中小建設会社が若手施工管理者を派遣で採用した結果

中小建設会社が若手施工管理者を派遣で採用した結果

「猫の手」になってくれそうな若手社員を募集

約1年前、稀にみる大型案件の補助要員として、急きょ人材募集を開始することになった。

建設業界で即戦力になり得る人材の雇用は至難の業、それは分かっていた。なので、今回は即戦力というよりも、建設業界的「猫の手」になってくれそうな若手人材の確保を最終目的とした

けれど、派遣会社を何社か当たるも、なかなかこれといった候補者が出てこない。時間だけが過ぎていく中、ようやく若干経験のある若手が1名見つかった。

実は今回、あわよくば「そのまま正社員にもなってくれそうな若手」が見つかればベストだと思っていたのだが、あいにく彼は派遣会社所属の社員だった。

派遣会社が自社の社員を持つという体制自体、私は初めて知ったのだが、無いものねだりしていてもはじまらない。大型案件を乗り切るためのクルーとして、彼を採用することに決めた。

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派遣社員を雇用するのはアリか?ナシか?

派遣社員を雇用するのは今回が初めてではない。私が入社した十数年前にも、今回のような大型案件がいくつか重なり、派遣社員を2名ほど雇ったのを記憶している。その時の2名はベテランの施工管理技士だった。

上級資格所持者で時給も高額。上司に言わせると「ベテランの人材はむしろ使いにくい」らしい。それぞれの仕事のやり方やこだわりを持っており、すぐにこちらのペースに合わせるのは困難だからだ。

ならばと思い、今回は若手施工管理を採用した。結果はどうだったか?

残念ながら、今回もこちらが期待する成果は正直得られなかった。初めに言っておくが、これはあくまで私個人の考えであり、もちろん全てがそうとは限らない。ただ、建設業という業種は派遣で若手施工管理者を雇うのは適していない。今回の雇用でそう感じた。

理由は、労働者派遣法によって禁止されている業務が多すぎるからだ。いわゆる「現場作業」はほぼNG。許されているのは工程管理や安全管理等の事務的な業務のみ。

我が社では、経験が少ない若手派遣社員の場合、現場でこちらから指示を出すというよりは、職人さんと上手く連携を取りながら、アシスト役として立ち回ることが多くなる。その際、「自分はこれができないので…」ということがあると、「え、じゃあ何ならできるの?」となってしまうのだ。

若手社員の多くは、たくさんの現場経験を積みながら仕事の流れを肌で覚えていく。それは事務所の中でできることではないし、現場にじっと立っているだけで習得できるとも思えない。

今回、私たち雇用する側が派遣のルールを理解していなかったことにも問題があったと思う。もしくは、もっと早くから即戦力となる経験者を探し始めればよかったのかもしれない。

結果として、若手クルー1名は3か月で下船していただくことになった。

“最難関!” 若手社員雇用への道のり

若手派遣クルーを3か月で見送ってしまったわけだが、大型案件はどうなったのか?結局、ベテランCADオペ1名を追加で派遣契約し、無事竣工を迎えることとなった。

だが、課題は残る。若手社員の雇用だ。前回の記事にも書いたが、我が社は建設業界のご多分に漏れず「高齢化」に一直線だ。少しずつでも若返りを図っていかないと、次の波が来た時に乗り切る体力がないという事態になりかねない。

今度は本腰を入れて、若手社員確保に向け、人事の舵を切ることになった。若手社員確保には、まず船の大改装から始めなくてはならない。昭和の旧式船には若いクルーが来るはずもないからだ。

じゃあ、今時の若者が会社に求めるものはなにか?調べてみた結果はこれだ。

  • 労働環境
  • 待遇
  • 完全週休二日制

中でも「完全週休二日制」は、昭和から平成、令和になり、他社が頑張って善処している中、我が社がいつまでも着手してこなかったことだ。

前回の記事で「昭和に作られた就業規則も令和な感じに改定された」と書いたのだが、蓋を開けてみたら昨年末の時点では、この部分は微妙に昭和を引きずっていた。年間休日数が少なすぎるのだ。少なくとも、求人詳細に「完全週休二日制」と記載できなければ、若者の応募はまず来ない。

「建設業界で完全週休二日制なんて無理でしょ?」という、その認識から変えなくてはと思い立ち、本社で社長を交えた再三の会議の末、令和ライクな就業規則に「完全週休二日制」がやっと…加わった。

若者が好む「令和カンパニー」になれるのか?

そして現在。我が社の船には、前途洋洋たる30代前半のクルーが1名乗船してくれている。

「完全週休二日制」が功を奏したのか、職場環境を気に入ってくれたのか、はたまた給与が希望通りだったのか…正直その辺りは不明だが、前の職場でかなり過酷な労働を強いられていたようなので、きちんと休みが取得できる会社という点が響いたのではないか、と私は思っている。

では、これで問題は全て解決したのか?いや、解決はしていない。この調子であと1~2人くらい若手が増えてくれれば安泰かもしれないが、そう簡単ではない。

完全週休二日制を含む就業規則改定は、会社にとっては諸刃の剣に等しい。十分に人員を増やしきれていない状態で休みを増やすことは、仕事量減少に繋がりかねないからだ。

とはいえ、このまま若手を増やさないままでは、会社は衰退の一途をたどることになる。仕事量と人員のバランス、これを上手く調整しながら前に進んでいくしかない。令和カンパニーになるための航海は、まだ始まったばかりだ。

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そんな疑問を抱きつつ、日々皆さんの猫の手やってます。
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