【衝撃】工務店アンケートでウッドショックや建材高騰の影響で受注悪化が約50%に達する

【衝撃】工務店アンケートでウッドショックや建材高騰の影響で受注悪化が約50%に達する

全国建設労働組合総連合(全建総連)はこのほど、ウッドショックによる木材価格の高止まりや住宅設備の価格高騰や納期遅延など、住宅づくりに関連する環境悪化の状況を把握する目的で、工務店アンケート調査を実施、その結果を公表した。

工事原価については、「かなり上がった」が53.3%、「上がった」が42.7%であるものの、値上げ分については「お客様に負担してもらった」との回答は40.3%に留まり、多くの工務店が値上げ分については自社の工夫などでまかなっているという厳しい情勢が続いていることが明らかになった。

「いまは廃業も視野に入れている。」との声もあがっており、小規模事業の工務店の経営者は高齢者も多く、同時に後継者不在の状況が続いているという厳しい情勢におかれている中、国は新たな支援を行うことが求められる。

今回の緊急アンケートの結果をもとに、全建総連の住宅対策部長である髙橋健二氏が解説した。

各政党に資材高騰、納期遅延での支援要望

――このアンケートを実施した背景は。

髙橋健二氏(以下、髙橋部長)  2021年春からウッドショックが発生し、木材価格の急激な上昇、加えてトイレなどの衛生設備、給湯設備の納期遅延などが発生し、さらにウクライナ情勢により、状況が悪化していると組合員からの声がありました。

全建総連は各政党に緊急支援などを要請する関係性を持っていますが、その際、現場の実態を明確にするエビデンスが必要になります。自民党の「建設技能者を支援する議員連盟」のほか、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会民主党に関係性は及びますので、各政党の国会議員に実態を伝え、適切な対策を講じて欲しいという要望を行いました。各政党からは、緊急対策で支援していきたいという回答があり、今後の経済対策や補正予算につながっていくものと期待しています。

なお地方組織には、このアンケート結果を活用し、都道府県に対して、地方創生臨時交付金を使った支援策を求めるように伝えたところです。

木材に加え、あらゆる建材が値上げのトレンドへ

――アンケート結果については。

髙橋部長 住宅設備の納期の影響では、3月に納品された給湯設備は、納品までの平均日数が66.7日、最大日数が240日かかっています。1月を30日と計算すれば平均でも2月かかっております。その結果として「キャンセル発生」では、新築が6.1%で、リフォームが7.6%です。また、材料がなく、一部施工ができない状態ですので「工事を待ってもらっている」が新築36.3%、リフォームが52.1%です。

給湯設備や衛生設備の納期遅延で新築やリフォーム工事でキャンセル発生 / 全建総連

さらに、工事原価上昇に影響している建材、材料は木材I(構造材)が3535ポイント、木材Ⅲ(合板)が3099ポイント、木材Ⅱ(羽柄材・造作材など)が2618ポイントと、全般的に木材が多く依然ウッドショックの状況が続いています。ただこのアンケート以後、木材に限らずありとあらゆる建材が値上がりしており、これからはもっと工事原価が上昇すると見込まれます。

あらゆる建材が値上がり / 全建総連

――顧客に提示する見積もり価格についても影響がありそうですね。

髙橋部長 アンケート調査では、「大きな影響が出ている」が58.8%、「少し影響が出ている」が38・8%と、9割以上に影響が及んでいます。結果2021年3月との比較では、リフォーム工事費での値上げ率では、20%以上アップが33・1%、10~19%アップが42・7%、新築に至っては、20%以上アップが44・2%、10~19%アップが37・1%に達しています。構造材や建材、最近では工事費割合の高いサイディングも上がっている影響も大きいです。

新築・リフォームともに工事費は、値上がり率アップ / 全建総連

値上げ分の価格転嫁も一部に留まる

――値上がり分の価格転嫁の状況は。

髙橋部長 本来、木材や建材の価格が上昇すれば顧客に転嫁してもらうことが当然なのですが、工務店業界はなかなかそうもいきません。一部を含め自社負担した工務店は約6割に及びます。自社負担があると回答した事業者は、価格転嫁できなかった理由として、「すでに見積書を提出していた」(既契約を含む)が75.2%と割合的には一番多かったです。その結果、売上高への影響も「下がった」が45.1%、利益率への影響は「下がった」が64.9%、受注ヘの影響は「悪化」が49.8%となっています。「悪化」の理由としては、「顧客が建材高騰の様子を見ている」が53.2%、「建材・設備等の納期時期が不確かで工期を設定できず受注を断っている」が44.4%、「工事金額が高くなり契約が成立しない」が43.4%に及んでいます。

約6割の工務店が一部も含め値上げ分は自社で負担 / 全建総連

――経営への影響も相当深刻ですね。

髙橋部長 資金繰りへの不安が高まっています。アンケート結果では、「年末まで今の状況が続くと資金繰りが心配」が41・3%、「既に、資金繰りがひっ迫」が16.7%、「日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付(ゼロゼロ融資)を既に受けた」が13.5%となっています。

そこで、「制度・政策要望」では、「事業者の税負担の軽減」、「値上がり分に対する国の補助金(消費者向け)」、「国による関係団体・事業者への流通等改善に向けた指導・支援」、「事業復活支援金の拡充・延長」や「無利息・無担保の事業資金の融資」などが寄せられています。

経営の影響は深刻。求められる緊急支援策 / 全建総連

――アンケートのコメント欄でも、深刻な言葉が寄せられています。

髙橋部長 ええ。実に多くの声が寄せられました。ウッドショック当初から言われていますが、地方の一人親方や身の回りの地域の工事を施工されている工務店は高齢者が多いのですが、材料が入手しにくく、仕事ができない状況が続いている中、これを機に商売をたたもうという考えが地方を中心に出ています。実際、コメントでも「いまは廃業も視野に入れている」との声は地方の苦境を代表しています。廃業が相次ぐことになれば、地域の住宅をはじめとした社会資本の維持に支障きたすことにつながりますし、我々も重くこの問題を受け止めています。

また、ウッドショック初期に国産木材の安定供給を望む声がありましたが、外的要因があっても木材だけではなく、すべての建材、給湯器、衛生設備について海外に依存しない経済主権の確立が望ましいという意見も上がっています。

今回の工務店アンケート調査以降も、ウクライナ情勢の影響が拡大し、建材調達の環境にも変化が起きているため、組合員の建材価格高騰などの影響を把握する2回目のアンケート調査を実施しています。

工務店経営が悪化の傾向になっている / 全建総連

――各政党の具体的な要望については。

髙橋部長 主に5点あります。「新築住宅及びリフォーム工事費の価格上昇による消費マインドへの影響を考慮し、現行補助事業の延長及び拡充などについて検討すること」、「木材や鋼材をはじめとした建設資材の価格及び給湯器等の設備機器の納期遅延の実態を把握するとともに、不当な価格引き上げ、仮需要が生じないよう、適切な対応を図ること」、「ガソリンの価格高騰に対する支援策を実施すること」、「中小建設事業者の倒産・廃業を防止するため、事業復活支援金や無担保・無利息の特別貸付け延長・拡充などの措置」や「価格転嫁が適切に行われるよう、業界団体に対する周知を強化するとともに、下請事業者や技能労働者などへの賃金及び労務費などにしわ寄せが生じないよう、必要な対策を講じること」の5点です。

特に、物価全体が上昇していく中、技能者の賃金を毀損しないことは建設業だけの問題ではありませんから、各政党の政策に目を光らせていきたい。ただ、各政党はこのアンケートに示された実態に関心を示されたというのが印象です。このまま放置すれば住宅市場が確実に冷え込むという危機意識を共有できつつあると考えています。

――実現できた政策については。

髙橋部長 6月15日に閉会した第208回通常国会では、補正予算も成立し、「ガソリン価格について、基準価格を172円から168円に引き下げ、支給額の上限を25円から35円にする対策」、「こどもみらい住宅⽀援事業」では、⼦育て世帯や若者夫婦世帯による⾼い省エネ性能を有する新築住宅の取得や住宅の省エネ改修等に対して引き続き、補助金を出すことが決まり、林野庁では「国産材調達費用や、国産材製品転換への建築物の設計・施工方法の導入・普及支援策」も決定されています。政府系金融機関による実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の期限は9月末まで延長されることが決まりました。

そして、これは大きな決定と受け止めていますが、ゼロゼロ融資で返済期間中にある事業主はこれから返済が始まります。金融機関が予定通り、返済を求めることになると、経営的にはかなり厳しい情勢ですので、返済猶予の条件変更について借りている側が申し出れば、細かい審査をせずに、応じて欲しいというのが全建総連の要望でした。これについて施策の中で触れられていましたので、これからどれだけ実行されるか見定めていきたい。各政党が今後、より具体的な対策を示して欲しいと思います。

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CCUSの促進普及も要望

――建設キャリアアップシステム(CCUS)の促進に向けても要請されていますね。

髙橋部長 CCUSをすべての建設労働者に普及していくためには一定の範囲で段階的に法的位置づけをしっかりとやっていくべきであると考えます。地方自治体が発注する公共工事で、段階的にCCUSの利用を義務付け、または大手の住宅企業でもゼネコンと同様に、CCUSのカードリーダーを設置して、さらに就業履歴が蓄積できる環境が必要です。これから地域のゼネコンや住宅の工事現場で活用されるような政策展開が求められます。

――もう一方、賃金の上昇も重要なテーマですが。

髙橋部長 設計労務単価の上昇が続いていますが、民間工事で働く技能者に十分反映されているとは言えません。引き続き、設計労務単価の引き上げを含めて、賃金上昇を政策的に誘導していくかは大きな課題とみています。

また、現場の実態を言えば賃金アンケートも実施していますが、減少傾向が続いています。しっかりとした賃金の好循環をつくっていくためには、賃上げできる土壌を整備していく必要があります。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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