内山 雅仁さん 株式会社内山建設 社長

内山 雅仁さん 株式会社内山建設 社長

「資格マニア」の内山建設社長がついに二級建築士を取ったそうなので、話を聞いてみた

建設会社の経営者なのになぜ、二級建築士資格を取ったのか

「受かりました」。2023年の年の瀬、このメッセージが届いた。最初は「なんだ」と思ったが、メッセージ主を確認して合点がいった。過去に何度も取材した宮崎にある内山建設の内山雅仁社長だったからだ。

取材時に「試験に合格したら、是非連絡してくださいね」と伝えていたから、律儀に連絡をしてくれたというわけだ。いかにも真面目な内山社長らしい対応だ。

内山社長は、経営者でありながら、いわゆる資格マニアと言っても過言でないほど、土木建築の技術系のさまざまな資格を保有している。主な保有資格としては、土木、建築、管工事、造園のそれぞれ1級施工管理技士、1級舗装施工管理技術者、技術士(建設部門、総合技術監理部門)、宅地建物取引士がある。

そんな内山さんに前回お会いしたとき、「今は二級建築士に挑戦している」と言っていた。「受かりました」とは、二級建築士試験に受かったのだろうと合点したわけだ。

そんなメッセージを送ってくるということは、記事にして良いということだろうと勝手に解釈した。これまでに取った資格の話や試験勉強の苦労話、個人的にも気になる次に挑戦したい資格の話などをまとめれば、記事になるだろうという算段を立てた。

ということで、内山さんにその辺のお話を聞いてみた。

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筆記も製図も3回目の挑戦だった

内山さんに届いた令和5年二級建築士試験合格通知書

――二級建築士合格おめでとうございます。

内山さん ありがとうございます。

――以前のお話だと、製図に苦労しているということでしたが、その後製図を頑張ったということでしょうか?

内山さん 筆記と製図の2つの試験があるのですが、実は、筆記も3回挑戦しているんですよ。一発ではないんです。筆記に合格したら、製図に3回まで筆記なしで挑戦できるのですが、3回目のラストチャンスで合格することができました。

会社経営のかたわら、建築士試験とマラソンの練習に励む

――勉強時間はどのように確保しましたか?

内山さん 専門学校に通ったのですが、平日は仕事終わりに週に1日3時間程度、日曜日は終日という感じで通っていました。あとは出勤前の時間を活用しましたね。製図は、枚数描かないと慣れないので、朝4時に起きて、毎日1時間ほどひたすら描いていました。

ただ、私は走るのが趣味で、マラソンで目指しているタイムがあったんです。これは翌年に繰り延べしたくなかったので、勉強しつつ、マラソンの練習の時間も確保していました。つまり、二兎を追ったわけです(笑)。

――スゴいとしか言えません(笑)。

内山さん 走る時間だけは、どうしても確保したかったんです(笑)。

――いや~、充実した人生ですね。

内山さん 会社経営と建築士試験とマラソンなので、三兎ですね(笑)。ただ、体調を維持するためにも睡眠時間は削りたくなかったので、5~6時間は寝るようにしました。本業の土木建築が堅調だったので、助かりました。もし、本業に問題があった場合は、試験もマラソンもあきらめただろうと思います。

試験が終わったときに、「イケるかも?」という感触があった

――合格を知ったとき、どう思いましたか?

内山さん 試験が終わったときに、「これはイケる」という感触は、正直ありました。

――建築士の資格をどう活かしていくおつもりですか?

内山さん 人との交流の場の拡大に活かしていきたいです。建築士会という団体があるのですが、二級でも入れるので、とりあえずは、ここに入って他の建築士の方々といろいろな交流を深めたいと思っています。

「資格を取る」と言うよりも、「知識を身に付ける」のが動機

――そもそもの話になりますが、なぜ「資格」を取るのですか?

内山さん 私は元銀行員で、シロウトとして土木建築業界、内山建設に入ってきました。将来は父の後を継いで経営者になることが想定されていたので、「修行」のため建設現場に入り、いろいろな技術に触れました。ただ、ちゃんとした知識というものは、体系的に勉強しないと身に付かないものです。中小企業なので、技術のことを知らない状態では、正確な経営判断ができないという思いがありました。そういうことで、最初は、「資格を取る」と言うよりも、「知識を身に付ける」ということを目的にしていました。

――最初に挑戦した「知識」はなんでしたか?

内山さん 1級土木施工管理技士でした。現場経験を積みながら、ちょこちょこ勉強して取りました。20数年前のことです。

――1級土木を取って変化はありましたか?

内山さん 社内の見る目が変わりましたね。合格するまでは、土木のことを知らない「素人」だと思われていましたが、合格後はそういうのがなくなりました。

自分のチカラを知るため、技術士に挑戦

――その後、挑戦したのはなんですか?

内山さん 主なところで言うと、1級土木施工管理技士を取った翌年に1級管工事施工管理技士、その次の年に1級造園施工管理技士を取りました。経営的に仕事の幅を広げたいと思ったので、私が取りました。1級土木のついでにバタバタと取った感じです。

1級土木を合格した7年後ぐらいに、技術士(建設部門)を取りました。翌年には技術士(総合技術監理部門)を取りました。

1級建築施工管理技士は、資格を持っている技術社員が1人いたのですが、現場と営業の兼任は基本的にはできないルールになっているので、営業をするために、私が取得しました。あと、不動産事業にも事業の裾野を広げたいと思ったので、宅地建物取引士を取りました。

――技術士に関しては、土木最高峰の資格だから取った、ということですか?

内山さん そうですね。それまで大学受験も含めてトコトンまで勉強したことがなかったので、「自分のチカラを試したい」という思いがありました。それで難関と言われる技術士に挑戦したということです。

――それで建設部門と総合技術監理部門両方挑戦したわけですか?

内山さん まあ、そうです。総合技術監理部門の試験は、内容的に経営に似ているので、知っていることが多く、比較的スムーズにいきました。建設部門の勉強は、初めて見るものばかりで、メチャクチャ苦労しましたけど。

――独学ですか?

内山さん ええ。テキストを買って、それで勉強しました。

経験則だけでなく、きちんと技術的な考え方に沿って提案ができる素養がある

――技術士を取って、変化はありましたか?

内山さん 当時はまだ地域の建設会社の経営者で技術士を持っている人は少なかったので、名刺を見たときに「えっ!?」という反応をされました。また技術士会という団体があって、そこでいろいろな方々と交流できるので、人脈も広がりました。

当社が施工を受注した現場について、発注者やコンサルと技術的な協議をするときなどは、技術士の資格が役に立っています。相手が、こちら側が経験則だけでなく、きちんと技術的な考え方に沿って提案ができる素養があると認めてくれて打合せに入れるのは大きいです。

論理的な考えに立って協議をする能力は、その現場の課題を技術的に解決するために求められるだけでなく、会計検査などで現場状況が公になった際にも必要とされます。

物事を論理的に考える習慣は、銀行の融資部門に従事した時代に相当きたえられたので、意外なところで役立っています。おかげで、「理屈っぽい」とは言われますが(笑)。

ただ、経営に関して言えば、「論理」だけでは決してうまくいきません。これは自分の経験で学んだのですが、「感性」というものがスゴく大事になってきます。論理は論理で大切ですが、感性を磨く努力も怠ってはいけないと思っています。

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挑戦したことはムダにはならない

――地域建設業の経営者にとって、いろいろな資格を取ることをおススメしますか?

内山さん 正直おススメするかは、ビミョーです。中小の社長は、大手の経営者と違って、基本的に「なんでも屋さん」なので、社員に近い立場で物事を判断せざるを得ないということが、しばしばあります。そういう意味で、地場の建設会社の経営者はその分野の知見を備えるために資格は持っておいたほうが良いとは思います。

ただ、経営者の使命はあくまで経営することであって、資格を取得することではありません。ですから、資格を取ることを目標とすることは本来ではないと思います。

――資格取得に関して、読者にメッセージがあれば。

内山さん 資格を取るにはある程度の時間を確保することが必要です。難しい資格になればなるほど、より多くの時間が必要になります。ただ、仕事をしている人の場合、仕事の時間を放棄して、試験勉強のための時間をつくるのはまったくナンセンスなことです。そこは、仕事をおろそかにせず、短い時間で知識を身に付けるという工夫が必要です。そういうプロセスを経て、人は成長もするものだと思っています。

もちろん、人によってはその工夫の余地もないくらい現場が忙しい状況に置かれている方もいらっしゃいます。そういう方は、事あるごとに周囲に「○○という資格を取りたい」というメッセージは発信し続けておくことをおススめします。必ず、どこかでそんな思いを見てくれる人はいるものです。

気持ちの25%は「一級建築士を取りたい」

――ところで、新たな資格に挑戦するお考えはありますか?

内山さん 私の気持ちとしては、75%は「今回で終わり」です(笑)。

――なぜですか?

内山さん 一言で言うと、時間がないからです。私は、土木建築という本業のほかに、柑橘類「へべす」生産という農業と、園芸用土の製造販売事業も手掛けています。とくにこのところ、海外展開も含めて、「へべす」の販路拡大の仕事がメチャクチャ忙しくなっているんです。今が勝負ドキなので、試験勉強のために時間を割くことは、非常に難しいです。

――残りの25%はなんですか?

内山さん 建築最高峰の資格である「一級建築士を取りたい」という気持ちです(笑)。土木最高峰の資格である技術士(建設部門&総合技術監理部門)は以前に取っているので、土木と建築の両方で最高峰の資格を取りたい、という思いはあります。技術士と一級建築士両方持っている人は、そうはいないので。

――そういう思いがあるのなら、ぜひチャレンジしていただきたいです(笑)。

内山さん 私もトシをとって記憶力だけでなく手を動かす能力も落ちています。ハードルも高いし、いろいろと経営上やりたいこともありますので、今のところ多分ないだろうと思います。ただ。一級建築士を持っていたら「カッコ良いだろうな」とは思いますので、経営者として、現役引退してボケてなかったら挑戦するかもです(笑)。

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