【ニチレキシリーズ第1弾】羽入 昭吉さん
ニチレキ株式会社(本社:東京都千代田区)は、舗装材料の研究開発、製造販売などを手がけるメーカーだ。技術研究所(栃木県下野市)をはじめ、全国各地に自社工場や支店・営業所を持ち、調査や舗装工事なども手掛ける。舗装分野のオンリーワン企業だ。
そんなニチレキの技術開発を束ねるのが、技術開発本部長の羽入昭吉さんだ。ニチレキとはどのような技術ノウハウを持つ会社なのか。ニチレキが求める技術者とはどのようなものなのか。社員にとって、ニチレキで働く魅力はなにかなどを巡って、全4回のニチレキシリーズを連載する。第1弾のテーマは、ニチレキとはどのような会社なのかだ。羽入本部長に話を伺った。
創業者の「種播き精神」を引き継ぐ
ニチレキ創業者 池田英一の「種を播け」 (ニチレキHPより転載)
――ニチレキはどういう会社なのですか。
羽入さん ニチレキの本社は東京ですが、ニチレキの心臓部は栃木県の技術研究所です。研究所では、いろいろな材料や工法を開発しており、これらを世に出していくのがニチレキのビジネススタイルです。研究開発を真ん中に据えて、大切にしている会社です。
ニチレキの創業者は池田英一という人物です。戦前はアスファルトを使った建築防水をやっていましたが、戦後から道路舗装に乗り出しました。池田の思いは、今でもDNAとしてニチレキ社員の胸に刻み込まれています。
池田のモットーは「種播き精神」でした。池田はこの精神について、詩を書いています。
よい種を播いて歩こう
これが我が社のモットーです
たとえ、旱魃がきても
枯れないような強い種をまき
汗を流して肥料をやろう
必ず立派な実がみのる
たとえ、自分がとらなくても
私はこう思っています
種まきをしないで
肥料もやらないで
誰も果実のことばかりねらっていては
本当の繁栄はこないと
私はそう思います
研究開発という種をまいて、みんなで育てながら、会社として発展していこうというのが、ニチレキの企業文化になっています。花を咲かせた研究開発の例としては、最近のものでは、アスファルト舗装の長寿命化に関する研究開発、アスファルト舗装のリサイクルに関する研究開発などがあります。
ニチレキはどのカテゴリーにも属さない会社
――どのような仕事をしているのですか。
羽入さん ニチレキは、付加価値の高い材料の開発製造、工法の開発のほか、特殊な施工技術を持った工事部隊も抱えています。研究開発の会社であり、エンジニアリング会社、施工会社でもあります。舗装の点検診断、調査、メンテナンス支援などもやっており、事業内容は多岐にわたります。いわゆる舗装会社ではありませんし、道路会社とも違います。どのカテゴリーにも属さない、それがニチレキという会社の特長だと考えています。
――いわゆる道路会社とは違うのですか?
羽入さん 似たような仕事をしていますが、道路会社とは少し違います。例えば、ある高速道路の舗装工事が発注され、道路会社さんが受注したとして、ニチレキは自分たちが開発したアスファルトをその道路会社さんに納めるという関係が強いです。道路会社さんは、ニチレキにとって大事なお客様です。
道路会社さんの中には、自分たちで材料も作っているところもあるので、現場によってはライバルになることもあります。その一方で、道路会社さんと共同で仕事をすることもあります。共同の開発者、提案者という関係です。例えば、発注者から「こんな舗装をつくれませんか」とか「半分の工期でつくれる工法はありませんか」といった相談を受けた場合です。道路会社さんとの関係の複雑さは、他の業界の方々にはなかなか理解してもらえないところがあります(笑)。
――確かに、ちょっとわかりにくいですね(笑)。
羽入さん そうですよね。でも、こういう部分があるからこそ、日本のインフラ整備が効率的に進められてきたと言えると思っています。
――舗装に関する最もコアな部分を担っているということでしょうか?
羽入さん そういう自負はあります。例えば、アスファルトの長寿命化や木材の利用などは、ニチレキにしかつくれないモノです。ニチレキという会社の特長はなにかと言えば、そういう部分だと思っています。
化学のチカラを自在に使える土木屋
若者にレクチャーする羽入さん
――ニチレキに入れば、そういうコアな仕事ができると?
羽入さん そうですね。ニチレキでは、まず研究開発ができます。例えば、アスファルトという材料は、なにをどれぐらい混ぜるかによって、付加価値の高いいろいろなモノに化けていくんです。これは化学の分野の話ですけれども、用途はあくまで土木です。
私はもともと土木の人間でしたが、ニチレキに入ってからは、「化学のチカラを自在に使える土木屋」として生きてきたという感覚があります。私はこれを「シビルケミスト」と言っています。「シビルエンジニア(土木技術者)」と「ケミスト(化学技術者)」を組み合わせた造語です。化学のチカラで土木を変える。そういう仕事ができるのが、ニチレキという会社の持ち味だと思っています。
――土木と化学の両方必要ということですか?
羽入さん そういうことになりますね。そういう意味では、ニッチで、競合する会社も少ないです。その分、好奇心さえあれば、誰でも活躍しやすいところがあると思っています。社員の採用は、化学の学生さんは比較的良く集まるのですが、土木の学生さんが少なくなっています。毎年3〜5名ぐらいです。私が入社したころは半々でしたが、最近は化学が多くなっています。
土木屋こそ現場のコーディネーター
――土木職があるのですか?
羽入さん 土木職というのはありません。ニチレキの職種としては、研究職、技術職、営業職などがありますが、土木であれ化学であれ、入社後は、一様に振り分けられます。
――技術営業もあるのでしょうか?
羽入さん 大いにあります。現在の社長は土木出身で、ずっと技術営業をやってきました。お客様が土木屋さんのことが多いので、土木の感性を持った営業職がいると、話がスムーズに進むところがあります。
私は、土木屋の仕事は現場のコーディネーターだと思っています。現場にはいろいろな分野の人が入りますが、土木屋はいろいろな分野のことも知っていて、それを束ねることができる存在だと思っています。
柔軟な働き方、人材配置が今後のカギ
――建設業界的には「女性活躍」とか「働きやすさ」と言われていますが、ニチレキではどうなっていますか?
羽入さん 10年ほど前、研究所に初めて女性社員が配属されました。彼女は化学出身でした。以降、毎年1〜2名採用してきており、女性技術職の割合も10%ほどに上がっています。現場仕事も含め、女性社員の働き方も定着しつつあります。あとは、調査部門でも女性エンジニアが増えてきているほか、全国各地にいる現場の技術職の中にも、何人か女性がいます。
――転勤はどうなっていますか?
羽入さん それは職種によって異なります。総合職は全国転勤ありですが、地域限定社員はエリア内だけの異動です。ただ、最近は、若い層を中心に、転勤を避ける傾向が強くなっており、人材配置のバランスが保ちにくくなっています。今後は、今いる社員や新しく入ってくる社員の価値観を踏まえつつ、人材配置の制度を変えていく必要があると感じています。柔軟な働き方、人材配置をできるかどうかが、会社として人材採用する上で、一つのカギになってくると考えているところです。
自分が持っている能力を発揮してほしい
――社員には「クレイジーたれ」と訓示しているようですが、そのココロは?
羽入さん 十人十色という言葉がありますが、私は、人は10人いればそれぞれが異なる個性、能力を持っていると考えています。「クレイジーたれ」という言葉には、それぞれが持っている能力を思いっきり発揮してほしいという思いを込めています。
――どういった人材を望んでいますか?
羽入さん いわゆるお利口さんではなく、「俺は誰もやらないような仕事をやるんだ」という気概を持った社員になってほしい、そういう人に来てほしいと思っています。
たとえば、現場仕事では、いろいろな困りごとが発生します。そういう場面で、自分のアイデアをどんどん出して、困りごとを解決し、周りに自分のファンを増やしていく。そういったエネルギーに溢れた人を待っています。AIやICTを駆使して材料や機械をつくりたいという人も歓迎です。