泉 雄太郎さん 若築建設株式会社 高知港三里地区防波堤(南)等築造工事 現場代理人

泉 雄太郎さん 若築建設株式会社 高知港三里地区防波堤(南)等築造工事 現場代理人

【三重防護事業とはどのような事業なのか?#2】第1ライン・若築建設編

きたるべき南海トラフ巨大地震に伴う津波への備えとして、国土交通省(高知港湾・空港整備事務所)と高知県が進めている三重防護事業。

その現場取材1発目として、第1ラインの防波堤の粘り強い化などの工事を担当する若築建設の現場を取り上げる。工事の概要、施工管理上のポイント、若築建設の仕事の魅力などについて、現場代理人の泉雄太郎さんにお話を聞いてきた。

粘り強い化とは防波堤のかさ上げ、基礎部分の補強

――こちらはどのような現場ですか?

泉さん 国土交通省四国地方整備局発注の三重防護事業の第1ライン防波堤のうち、三里地区防波堤(南)と桂浜防波堤の一部分の粘り強い化を行っている現場です。基本的な工事内容としては、基礎部分に仮置されている腹付すて石を採取、投入し、その上にアスファルトマットと被覆ブロックを設置する、というカタチになります。

――「粘り強い化」は、あまり聞き慣れない言葉なわけですが。

泉さん 南海トラフ地震に伴う津波が発生した場合、既存の防波堤では滑動や転倒の恐れがあることから、防波堤のかさ上げ、基礎部分の補強を行う必要があります。これを粘り強い化と言っています。

――泉さんご自身は、過去に同様の工事の経験はあるのですか?

泉さん 担当者としては2回ほどあります。工事自体は、難易度が高いわけではありません。防波堤の内側に石を入れて、その上にブロックを設置するという、単純な工事なので。基本的には図面通りに施工しています。

――図面は3Dデータですか?

泉さん いえ、普通の2次元データでした。われわれのほうで3Dに起こして、施工計画に活かしたりしました。

すべて海中に設置するので、見た目はほぼ変わらない(笑)

桂浜防波堤での被覆ブロック設置作業(若築建設提供)

――施工のポイントについて、教えていただけますか。

泉さん まず、腹付石について、通常は、石を購入して船で運んでくるのですが、この現場では、別件工事にて、仮置きしてあった石を使いました。その石を採取し、防波堤手前に投入しました。投入した石のならしは、機械でやる方法もあるのですが、この現場では潜水士さんが人力でならしました。

アスファルトマットは、専用の吊り金具を使用し、起重機船にて吊って、設置しました。マットの大きさは、大きいもので5m×15mぐらいあります。設置作業に際しては、こちらも潜水士の水中での誘導で行いました。被覆ブロックは、重さ4~30トンほどのものを設置しました。なお、すべて海中に設置するので、防波堤の見た目はほぼ変わりません(笑)。

邪魔になる「かも」しれないので、作業を止めてくれ

――工程管理上のポイントはなんでしたか?

泉さん 海の仕事なので、海象条件に大きく左右されます。たとえば、台風が来ると、1~2週間作業ができないこともあるのですが、この現場に関しては、2023年度は台風が少なかったこともあり、順調に作業を進めることができました。

――他の船舶の出入りなど、配慮したことはありましたか?

泉さん 近くに高知新港があって、海外客を乗せたクルーズ船が週に1回ほど出入りしています。クルーズ船が入港するときは、港湾を管理する高知県の方から「1時間前には作業を止めてくれ」と要請が入ります。近いとは言え、船の出入りに支障が出ない距離ではあると思うのですが、「入出港に支障となるかもしれない」ということなので、その間は作業を止めています。

あとは、一般船舶が日常的に現場周辺を航行しているので、近くに安全監視船を配備して、作業中の接触などがないようにしています。これはルールとしてやっています。

3Dデータをもとに、ガイダンスに従ってブロックを設置

――ICTでやった作業について、教えてください。

泉さん たとえば、石やブロックを設置する際は、3D目標データをもとに、リアルタイムで水中状況を見ながら、水中マイクでブロック位置などを指示出しして、目標通りの位置に設置しました。船上のクレーンオペレーターさんから水中の作業は見えないので、従来のやり方だと、ブロックを目標位置に移動するのに時間がかかるのですが、ICTを活用することで、この時間が短縮されました。

あとは、起重機船上に積込んだ腹付石の数量を計測する際に、レーザーで点群データを取って、体積を出しました。従来のやり方だと、テープを張って体積を計算して、数字を出すのですが、手間がかかります。レーザーカメラだと、スイッチを押すだけなので、かなりラクでした。

ブロック設置前の3Dデータ(若築建設提供)

ブロック設置後の3Dデータ(若築建設提供)

――いわゆる働き方改革への対応は?

泉さん この現場に関しては、比較的、工程管理が順調で、デスクワーク残業も少なかったので、週休2日の確保を含め、しっかり対応できたと思っています。

若築建設本社には、現場支援室というものがあって、ICT施工などに関するサポート態勢が整っています。また、施工計画などのデータベース共有化にも会社として取り組んでおり、書類作成の効率化を図っているところです。

【PR】高知県内の施工管理の求人一覧(施工管理求人ナビ)

港湾現場のほか、技術支援にも携わる

――話は変わりますが、若築建設に入社した理由はなんでしたか?

泉さん 海洋土木に魅力を感じたというのが理由です。若築建設について詳しく調べないまま、海の大きな仕事ができるという単純な好奇心で入社しました。また、大学では建設工学とは異なる生態工学を学びました。

――どのようなお仕事をしてきましたか?

泉さん 入社して12年目ですが、最初の配属先は松山の浚渫の現場で、その後3年ほど高知や徳島の港湾の現場を転々としました。その後、千葉にある技術研究所というところに1年半ほどいました。現場の技術支援ということで、全国の現場を飛び回りながら、いろいろ修行させてもらいました。また現場に戻って、和歌山の高速道路の橋梁を拡幅する現場に入りました。そこに3年いた後、和歌山の港湾の現場を2カ所経験してから、今の現場に入りました。高速道路以外は、すべて国土交通省の現場です。

――技術研究所でのお仕事について、教えてください。

泉さん たとえば、ブロックを積むためのシステム、ケーソンの傾きを制御するシステム、コンクリートの温度を計測するシステムといった、弊社が独自で開発したシステムの設定や現場のセッティングの支援を行っていました。

――千葉のどちらにあるのですか?

泉さん 千葉の袖ケ浦です。袖ケ浦にいるのと現場にいるのと半々ぐらいでした。住んでいたのは千葉市でしたけど。

――なぜ千葉市に?

泉さん 飲み屋が多いと思ったからです(笑)。

――お酒好きでいらっしゃる?

泉さん ええ、当時は飲みに行っていました(笑)。

福利厚生がしっかりしていて、働きやすい職場環境

――こちらの現場は現場代理人ですが、役職に就いたのはいつからですか?

泉さん 入社7年目に初めて監理技術者になりました。現場代理人も2件経験し、監理技術者もやりました。

――着実にキャリアアップしている感じですか?

泉さん そうだと良いんですけど(笑)。今の現場に来て、原価管理や積算を任されるようになりました。

――若築建設の魅力はなんですか?

泉さん 働きやすい職場環境だと思っています。福利厚生がしっかりしていますし、階層別の社員研修も充実しています。個々の実力に合わせて配属先を決めるなど、社員一人ひとりに寄り添ってくれる会社という印象を持っています。

――マリコンの魅力についてはどうですか?

泉さん 専門性が高く、規模の大きな仕事に携われることに、やりがいを感じています。

――逆に、マリコンのツラさについて、どうお感じになっていますか?

泉さん 朝が早いことです。朝8時に海上で仕事を開始するためには、朝6時ぐらいに起きて、準備する必要があります。

――前の晩にあまり飲めないのも含め、ツラい?

泉さん ええ、深酒はできないですね(笑)。

この記事のコメントを見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
【三重防護事業とはどのような事業なのか?#1】高知港湾監督職員編
若築建設28年目の統括所長が語る「海洋土木」と「飲みニケーション」の難しさ
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
モバイルバージョンを終了