、答えにツマッてしまったときは、ちょっとツラかったですね。

――コンサルには長時間労働のイメージがありますか?

増田さん 昔はそうだったという話は聞きます。実際のところ、年度末などは忙しい時期はありますが、連日深夜まで働くということはありません。

「どこが土木の仕事なの?」と戸惑った

――塚本さん、市役所の仕事はどうでしたか?

塚本さん 最初は戸惑いましたね。最初の配属先は港湾空港局のクルーズ船施設の運営調整などを行う部署で、まさか船舶に関する仕事を担当するとは思いませんでした(笑)。

仕事の内容は、岸壁を適正に利用させるとか、着離岸時間を調整するといったもので、覚えなきゃいけない法規も、海上保安庁系のものも多かったです。「どこが土木なの?」という感じでしたね(笑)。「ザ・土木」の仕事をしている「同期の人たちに置いていかれる」と思いながら仕事をしていました。

――今の仕事はどんな感じですか?

塚本さん 今やっているのは、アイランドシティのコンテナターミナルの舗装工事などを担当してます。

――仕事は楽しいですか?

塚本さん 楽しいですよ。市役所に入ってからずっと港湾なのは、非常に気になっていますけど(笑)。

今の仕事は、たとえば、何十haもある広大な未完成の土地を仕上げるために、自分たちでいろいろ作戦を立てながら、工事を進めていくわけです。けっこうな傾斜のある盛土を車両で登っていったりとか、雨が降ったら、ベチャベチャになりながら土のうを積んだりすることもあるので、ちょっと冒険チックで、けっこうワイルドな感じで楽しいです。

――ただ、このまま行くと、「港湾屋」になりそうですけど、大丈夫ですか?

塚本さん 私としては、まちなかの仕事とか、他の分野も経験したいと思っていて、希望を出しています。

――まだあきらめてないと?

塚本さん まだあきらめていません(笑)。

土木という職種にとらわれず、仕事ができるのが魅力

――吉岡さん、今の仕事はどうですか?

吉岡さん 塚本さんの話にもありましたが、港湾の仕事は、専門性が高い分野なので、着任当初は、言葉がわからないことも多く、慣れるまで時間がかかりました。計画系の部署なので、幅広い知識が求められるのですが、配属されるまでほとんど知らなかったので。日々勉強しています。

――これまでで一番楽しかった仕事はなんですか?

吉岡さん 東京事務所ですね。様々な経験ができたからです。多様な人とのネットワークもできました。国の政策がどういうふうに決まっていくのかを肌で感じることもできました。

――公務員のキャリアップについて、どうお考えですか?

吉岡さん 市役所での土木の仕事は、道路、下水道、水道、港湾など多岐にわたっていて、それぞれ高い専門性が求められます。さらに、それぞれの分野ごとに計画するセクション、事業を進めるセクション、維持管理するセクションがあります。そういう幅広いさまざまな土木の仕事を経験できるという意味で、公務員になって良かったと思っています。

自分で配属先を選ぶことは難しいですが、選択肢があるということは、やはり仕事として魅力的だと思っています。土木の職員の中には、事務職の仕事に携わっている方もいらっしゃいますが、土木という職種にとらわれず仕事ができることも、市役所の魅力だと思っています。

防犯に関する研究がライフワーク

――松永さん、仕事は楽しいですか?

松永さん はい、楽しいです。偶然とは言え、研究者になれたのはラッキーだったと思っています。研究職は、自分で決められる部分が非常に多いので、自分の興味があることに対して、いろいろなアプローチから研究できるのが、楽しいです。

例えば、私は防犯に関する研究をライフワークのひとつとしてやっています。都市空間とか街路空間の設計を変えると、防犯にどう役立つのかという視点で、ずっと研究しています。九州大学はもちろん、福岡女子大学でもこのテーマで研究を続けています。子どもの安心安全に関する研究ということで、男子よりも女子のほうがとっつきやすいテーマなのかなという気もしています。最近は、同様のテーマで研究をしている海外の先生とも交流しています。

――人に教える、人を育てるというところで、やりがいを感じることはありますか?

松永さん 最初は「ムリ」とか「できない」と言っていた学生が、一生懸命やって結果を出して、卒業していく姿を見ると、鬼の目にも涙と言いますか、「良く頑張ったね」とホロッとくることがあります。自分で仮説を立てて、それを明らかにするため、計画を立てながら向かっていくというプロセスは、どんな業界であっても、社会人としてきっと役に立つと思います。学生にはそのことは折に触れて伝えるようにしています。

――最近の学生に対して、感じることはありますか?

松永さん 約20年間大学で教員をしていますが、あまり違いはないと思っています。最近の学生について、よく「自分で考えない」とか「言われたことしかやらない」という話は聞きますが、私が学生のころにも、「言われたこともやらない」ような学生はいたので。

最近の学生はプレゼンテーションが上手だなとは思います。自己表現がスゴく上手だと感じます。デジタルネイティブ世代というのもあると思います。私たちが学生のころはOHPでしたけど。そういうところは伸ばしてもらいたいと思っています。

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伊都キャンパスは交通アクセスが脆弱

――現在の九州大学伊都キャンパスはどうでした?

増田さん キャンパス自体は新しいキャンパスなので、過ごしやすかったです。ただ、天神とか博多など福岡市街地が遠いので、そこは大変でした(笑)。

塚本さん 建物がキレイで近代的なので、良かったです。在学中に、どんどん学生のまちになっていたので、おもしろかったです。最初の1年間は自宅から通っていたのですが、2時間かかるので、親に懇願して、2年目以降は一人暮らししました。

――箱崎キャンパスと伊都キャンパスはどっちが良かったですか?

松永さん 立地的にはもう一つの六本松キャンパスが一番良かったです。六本松キャンパスと比べると、箱崎キャンパスはまちが暗くて、「田舎だな」という印象でしたね。そこへいくと、伊都キャンパスはなにもないという感じを受けました。他の先生も同じようなことを言っていました。

みんなでご飯食べに行ったりとか、飲みに行ったりするには、やはり不便ですし、夜遅くなると、大学に泊まらざるを得ないこともありました。交通ネットワークが脆弱なことから、豪雨で電車やバスが止まって、帰れないということもありました。ただ、日本最大級の大きな図書館があったりとか、研究環境としてはスゴく良いのかなと思います。

――箱崎キャンパスは飛行機が直上を飛んで、うるさかったらしいですが。

吉岡さん 私は学生時代、箱崎に住んでいたのですが、窓を開けていると、飛行機の音でテレビの音声が聞き取りづらいということはありました。

私が通っていたころの箱崎キャンパスは、手入れが行き届いていないエリアもあって、鬱蒼としてましたね。憧れのキャンパスという感じではなかったです。とくに工学部エリアは男子学生が多かったので、華やかさという点は皆無でしたね。

松永さん 女子トイレは奇数階にしかありませんでした。伊都キャンパスはその辺がすべて解消されて、パウダールームなんかもあります。男子トイレにも(笑)。

吉岡さん 伊都キャンパスに行ったとき、パウダールームに衝撃を受けた覚えがあります(笑)。

土木に関わる人間が土木を隠してどうする

――2021年4月から、九州大学が学科の名称を土木工学科に戻しましたけど、それについてどう思いますか?土木を志す若者へのメッセージでも結構です。

松永さん 私は土木に戻して非常に良かったと思っています。私自身は、学科の名称にダマサれた感じですけれども(笑)。そもそも「土木に関わる人間が土木を隠してどうする」と思っています。まず自分たちがしっかり土木を名乗りながら、土木の魅力をしっかり伝えていくことが、土木の裾野を広げていくことにもつながっていくと考えています。

吉岡さん 私が在学したころは建設都市工学科という名称でしたが、地球環境工学科に変わった後、また土木工学科に戻りました。

土木って生活に根付いたものだと思っているんです。私自身、そういった仕事に携われることに非常にやりがいを感じています。女性で土木の分野を選択する人はまだまだ少ないとは思いますが、やれることは必ずあると思います。自分ができることや得意なことを見つけて、チャレンジしていってほしいと思っています。

塚本さん 自分が市役所で働いているからかもしれませんが、土木は社会から非常に必要とされる学問だと思います。生活を突き詰めていくと、土木の重要性を実感します。学問としても、非常に幅広いので、選択肢を見つけやすいと思っています。女子にも向いている学問だと思うので、土木を志望する女の子が増えてほしいです。そして、福岡市役所に来てください(笑)。

増田さん 土木という言葉には、なんとなくネガティブなイメージがあると思います。とくに女子学生にとっては、そういうイメージがより強くあるように感じています。でも、みなさんがおっしゃったように、土木は国民の生活の根幹に関わるもので、国民の生活に寄り添える大事な仕事です。学生の皆さんには、ネガティブなイメージを持つことなく、素直に土木を志望してほしいと思います。

私の経験で言えば、コンサルで働く上で、女性であることが負になることはないと思います。ウチの会社には、結婚や出産をした後も働いている女性はたくさんいます。土木業界には男性社会という印象はありますが、だからこそ、女性には増えてほしい、土木を志してほしいと思っています。

他大学OGとの連携、土木OGサミットも視野に

乙未の会として2016年度に実施した現場見学会

――最後に、今後の乙未の会について、事務局である松永さんから、一言お願いします。

松永さん ここ数年は、コロナの影響でちゃんと活動できていません。「(会は)終わったのか」という問い合わせもありましたが、そんなことはありません(笑)。私が学生のころは、先輩がなにをやっているのか情報がまったくなくて、就職などに関する情報収集に苦労しましたが、会ができたことによって、先輩と情報交換する場が持てたと思っています。今後も引き続き、学生とOGとのネットワークをしっかりつないで、タイミングを見て活動を再開させたいと思っています。

京都大学にも土木のOG会が立ち上がったと聞いています。乙未の会単独ではなく、他大学のOG会などとも連携しながら、交流の輪を広げていきたいと思っています。いつか「土木OG同窓会のサミットみたいなことをやりたい」とも思っています。

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