奥山 香澄さん(国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所管理課)

奥山 香澄さん(国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所管理課)

「こんな土で盛土したら、雑草が生えてしまうなぁ」 農学的な視点から改善策を考えていきたい

農学を学んでいた頃は、土木のことはなにも知らなかった

関東地方整備局の女性職員2人目は、河川系職員として、京浜河川事務所で働く入省3年目の奥山香澄さんだ。

大学では農学を学んでいたという奥山さんだが、そんな彼女に土木の世界はどう映っているのか。

関東地方整備局 女性職員1人目の記事はコチラ

大学時代は雑草に特化した研究に従事

――土木に興味を持ったきっかけはありましたか?

奥山さん 私は大学では農学を学んでいて、研究室は植物生態学を専攻していました。クズやフジなどのつる性の雑草に特化した研究をやっていました。なので、土木についてはなにも知らない状態でした。

あるとき、いつもの河川敷で植生調査を行おうとしたところ、洪水で川岸が削られたのか、いつもの調査地点までの川沿いの道がなくなってたんです。当たり前にあると思っていたものが、突然なくなっていたので衝撃的でした。それでインフラ、土木に興味を持つようになりました。また研究室と国土交通省に関わりがあったことも、国土交通省の仕事に興味を持つきっかけになりました。

――なぜ農学を学ぼうと思ったのですか?

奥山さん 漠然と自然や植物に興味があったからです。ずっと研究室にこもるものではなく、フィールドに出て実習や研究できるものが良いな、と思っていました。

植物と関わりがありそうな河川の仕事にひかれる

――就活はどんな感じでしたか?

奥山さん 最初は農学の知識がいかせそうな、農林水産省や環境省を考えていました。その一方で、大学の公務員合同説明会で、たまたま国土交通省関東地方整備局の説明を聞いてみたら、農学でも採用枠があることを知りました。その後、関東地方整備局の現場視察や説明会などに参加し、関心を強めていきました。最初は、河川も道路もどちらにも興味がありましたが、最終的には、植物と関わりが深そうな河川を選びました。

――転勤は大丈夫でしたか?

奥山さん 関東出身で、大学も北関東だったので、関東圏なら転勤するのは平気かなと思っていました。全国転勤は「さすがにキツイかな」というのはありましたけど。

今でも勉強の日々

――これまでどのような仕事をしてきましたか?

奥山さん 最初の配属先は利根川下流河川事務所の調査課でした。2年間在籍して、河道計画検討業務や樋管の設計業務、流域治水プロジェクトなどに関わっていました。専門用語をはじめ、土木の基礎的な知識がなかったので、日々勉強しながら、仕事をやっていました。勉強の日々なのは、今でも変わりませんけど(笑)。

――とくに印象に残っている仕事はありますか?

奥山さん 流域治水プロジェクトは、協議会の立ち上げに関わったのですが、電話対応もまだ慣れない状態で、関係機関や自治体などとの調整を担当したので、ちょっと大変でした。ただ、ニュースに出るような大きな仕事に関われたのは、おもしろかったです。

――今はどのような仕事をしているのですか?

奥山さん 今年の4月から京浜河川事務所の管理課で、多摩川、鶴見川、相模川の3水系の河川維持管理工事、多摩川水系の工作物に関する河川協議などをしています。初めての事務所および課で、新しいことを覚えながら仕事をしていたので、最初の4月、5月はけっこうクタクタになっていました(笑)。

前の職場に比べると、「ガッツリ土木」な感じで、より基準書を見たりとか、土木的な知識が要求される頻度が多くなりました。

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農学的な視点から、河川整備の改善策を考えていきたい

現場で打合せをする奥山さん(関東地方整備局写真提供)

――農学の勉強が役に立ったということはありましたか?

奥山さん 維持工事で除草したりするときには、「この時期だと、植物はこんなに生えてきちゃうよね」といった感じで、状況が理解しやすいということはあります。他にも農学の勉強が役に立ったと感じられるようなことがちょこちょこあるので、個人的にはそれが楽しいです。

堤防の除草は堤防の点検をしやすくするため、現在では原則年2回行っているのですが、「雑草が伸び過ぎ」という苦情がよく来るんです。今後の堤防の除草をどうするかを業務として検討していますが、自分の興味関心のあるところだなとは感じています。

――土木は「経験工学」と言われていますが、農学との文化の類似とか違いを感じることはありますか?

奥山さん 農学の世界でも、実験室ではうまくいったけど、畑とか自然環境の中ではうまくいかないということはあります。なので、農学でも、データだけでなく現場も大事という面があります。

実際に除草などの維持管理の仕事をやっている身としては、「こんな土で盛土したら、雑草が生えてしまうなぁ」と感じます。限られた維持管理の予算では、コスト的に難しいとは思いますが、「こういう土を使えば良いのに」と思ったりしています。

堤防の芝も年2回草刈しているのですが、芝は本来、何回も刈ることで、芝以外の植物が生えないように管理すべきものなんです。ゴルフ場ではそうしています。年2回だと、他の植物に芝が負けちゃうんです。刈る頻度を上げれば良いのにとは思うのですが、やはりコスト的に難しかったりします。

個人的には、自然条件など農学的な視点から、この辺をどう改善していけるかについて、考えなきゃと思っているところです。運んできた土をもっとキレイにするとか、上にキレイな土を被せるとか、今後の維持管理を考慮すると最初の段階でやるべきことがあると感じています。

――雑草が生えるのは、盛土に使う土が原因ということですか?

奥山さん たとえば、築堤するのに、別の場所から土を持って来るわけです。一応土壌処理はするのですが、植物の種子が含まれていると、それが発芽してしまうことがあるんです。

――そのおかげで「キレイな花が咲いた」とかはないんですかね?(笑)

奥山さん 基本的には雑草ばっかりですね(笑)。セイバンモロコシとかセイタカアワダチソウとかクズとか、いろいろな種類の植物がいろいろなところで増えています。業者さんに聞いても、背丈の高い外来生物がだいぶ増えていて、その分苦情も増えているそうです。

土木を勉強していないからといって、選択肢から外すのはもったいない

――今後どういう仕事をしたいというのはありますか?

奥山さん 今のところ、これが絶対やりたいと思うものはとくにはありません。ただ、自分の興味関心がある植物に関わる仕事があれば、そういう仕事に携わりたいとは思っています。

――土木な職場に飛び込んでどうですか?

奥山さん 土木という未知の世界なので、最初は肩身の狭い思いをするのかなと思っていましたが、実際に仕事をしてみると、間口の広い職場だなと感じています。土木土木した仕事だけでなく、流域治水のような計画系や環境系の仕事もあるからです。

――土木以外の学生さんに関東地方整備局はオススメできますか?

奥山さん 若い人には、基本的にはその人次第ですが、土木を勉強していないからといって、関東地方整備局を選択肢から外すのは、もったいないということはお伝えしておきたいです。いろいろな分野で学んだ方が関東地方整備局に入ってくれるほうが、いろいろな視点で政策づくりや現場づくりができるようになるのではないかなと期待しています。

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