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“土木学会デザイン賞2023″が決定!評価軸は「タイミング」「スケール」「インパクト」

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長井 雄一朗
公開日:2024.01.15
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「土木学会デザイン賞2023」の最優秀賞3作品のうちの「石巻市街地における旧北上川の復興かわまちづくり」

「土木学会デザイン賞2023」の最優秀賞3作品のうちの「石巻市街地における旧北上川の復興かわまちづくり」

目次
  1. 土木デザインが地域の暮らしぶりに好影響を与える
  2. 評価軸は「タイミング」「スケール」「インパクト」の3点
  3. 土木デザインは"防災"と"地域の魅力の保持"を両立する

(公財)土木学会(田中茂義会長)は「土木学会デザイン賞2023」の最優秀賞3作品、優秀賞6作品、奨励賞3作品の計12作品の授賞を発表した。

発表の記者会見は、2023年11月28日に開催。景観・デザイン委員会・デザイン賞選考小委員会の柴田久委員長(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)は、「土木は日常の生活を支える存在。その暮らしぶり自体を土木デザインが積極的に変えて、土木構造物が地域に好影響を与えた作品が多く、審査の中でも評価が高かった特徴がある」と総論を述べた。2024年1月20日には土木学会講堂でデザイン賞授賞式を開催、表彰状授与式・受賞者プレゼンテーション・授賞対象作品への講評を行う。

土木学会デザイン賞は、公募対象を公共的な空間や構造物に広く求めるとともに、新たに創出された空間・構造物はもとより、計画・制度の活用や組織の活動などに創意工夫がなされたことで景観の創造や保全が実現した作品に付与される。

2001年度から2022年度までの受賞作品は226件。過去の受賞作品は橋梁が多かったが、近年は河川・ダム、広場・公園の受賞が増加し、地域的には関東・中部・九州の作品が多い。

今回、柴田委員長の記者会見ではプレスの質疑に応えるかたちで、近年の土木デザインを解説した。

土木デザインが地域の暮らしぶりに好影響を与える

柴田委員長は各最優秀賞の評価ついて、次のように解説した。

「石巻市街地における旧北上川の復興かわまちづくり」は、災害復興工事。津波で川が遡上し、大きな被害を受けたが、これまで堤防がなかった川に治水性を高めるために全長約8kmにわたる水辺テラスのある堤防整備を整備。問題は今までの川と街との関係性が堤防により分断される可能性があった。しかし、この課題にチャレンジし、川と街を一体的につなぐ土木デザインを実現したことは、卓越した成果といえる。非常に川に近づきやすい場所に細やかに作られ、堤防の上に商業施設を建設、川に人が自然と近づいていくようなデザインが作られた点に評価が高かった。

「土木学会デザイン賞2023」の最優秀賞3作品のうちの「石巻市街地における旧北上川の復興かわまちづくり」

「土木学会デザイン賞2023」の最優秀賞3作品のうちの「石巻市街地における旧北上川の復興かわまちづくり」

「花畑広場(くまもと街なか広場/花畑公園/辛島公園)」は、従来自動車が走っていた一般道路を広場に変えて、街の中に賑わいのある場所を整備。花畑広場の向こう側には熊本城が見え、城へと繋がる大広間というコンセプトで、歴史に範を取りながら大規模な広場を形成し、熊本市街地の賑わいの拠点として大いに活用された。

最優秀賞の一つの花畑広場(くまもと街なか広場 花畑公園 辛島公園)

最優秀賞の一つの花畑広場(くまもと街なか広場 花畑公園 辛島公園)

「さいき城山桜ホール・大手前地区」は、大分県の佐伯市で最も賑わっていたが、当時の百貨店が撤退したことにより、空き地になった。そこで佐伯市役所が再開発の計画が検討したが、住民の反対によりいったんは白紙になった場所。そこで市役所の信頼を取り戻すために合意形成のプロセスを踏みながら、市民の憩いになる多目的のホールなどを建設し、周辺の街と一体的につくりあげながら、バスのルートも変更し人の動きの流れを変えて、商店街を周遊してもらう工夫をする波及効果をもたらし、市民参加型のインフラであることも大きな成果であった。

「さいき城山桜ホール・大手前地区」は市民との合意形成により生まれた土木デザイン

「さいき城山桜ホール・大手前地区」は市民との合意形成により生まれた土木デザイン

評価軸は「タイミング」「スケール」「インパクト」の3点

――2022年の土木デザイン賞の評価軸は、土木デザインの「創造性」「一体性」、積み重ねられた「時間への敬意」の3点が評価軸でした。今年度はどのような評価軸でしたか?

柴田久氏(以下、柴田委員長) 評価軸は、土木デザインの利用価値や公共性の「タイミング」にも関わってきます。土木インフラに周囲の状況に変化があると、土木デザインはよりよく価値が向上するなど、審査の「タイミング」が大きな意味を持ちました。次に「スケール」。土木デザインの範囲をもう少し広げていけばより良いデザインになった、ここに絞ってデザインを投入し、細かい点に土木デザインが入り込むと、もっと良いデザインになったなど、デザインにおける「スケール」も大きな視点でした。3点目は土木デザインが供用を開始したことにより、当該地域にどのような「インパクト」を与えたか。その「インパクト」の大きさや質などが今回の審査の中では大きく議論された点でした。

解説する柴田久委員長

解説する柴田久委員長

――最優秀賞の「さいき城山桜ホール・大手前地区」では、市民との合意形成を丁寧に図ったケースでした。インフラとしての土木は言うまでもなく、デザインとしての土木も官民連携が強化されていくと思われます。

柴田委員長 これまでの土木は公共が公のお金を使い工事を行い、維持管理も公共が担ってきました。一方、今回も官民連携による応募作品は多く、「PPP」(パブリック・プライベート・パートナーシップ・公民連携)やPark-PFI(公園の整備を行う民間の事業者を公募し選定する制度)などの充実を感じています。

ここからは私見ですが、民間主導で民間の力で人々の暮らしを営むインフラが形成され、維持管理されるような事例は今後ともさらに増加していくものと思われます。ただし、民間企業は儲からなければ動けない事情もあります。今、建設業は人手不足や資材高騰などの課題を抱えており、タイミングの波という観点からすると、民間主導の建設事業に非常に大きな影響を与えています。民による整備は定着しつつも、公の役割としてインフラ整備は今後とも残っていくでしょうし、非常に重要だと個人的には考えています。

土木デザインのトレンドはどう変わった? 土木学会 デザイン賞に17作品が選ばれる

土木デザインは”防災”と”地域の魅力の保持”を両立する

――「石巻市街地における旧北上川の復興かわまちづくり」に代表されるように、震災復興工事の事例も選ばれました。これだけの災害列島ですから、防災とデザインのかかわりも深まっていくと考えます。

柴田委員長 毎年のように、想定外と言われる台風などが襲来していますが、災害対策は緊急性が高く、急いで工事を完了させる宿命があります。国土強靭化計画の中でも、その地域の住民が住み続けたいと思ってもらえるような災害対策が今後とも重要だとした改定がなされています。特に地方都市で災害が発生すると、その地方が衰退する可能性が大きい。また、災害を機会に移住が促されることも考えられ、防災だけではなく地域の魅力保持を両立していくためには、災害の多い日本にとってこの土木デザインの役割が担われていると思います。

災害復旧工事は治水安全性や機能性を高める役割を果たします。その上で居住している人々の街と水辺をどうつなげていくか、地域の街づくりとの関係性で治水対策の構造物の評価がなされており、従来の河川整備に範を取り、レベルも向上していると感じています。

――インフラツーリズムが盛んになっている昨今、土木デザインも観光資源になっていく可能性があると思います。

柴田委員長 土木学会デザイン賞の作品を異業種・異業界にアピールする必要性は感じており、今後とも努力していきます。今、インフラツーリズムに代表されるように土木構造物が観光資源となる兆しもあります。元々、土木構造物は人々の生活をつくる基盤であり、下支えしているものですから、観光資源になりえなくとも、きっかけになる役割を果たしていると思います。

受賞作品

【最優秀賞】

  • さいき城山桜ホール・大手前地区=広場、バスターミナル、駐車場、文化施設、情報発信施設(大分県佐伯市)
  • 花畑広場(くまもと街なか広場/花畑公園/辛島公園)=広場、公園および建築(熊本県熊本市)
  • 石巻市街地における旧北上川の復興かわまちづくり=水辺テラス(親水施設・散策路等)、賑わい交流拠点(宮城県石巻市)

【優秀賞】

  • 上有住地区公民館=公民館・図書館(岩手県気仙郡住田町)
  • カダルテラス金田一=複合施設(ホテル、公衆浴場)、都市公園(岩⼿県二戸市)
  • OMO7大阪 by 星野リゾート=ホテル(大阪府大阪市)
  • 吉野川サンライズ大橋=橋梁(徳島県徳島市)
  • サンキタ通り・広場/阪急神戸三宮駅周辺地区=街路、駅前広場、駅施設、商業施設(兵庫県神戸市)
  • 「史跡」及び「名勝」嵐山における左岸溢水対策(洪水時の溢水防止(陸閘整備)(京都府京都市)

【奨励賞】

  • 竹芝デッキ 港歩行者専用道第8号線=歩行者専用道(東京都港区)
  • 長久手市公園西駅1号公園=街区公園(愛知県長久手市)
  • たのしむカワベ -広瀬川河畔緑地整備事業「文学館エリア」-=河畔空間、都市のオープンスペース(群馬県前橋市)
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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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