施工図の写真

施工図は、心のこもったお手紙です

見よう見まねの「っぽい図面」では伝わらない

施工図と一口に言ってもたくさんあります。杭伏せ図、基礎伏せ図に始まり、各専門業者から提出されるサッシ図や鉄骨図などもそうですし、ちょっとした検討を行った断面詳細図や割付図のようなものも施工図です。

どれも工事を進める上では欠かせないものであり、正確な情報を伝えるための大切なツールの一つ。そこには、仮に自分たちで描く場合でも、チェックするだけだったとしても、忘れてはいけない考え方があります。

今回は、そんな施工図に対して意識してほしいポイントについてお話いたします。

結論から言うと、題名の通り『施工図は、職人への手紙』という意識がとても大切な考え方です。

基礎伏せ図を例にとって進めていきましょう。一見複雑に見えるこの施工図、実は構成する要素はそんなに多くありません。構造部材、通り芯、記号、凡例、寸法、そして詳細によって構成されています。

これらすべての情報を一つの図に網羅したものが基礎伏せ図で、設計図ではそれぞれの要素に対し、それぞれ1面ずつの図面に分かれて記載されているものをごちゃ混ぜにして、施工アレンジを加えたものが基礎伏せ図です。

基礎伏せ図を初めて描こうとするとき、まずは先輩が描いた図面を基本に見よう見まねで完成させようとします。これは練習としては非常に有効であり、意味が分からずとも、機会に触れて慣れさせる効果があります。

そして描き順や必要な構成要素が分かってくれば、概ね問題のない図面は完成させることができます。ただ、ここまでで完成する図面は、あくまで「っぽい図面」でしかありません。当たり前のことをただ描き連ねただけでは、質問だらけになってしまいます。

図面に血を通わせろ

ある程度かけるようになったのであれば、ここからが大切な部分。無機質な図面に対し、血を通わせていくことがとても重要になります。これができているか否かで、読みやすい図面かどうかが分かれるのです。

セオリー通り描くのは、あくまで基本。そこから先は、相手の目線に立つという「気持ち」が大切です。ひとまずの図面をよくよく読み込んでいくと、無駄なものや意味の薄いもの、わかりづらい部分があることに気づくはずです。

単純な話、自分がその図面をもって墨出しに行ったとき、電卓をたたく回数が少ないようにするというような「やさしさ」を込めるのです。図面を見ていて「ん?」と思う回数を少なくするように心がけることが、施工図には大切な要素だと思います。

寸法線を少なくすると、図面はすっきりします。確かに足し算引き算をすれば算出できるのかもしれません。それが数回であればすっきりさを求めるほうがベター。ですが、何度も何度も同じ計算をしなければいけない場面はあるはず。

そういうポイントを見つけることができれば、多少混雑したとしても、その計算結果を寸法線として表現してあげることがやさしさといえます。凡例や記号を駆使して、すっきりさせる方法もありかもしれませんが、何度も行き来するのであれば、そこに記載するのです。

もちろんただ細かく記載するだけでは、結果としてごちゃつくことになり、見る気をなくすことにもなります。そういうかゆいところに手が届く、ちょうどよい図面を書くためには、やっぱり経験をしたり、読み込んでみたりする必要があります。

無駄を極力なくし、必要なものであればルールを無視しても表現するべきなのです。そういう意味では、相手がわかりやすくするためには、ルールなんてものはないとも言えます。

相手の目線に立ち、相手の作業をする場面を想像する。ほしいなと思った時には「ここに描いておきましたよ」というメッセージが相手にわかるような配置を考える。それは、施工管理から職人さんに対しての、心がこもっている手紙と同じなのだと思います。

※この記事は、『 【インスタで学べる】1日たった3分で学べる建設コラム 』の記事を再編集したものです。


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【プロフィール】
武田 祐樹(たけだ ひろき)

総合建設業に17年在職し、所長歴は11年、官民問わず数多くの実績を積む。その後2020年に起業・独立。
「建設業をワクワクする業界へ」をスローガンに、DX化の推進や若手育成、魅力発信を行う。
「建設業効率化施策の仕掛け人」として、ABEMA Primeに出演。

◇保有資格◇
一級建築士
1級建築施工管理技士
1級土木施工管理技士

株式会社RaisePLAN 代表取締役

【運営・活動】
【現場ラボ】:建設業の変革をサポート
【現場ラボコンサルタント】:新人・若手の研修、教育
【Edu建(エデュケン)】:建築施工管理のeラーニング
【講師活動】:DX化、部下育成、建設業に関するセミナー・講演

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