年月を経て、仕事や考え方に変化はあったのか
前回、日向市の株式会社内山建設社長の内山雅仁さんの記事を出したところだが、社員の方々にも取材していた。
今回登場していただく西口雄二さんと黒木卓也さんは、5年ほど前にも記事で紹介したことがある。年月を経て、仕事の上でなにか変化があったのか。その辺を中心に、お話を聞いてきた。
難儀した現場は達成感が大きい
西口 雄二さん(株式会社内山建設 工事部)
――以前の取材では、「最初から最後まで現場にいたい」という趣旨のお話をされていました。その後どうですか?
西口さん あの後は、ほぼすべての現場で最初から最後までいました。県発注の河川掘削工事や治山工事といった現場で、監理技術者や主任技術者を任されたからです。私の実績や経験が活かせる現場が多かったです。今は、河川掘削の現場が終わったので、他の人の鉄道関係の現場のお手伝いをしています。
――県の仕事が多いんですか。
西口さん そうですね。会社としても、国の仕事は最近取れていません。一方、治山工事は採算が合わないイメージがあって、手を挙げる業者が少ないので、ウチが取ることが多いです。
――治山工事は採算が合わないんですか。
西口さん 山奥の現場なので、工事中に災害が起きるリスクなんかを考えないといけないからです。当初の予定通りいかないケースが多いので、一般的な業者さんにはなかなか手を出しにくいところがあるんです。
当社の経営理念に、『地域にとってなくてはならない会社になる』というのがあり、それを地道に実践しているということです。第一線で工事をやっている人間としては、技術面・経済面両方においてそれなりのプレッシャーがあって大変ですけど(笑)。
――最初から最後まで現場をやってみて、どう感じましたか?
西口さん 竣工時は、達成感があります。その過程で難儀した現場はとくに大きいですし、喜びも感じます。あと、自分が「少しは成長したかなぁ」とも思いますね。ただ、工事の着手前は不安感いっぱいで。施工の進捗が上がっていくほど小さくなります。
入社してからずっと現場代理人を任される
黒木 卓也さん(株式会社内山建設 工事部)
――黒木さんは、以前取材したとき、「とりあえず林道開設以外の現場をやりたい」とおっしゃっていましたが、その後どうでしたか?
黒木さん その後はいろいろな現場を経験させてもらっています。最近は河川工事が続いていましたが、その前は道路改良の現場や築堤の現場もやりました。一人現場の現場代理人として、ずっと県の仕事をしています。5現場ぐらいですかね。
――以前「資格をとりたい」というお話もありましたけども。
黒木さん 当時は二級土木施工管理技士でしたが、その後一級を取りました。
――最初からずっと一人現場の現場代理人って、普通のことなんですか?
西口さん ここ数年は技術者が不足しているので、会社的にそうせざるを得ないという状況にあるんです。
黒木さん 経験のない現場ばかりやってきたというのはその通りですが、社内に経験のある先輩は誰かしらいるし、なにかあったらすぐに聞けるので、悲観的になるようなことはまったくなかったです。
――ポジティブで素晴らしいですね。
黒木さん ありがとうございます(笑)。経験がないことに対する心配は本当になかったです。
わからないことは先輩に教えてもらったので、とくに失敗なくきている
――仕事をする上で、困ったことはなかったのですか?
黒木さん それはもちろんありました。技術的な面では不安要素しかないので。そういうときは、先輩に電話して教えてもらっていました。
たとえば、道路改良の現場では、重力式基礎を打設した後、ブロックを積んでいくという工程があったのですが、この際のコンクリートの品質管理に関するルールについて、曖昧な部分がありました。まずは自分で調べるわけですが、教科書通りやってうまくいくとは限りません。そういうところを先輩から教えてもらうわけです。
――いろいろな現場をやってみてどうですか?
黒木さん どちらかと言えば土工が多いので、コンクリート構造物を作るとか、そういう工事に携わってみたいですね。
――後輩に教えることはありますか?
黒木さん 河川掘削の現場は、後輩と2人でやっていて、ボクが主任技術者で後輩が現場代理人をしていました。とくに問題なくできました。
――住民対応はいかがでしたか?
黒木さん 道路改良の現場では、地元の区長さんなどと毎月お話をしていたので、地元の方々とはけっこう仲良くなっていました。4つの現場が動いていたので、安全協議会があったのですが、私が代表をやっていました。他の業者さんとのやりとりもやっていましたが、そちらもほぼうまくいきました。
――順風満帆ですね。
黒木さん そうですね(笑)。あまり失敗することはなかったですね。あくまでこれまでのところはですが。
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ICTイコールDXとは考えていない
――内山建設での働きやすさについて、どう感じていますか?
西口さん 建設業界的にはICTによるDXが言われていますが、私はICTイコールDXとは考えていません。べつにICTを活用しなくてもDXはできると思っているからです。働き方に関するいろいろな規制がありますが、それが本当に働きやすさにつながっていて、自分のためになっているか、疑問がなくはなりません。
私が若いころは、今よりいろいろな規制がユルかったので、夜遅くまで働くこともありました。それなりの時間をかけることで、仕事を覚えていったわけです。今の自分があるのは、このときの経験があるからだと感じています。
でも、最近はそういうことができません。ICTを活用したとしても、若い社員が仕事をちゃんと覚えられているか、不安に思っています。ICTのことは身についているかもしれませんが、現場の流れとか、本質的なことが身につくのか、非常に疑問です。
それはそれとして、私にとっては、内山建設は働いたら働いた分だけお金をもらうことができる会社です。そういう意味で働きやすい会社だと思っています。これから働き方改革が進んだとしても、若い人たちにとって、そういう会社であり続けてほしいと思います。
――最近は労働時間は減りましたか?
西口さん 工種によります。たとえば、河川掘削工事は、以前に比べ時間外は減りましたが、治山工事は、移動時間がかかるので、以前とあまり変わりません。書類づくりを含めて、時間内で収めるのは、かなり難しいです。
――発注者もいろいろ配慮するようになっているのではないですか?
西口さん 以前は出さなくても良さそうな書類もありましたが、発注者に関しては、最近は出すべき書類の量は減ってきてはいます。ただ、安全衛生関係については、提出すべき書類量は変わっていません。むしろ、規制が厳しくなったために、前より多くなっています。
――働き方改革のために、仕事が増えたということですね。
西口さん 本当に厳格にやろうとすると、ものスゴく時間と労力がかかってしまいます。
休みが増えるのはありがたいが、それで納得のいく仕事ができるのか
――黒木さん、内山建設の働きやすさについて、どうですか?
黒木さん ボクも西口さんと同じような意見を持っています。会社からは「休め休め」と言われるんですが、そんなに休んで、「大丈夫なのかな、やっていけるのかな」と不安になります。
ボクの場合、世代的に中途半端なんですよ。上の世代にベテランの方々がいて、下には若い子がいるわけですが、早く上の世代に追いつきたいのに、下の世代に合わせないといけないんです。下の世代に合わせて仕事をしていると、ドンドン仕事が遅れていきます。かと言って、仕事を優先すると、職場の雰囲気が悪化してしまいます。「帰りたい、帰りたい」が出てきたりするわけです(笑)。
「納得するまで仕事をしたい」というのが、ボクの正直な気持ちです。とくに現場を持っているときは、仕事を家に持ち帰ったこともあります。
――会社からは「帰れ」と言われるのですか?
黒木さん 言われます。最近は全体会議でも「残業をなくす」と念をおされます。そういう意味でシンドイです。若い子も、「ちゃんとルールは守ってくださいよ」という考え方です。
たしかに、家庭持ちのボクからすると、家族との時間が増えて嬉しい面もあります。ただ、自分のキャリアや成長を考えると、やはり納得するまで仕事をやりたいという感情が残ります。もっと良いやり方を模索しているところです。
――どうバランスをとるか、ということですね。
黒木さん そういうことですね。そういう状況なので、たとえば、若い子を現場に連れて行っても、彼らにできることが少ないので、仕事を任せることができず、ボクの手が空くのをただ待っている時間が長くなるんです。ボク的にはそのほうがラクですけど、それじゃダメだろうと思うんです。
建設ディレクターのおかげで、とりあえず仕事はラクになった
――建設ディレクターの方もいらっしゃるようですが。
西口さん 書類づくりなどを手伝ってもらえるので、もちろんちょっとはラクになっています。ただ、どういう仕事を頼んだらラクになるかはしっかり考える必要があります。と言うのも、現場でしかわからない仕事もあるからです。
――たとえばどういう仕事ですか?
西口さん たとえば写真整理です。順番通り並べる必要があるのですが、現場を知らないとバラバラに並んでたりします。そういう仕事は振れないし、振ったとしても最後に直さないといけません。
――黒木さん、建設ディレクターについてどう考えていますか?
黒木さん ボクも西口さんと同じです。どちらかと言えば、現場の書類づくりより法的な書類づくりをお願いしています。役所とやりとりする書類は自分でつくっています。道路使用願いや産廃契約といった書類はお願いしています。
それだけでもスゴく助かっています。その分現場に集中できるので。現場以外のことで外とやりとりしながら書類をつくるのは、本当にメンドくさいですから(笑)。
西口さん ほかの現場のことも踏まえて書類をつくってくれるのがありがたいです。わたしは自分の現場のことしか知りませんから。
若い社員の給料が上がるように頑張っていきたい
――今後やりたい仕事とかありますか?
西口さん 私が今一番考えていることは、こういう工事がしたいと言うより、若い社員の給料、とくに作業員の給料を上げたいと考えています。そのために現場で利益を出したいです。ほかのことにお金を使うなら、若い社員の給料に回してほしいと思っています(笑)。
日向で一番高い給料を払っていれば、誰か辞めてもすぐに新しい人が入ってくるだろうとも思います。そういうところで頑張っていきたいです。
これまで失敗がない分、逆に大きな失敗をする不安がある
――黒木さん、いかがですか?
黒木さん ボクは早く自分に自信が持てるようになりたいです。今はそれに尽きます。上を見れば見るほど、自分の経験値の少なさを痛感するからです。そのためには、過去にやったことがないような重要な現場を経験したいです。
今まで大きな失敗もなく、順調にきているので、いつか大きな失敗をするときがくるんじゃないかな、と逆に不安なんです(笑)。だから、自分に自信を持てるような仕事をしたいんです。