住宅や建築現場で耳にする「モノコック構造」とは?メリット・デメリットも紹介

地震が多い日本において、家を建てる際に気をつけなければいけないポイントが耐震面です。モノコック構造は、車や航空機にも使用されている構造で高い耐震性を誇ります。

モノコック構造を利用すれば、地震だけでなく台風の影響を軽減することも可能です。この記事では、モノコック構造とは何か、利用するメリット・デメリットを解説します。

モノコック構造とは?

モノコック(monocoque)とは、ギリシャ語の「ひとつの(mono)」と、フランス語の「貝殻(coque)」を組み合わせた言葉です。モノコック構造は、地震や台風といった災害が多い日本に適した工法です。

モノコック構造は建築だけで使用する言葉ではなく、もともとは航空機用に開発されました。では、モノコック構造の特徴や耐震性を解説します。

もともとモノコック構造は航空機用の構造

モノコック構造は、かなり強度を必要とする航空機用に開発された構造です。建築物だけでなく、新幹線やスペースシャトル、F1レーシングカーなど人の命に関わるものに使用されています。

モノコック構造の名前は卵の殻を意味しており、外皮(家でいう天井や床、壁)が強度部材を兼ねる構造物です。古来から日本で使用されている木造軸組構法は、木の柱や梁の骨組みで支える構造に対して、モノコック構造は、外皮全体で建物を支えています。

モノコック構造の仕組みと耐震性

モノコック構造は、大きな地震でも歪みにくく耐震性の高い構造です。モノコック構造が地震に強い理由は、力の受け止め方の仕組みが大きく関係しています。

従来使用していた木造軸組構法では、外部から受ける力を柱が交差する点で受け止めており、接合部分に大きな力が集中していました。

一方、モノコック構造では各階を六面体の箱型パネルで構成しているため、外部の力を面で受け止め分散します。力が一点に集中しないため、耐震性が高く、地震でも歪みにくい建物を造れます。

モノコック構造が頑丈な理由は耐力壁にあり

モノコック構造が頑丈な理由は、壁の強さにあります。水平方向からの力に抵抗し、建物を支える役割を持つ壁を耐力壁と呼び、耐力壁の強さは壁倍率という単位で表現します。壁倍率は0.5倍~最大値5倍までで設定されており、壁倍率が高いほど、地震や台風などの水平方向からの力に強い(耐力壁の強度が強い)建物といえます。

建物には、耐力壁が地震の揺れに耐える核となる剛心と、建物の重さの核となる重心が存在します。剛心と重心のずれを偏心といい、ずれの程度を偏心率といいます。偏心率が大きいほど、地震で建物がねじれやすく、耐震性に劣るため、偏心率をできるだけ小さくする設計が重要です。

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モノコック構造と在来工法の違い

天井・床・壁の6面すべてに構造用耐力面材を使用しているモノコック構造。剛性の高い6面体構造によって、地震や台風といった外部の力を建物全体で受け止め、吸収するため、在来工法より外力に強い特長があります。

家づくりには、モノコック構造や在来工法、2×4工法(ツーバイフォー工法)といった言葉が存在しますが、一体どのような違いがあるのでしょうか。では、モノコック構造と在来工法の違いを見てみましょう。

モノコック構造は2×4工法

建築においてモノコック構造とは、壁式工法を指します。壁式工法には、2×4工法や2×6工法、木質パネル工法といった種類があり、すべてモノコック構造です。

壁式構造には柱や梁などの骨組み(フレーム)がなく、代わりに構造用合板(パネル)を使用しています。北米では、9割の住宅で2×4工法が採用されています。主要な枠組み木材が2インチ×4インチであることから、2×4工法の名称がつきました。

在来工法に比べて、耐震性が高く職人の技量によって仕上がりにばらつきがない2×4工法ですが、設計の自由度は在来工法に劣ります。

モノコック構造でない工法が在来工法

柱や梁、土台や筋交い、火打ちなどで構成している在来工法。モノコック構造とは異なり構造用合板を使用せず、骨組みによって建物の重さや地震の揺れを受け止めています。

しかし、現在ではプレカット工法や金物補強、剛性床などさまざまな工法が用いられているため見た目だけでは在来工法か分かりにくいでしょう。モノコック構造とは異なり、在来工法は間取りを自由に変えられるため、リフォームがしやすくデザインの自由性が高くなります。

プレハブ工法と鉄筋コンクリート造

住宅工法には、2×4工法や在来工法のほかに、プレハブ工法鉄筋コンクリート造があります。

プレハブ工法は大量生産を目的とした工法で、使用する素材はコンクリート系・鉄骨系・木質系です。プレハブ工法は、工場で部材を生産してから現場で組み立てるため、工期を大幅に短縮できます。

鉄筋コンクリート造とは、設計事務所が好んで手掛ける工法です。鉄筋コンクリート造には、室内に柱や梁を見せない方法の壁式構造と、見せる方法のラーメン構造があります。

モノコック構造と従来の工法どっちがいい?

従来工法は、骨組みから計画するため間取りの自由度が高いですが、2×4工法は箱を組み立てる方法のため、リフォームで壁を抜いて部屋を広げるなど間取りの変更が困難です。

さらに、2×4工法は高断熱・高気密で耐火性や室内温度を保てる特徴がある反面、カビや結露が発生する可能性があります。とはいえ、従来の工法に比べて工期が短く、職人による仕上がりのばらつきも少ないことが2×4工法の強みです。

モノコック構造の2×4工法と従来の工法は、それぞれ良さがあるため、各特徴を理解することが非常に大切といえます。

モノコック構造を住宅に利用するメリット・デメリット

柱や梁を使用せず、壁や天井、床で作成するモノコック構造の大きなメリットは、地震への耐久性です。地震が発生しやすい日本において、耐震性の高い建物は安心して住めるでしょう。

一方、リフォームがしにくいなどデメリットも存在します。では、モノコック構造で建物を造るメリットとデメリットを見てみましょう。

メリット

モノコック構造のメリットは、地震への耐久性が高い点です。一般的に、筋違(柱と柱の間に木材を入れ強度を上げること)より面材(面の部分を作る板材)の方が、地震に強いとされています。

つまり、6面で構成しているモノコック構造は耐震性が高く、台風など外から受ける力に強いことが特徴です。また、準不燃材料の認定を受けている面材を使用することで火災にも強い建物にできます。

さらに、モノコック構造は少ない柱で強度が保てるため、広い生活空間の確保が可能です。

デメリット

外から受ける力に強いモノコック構造ですが、リフォームが難しい点がデメリットといえます。面で構成しており、建物の強度を高めているため、不用意に取り外すことができません。

大きな窓を取り付けたり、広い吹き抜けを作ったりといったリフォームに制限があるため、デザインの自由度は在来工法に劣ります。モノコック構造を利用する際には、今後リフォームする可能性も考慮して判断する必要があるでしょう。

モノコック構造を利用して耐震性を高めよう

この記事では、モノコック構造とは何か、利用するメリット・デメリットを解説しました。

天井・床・壁で構成するモノコック構造は、外から受ける力を吸収するため、災害から建物を守る力に優れています。

日本は、地震や台風といった災害が非常に起こりやすい国です。耐震性の高い家を作りたい場合は、ぜひモノコック構造を検討してみてください。

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