大東建託株式会社(東京都港区)は、11月から首都圏を中心に61店舗のインドアゴルフを展開するGJB株式会社(東京都渋谷区)と業務提携、インドアゴルフ事業の試行を開始。このほど、東京都中野区に協業店舗1号店となる「SMART GOLF新中野店」をオープンした。大東建託はGJBとフランチャイズ契約を結び、オーナーという位置づけで、運営はGJBが担う。
2024年3月までを試行期間とし、事業性、消費者ニーズや展開エリアなどを検証。今後は、大東建託がこれまでに培ってきた賃貸住宅の企画・設計・施工技術のノウハウや組織体制を活かし、協業店舗数の拡大や土地所有者への新規事業提案、建築・内装・設備工事の請負などにより非住宅系事業の拡大とコア事業である建設事業の強化を目指す。
今回、「新中野店」の開店を前に大東建託事業戦略部の矢部征彦部長とGJBの代表取締役である高須賀優人氏と大石康太氏が今回の提携の狙いやインドアゴルフの需要などについて語った。
マンションや商業施設1Fを有効利用
左から、大東建託 事業戦略部の矢部征彦部長、GJB 代表取締役 高須賀優人氏と大石康太氏
大東建託の事業戦略部は、同社のコア事業である建設・不動産事業以外で新たな領域を拡大することを目的に2019年に設置された。具体的にはM&A、企業とのアライアンス、新規事業創出などを展開している。
大東建託はスポーツとの関係も深く、スポーツ振興やアスリートの支援を積極的に実施してきた。未来のアスリート支援プロジェクト「TEAM DAITO(チーム大東)」を推進して、2023年度は28競技・計51組のアスリートを支援中だ。次に女子プロゴルフトーナメントの一つである「いい部屋ネットレディス」を主催するほか福岡ソフトバンクホークスなど各プロスポーツに協賛している。そして今回、シミュレーションゴルフという新たな分野にも関心を寄せたという。
オープンした「新中野店」は、商業ビルの1階に設置した点が大きなポイントだ。大東建託はレジデンシャルと呼ばれるマンションや商業施設を提供しているが、GJBが運営している「SMART GOLF」の中には、レジデンシャルの1階に店舗を設置するケースもある。「居住用建物の1階は防犯上の観点から相対的に入居者が決まりにくい場所だが、今回のようにインドアゴルフ店舗に入居してもらうことができれば、本業にもプラスになる」(矢部氏)
「SMART GOLF新中野店」の外観
多様なアレンジでのメリットも大きい。大東建託の主力は郊外にあり、このエリアでの店舗を展開するほか、土地や不動産を所有するオーナーと協業でインドアゴルフ店舗の推進も検討できる。今後の方向性としては、「新中野店がうまく稼働するのを見据えながら成長していくことが望ましい。まず2024年3月までに事業性がどのくらいあるかを確認したい。会員がどのくらい伸びるか、実際の稼働率などのデータを取得できるため、その後の店舗展開を検討したい」と矢部部長は語る。
今回、GJBと業務提携に至った背景は3点ある。1点目は、インドアゴルフの中でもシミュレーションゴルフを採用している点だ。これは1打1打の詳細な角度等が数字で分析できるだけでなく、シミュレーション上とはいえ190のコースがあり、およそ1時間に1コースを回れ、密度の濃い時間でゴルフを楽しめる。2点目は、シミュレーションゴルフは一般的には価格設定が高い一方で、GJBの価格設定が、大東建託が考えている入居者世帯の属性に合わせた価格帯であることも組んだ理由の一つだ。
さらに大東建託が考えるビジネスモデルに対してGJBは柔軟に対応し、頼りがいのあるパートナーとして映ったことが3点目の理由になったという。
「SMART GOLF新中野店」の内観
インドアゴルフ事業参入の背景では、全国のアウトドアゴルフ練習場数が前年対比で42件減少しているが、インドアゴルフ練習場は前年対比196件増加している(公益社団法人全日本ゴルフ練習場連盟の2023年度10月全国練習場施設数調査)。とくに東京を中心とした大都市圏でのインドアゴルフ練習場施設の出店が目立ち、今後も一定の需要が見込まれる。
大東建託が「大東建託グループ 7つのマテリアリティ(重要課題)」の中で事業領域拡大を目指す経営戦略と紐づけた目標では、「土地と資産の有効利用メニューの拡充」と「非住宅系事業への積極的参入」を推進中。インドアゴルフ事業の参入もこの経営戦略の一環であり、不動産開発事業での新たなバリエーションとしてシナジーを創出できると考え、GJBとの提携に至ったわけだ。
施工面では、今回は1階をリニューアルし入居した。「今後も同様な形で店舗展開していく。その時には当社自身も施工会社として入札参加について了解いただいている。新中野店はまず第1号施工での実績といえる」(矢部氏)
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「SMART GOLF」のシェアは首都圏1都3県では業界トップ
一方、GJBは「インドアゴルフをより身近な世の中に」のミッションのもと、トップランナーとして業界を牽引している。現在、SMART GOLFは61店舗だが、2025年7月までに国内300店舗を目標に事業を推進中だ。今回の業務提携では、SMART GOLFの運営ノウハウの提供と大東建託の新規事業の推進に貢献する。巨大資本をもつ強力なパートナーと連携することで、今後の加速的な出店に期待がかかり、相互にメリットがある取組みとなる。
現在、GJBは国内で第2位のシェア率だが、1都3県に限れば業界トップの店舗数となっている。「立地商売で店舗展開を行うビジネスであるため、スピード感を持って行う必要がある。今回の提携では、スピード感をより早めるために心強いパートナーと組むことができた」(高須賀社長)
SMART GOLFの敷地面積は、平均すると20坪から25坪の間となる。また、店舗の出店で重視するのは競合環境で、他社の店舗が多い場所は避け、夜間人口数が多い所を出店のターゲットとする。価格設定は税込み約2万円(場所などで変動)。会員のデータを見ると、月に10~20回ほど利用することから、リアルでの打ちっ放しよりもリーズナブルになる。
打った後にさまざまなデータが出力される
新規事業に意欲的に挑戦する大東建託
大東建託グループは、2020年度にスタートした社内ベンチャー制度「ミライノベーター」を展開。グループ全従業員で約1万7,000人が在籍しているが、「ミライノベーター」はグループ従業員を対象とした制度で、新規事業の提案者自らが事業オーナーとなり、実証期間を通して顧客課題の検証やテストマーケティングを行いながら、事業化を目指す。
このほか大東建託はスタートアップ企業と連携し、DXビジョンである「デジタルで既存事業をトランスフォーメーション」「デジタルで今までにない”生活支援サービス”をクリエイション」を元に、既存ビジネスの変革と新規ビジネスの共創を目指せる提案を募集するほど、どん欲に新規事業に取り組んでいる。
大東建託は今後の戦略である既存コア事業とシナジー効果を持たせた新規事業をさまざまな手段をもとに実施中だが、次なる新規事業はどのようなものか注目だ。
「 SMART GOLF 新中野店」概要
所在地:東京都中野区本町6-27-12 TAS+NAKANO BLD 102
アクセス:東京メトロ丸の内線「新中野駅」徒歩5分
営業時間:24時間365⽇
打席数:2打席 完全個室