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「3Dの絵は施工図とは程遠い」建築関係者が抱いた、プラント建設工事現場での違和感

数年前、私はプラント建設工事現場で安全専任者として働いていた。建築の設計や施工図作成、現場管理などが本職だったので、プラントの現場に入るのは初めてだった。

その初めてのプラント建設工事で、関わっていて変だなぁ!と感じたことがいくつかあった。その1つが、当たり前のように施工図のごとく作業員に渡される「3Dの絵」だ。

3Dの絵は施工図ではない

最初に断言するが、設備配管用の3Dの絵は施工図ではない。

3Dの絵は、単に配管干渉チェックの図面に過ぎない。にも関わらず、多くの設備関係者が3Dの絵をあたかも施工図のごとく解釈し、その絵を作業員に渡し、3Dの絵だけで現場を進めようとしていたのだ。

中にはまともな考えの人もいて、私と同じように「3Dの絵は施工図とは程遠い」と認識し指摘する人もいたが、指摘を受けた設備関係者は急に饒舌になり、3Dの絵の凄さや綺麗さ、便利さを強調する人もいた。痛いところを突かれた!と思っていたからだろう。

プラントの現場では、3Dの絵は施工図ではない!とハッキリ認識してる人はまだマシで、そんな認識さえ持ってない人が圧倒的に多いように思う。

特に若い設備の現場管理者に多いのだが、それは彼らのせいではなく、そう教えられ、それを信じて行動してるに過ぎず、責任はそう教育した上層部の人間にある。

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施工図として利用すべきではない理由

なぜ3Dの絵をそのまま施工図として利用すべきではないのか?

建築関係者なら議論の余地がないが、設備配管干渉チェック用の3Dの絵から、画面をクリックして出てくる寸法は、現場で施工図として使用できる情報になっていない。

つまり、人間ができる施工精度になっていないということだ。

施工図として使用したいのであれば、せめて、3Dの絵をもとに配管の位置の意図が現場作業員に伝わるように描き直すべきだろう。その手間を加えれば最低限、施工図面として使えないこともないが、そんな手間を加える人は実際はいない。

配管同士が互いに干渉しないかのチェック用として3Dの絵が有効なのは私も認めるが、それを一足飛びに施工図!と言い切るのは、大いに無理があると言わざるを得ない。

綺麗、凄いに騙されるな!3D図面の弊害

最近の3Dの絵の進歩は目を覆いたくなる。設計の質の向上に寄与しているか?と問われたら、それは大いに疑問だ。

様々なソフトやパソコン性能の向上が、間接的に設計の品質を低下させている!とすら感じている。無論、品質を低下させている一番の要因は、設計者の質が低下し、正しい判断ができない人が増えているからで、決して機械やソフトが悪いわけではないのだが。

綺麗な絵や画面上で動かせる動画など、確かに凄いとは思う。しかし、綺麗な絵や動画に圧倒され、惑わされ、本質を見抜けなくなっている設計者が多過ぎる。

さらに罪深いのは、3D図面を施主を説得する材料として使ってしまっていることだ。設計の本質の話をせず、そんな手段で施主を丸め込むのは、設計者の風上にも置けない!と私は思っている。

今の段階では、機械に設計などできるわけがない!と言われれば、まだ多くの人が賛同するだろうが、この先はどうなるか分からない。条件が細分化され、よりきめ細かい配慮が機械ができるようになれば、やがて一定の条件下なら、それなりの設計ができるようになるかもしれない。

だが、人間特有の心の変化などにまで対応できる機械は、まだしばらく現れないだろう。繰り返すが、まだ3Dの絵は施工図とは程遠い。綺麗だとか、凄いという部分だけに騙されてはいけない。

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