SNSをいじる人

「せ・こ・う・の・か・み・さ・ま」で覚えよう。工事現場が発信するSNSのリスク

SNSに「怪しい会社」と書いて賠償命令

リフォーム会社X社がブログに、「怪しい会社3選」というタイトルの記事を投稿しました。執筆者はリフォーム会社X社の代表者でした。

名指しで非難された3社のうちの1社である建物損害調査会社Y社は、弁護士を介して抗議しました。リフォーム会社X社は8カ月後にブログ記事「怪しい会社3選」を削除しましたが、正式な謝罪には応じませんでした。

建物損害調査会社Y社は、損害賠償を求めてリフォーム会社X社を東京地方裁判所に提訴しました。不正競争防止法2条1項21号では、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する」行為が対象となります。何のいわれもない非難を一方的に受けたという場合も、不競法が争点になります。損害賠償請求額は約1,111万円でした。

判決は、提訴した建物損害調査会社Y社の勝訴でした。判決文では「『怪しい会社3選』の記事には建物損害調査会社Y社の社名を明記して、ウェブサイトのURLも付け加えているから『怪しい会社』として特定している」と認定しています。

不競法5条・損害賠償額の計算方法

建物損害調査会社Y社は勝訴しました。ところが、約1,111万円という損害賠償請求額は55万円と大幅に減額されました。理由は判示されていませんでした。

損害賠償請求額の計算式として不競法5条では損害額の推定方法を規定しています。Y社はその一つとして被告X社側の利益を原告Y社の損害と見立てて推定する方法で損害額を計算しました。

  • X社の過去3年間(36カ月)の売上高は約2億円
  • リフォーム工事、損害調査の粗利益率は約25%
  • 記事が削除されるまでの掲載期間は8カ月

判決は、粗利益25%のなかにはブログの記事とは無関係のものもあるとして請求額約1,111万円の5%である55万円としました。理由は不明です。X社の売上におけるY社との競合事業の割合が5%だったという判断かも知れません。

工事現場が発信するSNSのリスク

仮囲いの中は一般人立入禁止で謎にみちていますから、中の人はSNSで営業や建設業の魅力発信に役立てることができるでしょう。一方で、情報漏えいなどのリスクもあります。

SNSのアカウントは、個人での取得を前提としており、普段の会話のように友人や知人に楽しんでもらおうと書き込んでいるうちに、まったく知らない第三者に機密情報を漏らしてしまうこともあり得ます。また、現場の写真に機密情報や従業員のプライバシーが含まれている可能性があります。

そこで、SNSのリスクをリストアップしました。覚えやすいように「せこうのかみさま」に合わせてみました。そのため、少々無理があるかも知れません。あたたかい目でご覧いただければ幸いです。

:設計図や施工図は著作権で保護されています。無断公開は著作権侵害になります。
:個人の携帯は使わない。写真撮影用の携帯やカメラを会社で用意するのが妥当です。
:うわさ話や、現場で知り得たお客様・従業員の情報はSNSで公開しない。
:飲み会にパソコンを持ち込まない。忘年会シーズンは、パソコン紛失シーズンです。
:顔画像はご本人の許可を得てから投稿。許可がない場合はモザイクで隠しましょう。
:未公開プロジェクトは秘匿、クライアントとの秘密保持契約は遵守です。
:サイバー攻撃は捨てられたゴミ、投稿された画像を突破口にしてやってきます。
:まさかの盗難に備えてデバイスにはパスワードを設定。

建設現場でのスマートデバイス利用の禁止事項

(一社)日本建設業連合会では、「建設現場におけるスマートデバイス利用に関するセキュリティガイドライン」を発行しています。この「ガイドライン」には、スマホやパソコンなどの通信機器からの情報漏えいを防ぐための考え方や取り組み例が細かく記載されています。自社のルール策定のブループリントになり得ると思います。

ここでは【禁止事項】という項目を紹介させていただきます。

【禁止事項】

① 建設現場で撮影した写真や知りえた情報をSNS等(ツイッターや LINE、Facebook 等)に投稿することを禁止する。

② スマートデバイスの電話以外の機能(カメラ機能、メール機能、インターネット閲覧機能等)を業務で利用したことによって、スマートデバイス内に保存された工事情報(例えば写真データ)を業務が完了した後も保存し続けることを禁止する。
業務完了後はスマートデバイス内に保存された工事情報を速やかに削除するよう指導すること。

(工事情報とは)
・図面、工程表、写真、打合せ記録
・発注者、近隣、工事関係者の個人情報(個人の名前が記載された書類等)
・建物の内部や設備の状況(写真等)
・会社の技術やノウハウ(標準仕様等)、管理情報
・その他、施主等から該当現場固有で指定された情報

※参考:建設現場におけるスマートデバイス利用に関するセキュリティガイドライン / (一社)日本建設業連合会

SNSは仮囲いの中の魅力を知ってもらうツールにもなる

能登半島地震で、被災後の道路の寸断解消に向けた道路啓開(けいかい)の活動状況について地元の建設会社がX(旧ツイッター)で発信を始めたところ、一般の方から感謝や激励のコメントが数多く寄せられたそうです。道路啓開とは、災害によって損傷した道路を、緊急車両が通行できるように切り開く作業です。人命救助や緊急物資の輸送などの救援ルートを確保するために行われます。

SNSでの発信による「道路が通れるようになった」という情報はとても助かったようです。画像もアップされましたので、自分の車で通れる状態かどうかも判断できたようです。しかし、「助かった」だけではなく、サブ情報ともいえる「道路啓開に参加した企業一覧」という投稿に1万件を超える「いいね」が寄せられたそうです。これは、参加企業に対する心からの感謝の表れだと思います。

SNSは選挙でも盛り上がりを見せていました。「リスク」や「禁止」もありますが、SNSはこれからも、仮囲いの中の魅力を知ってもらうツールとして存在感を発揮すると思います。

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関西をベースに広告コピー、取材記事、農家レポートなどさまざまな原稿を執筆しています。ギターはスケールに挑戦中です。
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