建設業界に入って感じたことや驚いたこと
建設業界は、安心、安全、快適な暮らしを守るための環境を整備する役割を果たしています。住宅や道路、橋、川など、対象とする分野は幅広く、ゼネコンやハウスメーカー、建設コンサルタントをはじめとして様々な業種があります。
建設業界に関わらずですが、業界によって様々な特徴やイメージがありますよね。今回は、新卒で建設コンサルタントに入社し、5年程従事した経験を持つ筆者が、建設業界に入って感じたことや驚いたことを紹介します。
建設コンサルは、仕事がデキる人が多い
建設コンサルタントで働いている人は、仕事がデキる人が多い印象があります。
1~2年目の私が1日かかる作業を、上司は2時間もかからず終わらせていました。もちろん経験を積めば作業スピードが速くなるとは思いますが、関わった上司は皆さん、どうすれば作業が効率化できるか、どう改善すれば顧客のためになるかを常に考えて仕事をしていました。
建設コンサルタントの仕事は、コンサルタントという名称がついているように、顧客の相談相手としての役割もあり、正解が定まっていないような業務でも最大限の努力をして、顧客の満足度を上げていく必要があります。
常日頃から顧客のことを最優先に考え行動し、多岐にわたる仕事も工夫しながら効率的にこなそうとする仕事のやり方が身についているため、建設コンサルタントで働く人は仕事がデキる人が多いのではないかと考えています。
仕事がデキる人ほど業務量が増え、忙しくなる
どの業界・業種にも言えることだと思いますが、経験を積み、知識や技術を手に入れた人(つまり”仕事がデキる人”)ほど業務量が増え、どんどん忙しくなっていく傾向にあります。
特に建設業界の場合は、「この業務についてはあの人しか分からない」「○○に詳しいあの人を頼るしかない」「あの人しか持っていない技術がある」といった状況が多いように思います。
建設コンサルタントが扱う分野は、道路や橋梁、河川、上下水道、都市計画など非常に幅広く、その分野を細分化するとさらに多くの分野があります。細分化した分野一つとっても、極めるには何年もの月日がかかります。そのため、ある程度経験を積んだ技術者であっても、専門外のことは全く分からないという場合も多々あります。
経験豊富な技術者は、他の人には分からない知識や技術、経験を持っているため、他の人に頼める作業も少なくなってしまいます。また、他の人に作業を依頼できても、作業結果のチェックを行う必要がありますし、若手の教育も任されることも多いため、多様な業務に追われて忙しくなります。
建設コンサルタント時代に私の教育を担当してくれた上司も仕事がデキる人で、常に忙しそうな方でした。そのため、分からないことがあっても聞きに行きづらい雰囲気を勝手に感じていました。
勇気を出して聞きに行っても、「今忙しいから後で」なんて言われ、次から忙しくなさそうなタイミングを狙って聞きにいかないといけないと思ってしまい、タイミングを見計らうことに時間をかけ、結局やらなければならない仕事が終わらない、という本末転倒なことをした経験も多々あります。
そんな忙しそうな上司たちを見て、「経験を積んでいくとこんなに忙しくなるんだったら、ずっと下っ端がいいな」と思っていたなんて誰にも言えません(笑)。
「本当に必要?」と疑問に思うルールが多すぎる
形式を重んじるが故に、「本当に必要か?」と疑問に思うようなルールが定められることが多々ありました。思わず心の中でツッコミを入れてしまった形式ルールについて一例をご紹介します。
私が建設コンサルタントに入社した当時、ちょうど働き方改革が叫ばれ始めた頃で、「毎週水曜日はノー残業デー」を徹底するように言われていました。しかし、次の日である木曜日に打ち合わせや現地調査などの予定があり、準備が間に合わず残業が必要になる人が毎週何名かいました。
そこで新たに、「木曜日に外出の予定は極力入れないように」という謎のルールが追加されたのです。極力であるため、ある程度の選択の余地はありますが、木曜日に予定を入れないようにというのをルールにしてしまうのは、目的から少しズレているとは思いませんか?
そもそも、準備が必要な予定であっても、作業量に見合ったスケジュール管理をうまく行っていれば前日の残業は不要です。むしろ、長時間労働を解消することを目的の一つとした働き方改革ならば、別に水曜日じゃなくても良いはずです。
「水曜日=ノー残業デー」という形式を重んじるあまり、かえってスケジュール管理が上手くできている人の足を引っ張るようなルールになってしまったのではないかと感じています。
私自身もこの追加ルールにより、木曜日に調整したい予定を後回しにせざるを得なくなったことが何度かありました。他にも、残業時間を管理する表の作成や目標の終業時間をチーム内で共有する取り組みなど、働き方改革に関する取り組みは多く実施され、ほとんどが自然消滅していきました。
この話は、私が働いていた会社の社風や当時の管理職の考えも大いに関連しているため、建設業全体でそういった慣習があるとは言えませんが、建設業の主な顧客が行政主体であることが、少なからず影響しているのではないかと考えています。
行政といえば、前例踏襲、形式主義といった「役所文化」と呼ばれる特有の風潮があります。代表的な例として、些細な提案等でも何人もの人からハンコをもらって承認してもらわないといけないという話は公務員の方からもよく聞きます。
行政主体は、利益を追求する民間企業とは違い、国民の声を聞き、法律やルールに基づいて業務をこなしていく必要があり、何か問題が起こった時は国民からのバッシングを受けるため、保守的な姿勢になっていくのだと考えられます。
建設業界は、そんな行政と密接な関わりがあるため、多少なりとも影響を受け、形式を重んじる保守的な文化が浸透しているのかもしれません。
会社は組織であり、社員が同じ方向を向いて仕事に取り組めるように規則を定めていくことは大事なことですが、本来の目的からズレたルールや、実態に見合っていないルールなどは結局効果が得られず、ただただ社員の首を絞めるだけになりかねません。物事の本質を見極め、一歩先まで考えることが大切だと思います。
建設業界の高齢化が爆速で進んでいる
建設業界は高齢化が進んでいます。国土交通省が発表した資料からも、建設業就業者の約3割が55歳以上となっており、建設業界は全産業と比べてかなり高齢化が進んでいることが分かります。
積極的に新卒採用を行っている会社は、幅広い年代の人が働いていますが、小規模な会社やフリーランスとして建設業に携わる人たちは、目に見えて高齢化が進んでいます。
私が働いていた時も、関わる協力会社の方はほとんどが50~60代の方でした。私が入社して初めて現地調査に行った時、協力会社の方が同行してくれたのですが、その方も50代の方で、社会人経験がなく年の離れた人と関わったことのなかった私は、終始恐縮していた覚えがあります。
その現地調査では一日中外を歩き回ったのですが、協力会社の方は20代前半の私よりも断然体力があり、テキパキと調査を進めていたため、尊敬したことを覚えています。
とはいえ、一般的には年を取るほどに体力は衰えていき、少しでも無理をすると体調を崩してしまいがちです。日本全体で少子高齢化が進んでいますが、建設業の高齢化は特に深刻で、若手の採用や育成に力を入れていくことが求められています。
積極的に声を上げることが労働環境の改善につながる
今回は、私が建設コンサルタントで働いた経験から、建設業界に入って感じたことや驚いたことをまとめてみました。
建設業界の仕事は3Kと言われていますが、技術の進歩や社会の成長とともに、労働環境は少しずつではありますが、改善されてきているのではないかと感じています。
すでに私は建設業界から離れてしまっていますが、当時もっと自分の意見を主張しておけば何か変わっていたかもしれないなと後悔することもあります。建設業界に限らず、働く環境で改善できる点があると思った時は、積極的に声を上げることが大切ですね。
なお、本記事は自身の経験から主観でまとめているため、異論が多々あると思います。ぜひコメント欄にてお聞かせいただけると幸いです。