現場責任者のヘッド2次下請のヘッドロックに、3次下請はバックドロップで応戦!正当防衛は成立するのか?

2次下請のヘッドロックに、3次下請はバックドロップで応戦!正当防衛は成立するのか?

正当防衛なら責任を負わない

民法第720条は、正当防衛について定めています。

■第720条

1.他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。

XとY2がケンカになり、Xが負傷して、Y2に正当防衛が認められるかどうかが争われた裁判がありました。現場は清掃工場で、空調・給排水設備設置工事をA社とB社がJVとして請負い、C社(1次下請)、D社(2次下請)、Y1社(3次下請)が関係していました。

正当防衛が成立するかどうかの詳細を『判例タイムズNo.1027』から引用します。

「ぶっ飛ばしてやろうか!」2次下請と3次下請がヒートアップ

原告Xは2次下請D社の社員で現場責任者でした。身長164.5㎝、体重55kg。現場責任者にも関わらず朝礼には出席せず、打ち合わせにもろくに参加せず、仕事に関する初歩的なことさえ理解していなかったため、現場では”お荷物的存在”とされ、仕事上の指示や伝達はXを省略して一次下請C社の課長から直接、被告Y2へ行われていました。

一方、被告Y2は3次下請Y1社の社員。身長171㎝、体重78kg、合気道を8か月間経験していました。Xが仕事を理解していなかったのでY2が残業をしてスケジュールを守っていました。

事件当日、XはC社の課長から「現場監督をきちんとしていない」と叱責され、うっ憤が溜まっていました。同日の午前中、Y2は、C社の課長から指示された材料を揃えて、午後に現場に行きました。

そこでXはY2に対して「今頃のこのこ来やがって」と文句を付けました。Y2は「材料を用意していたんだ。おまえは全然仕事に来ていないのに文句を言うなよ」と言って、事務所に戻りました。

するとXはY2を追って事務所に入り、「いまの態度は何だ。おまえ、自分の立場を分かっているのか」「おまえは下請だろうが。おまえを首にしてもいいんだぞ」と脅迫めいた言葉を投げつけ、二人は口論になりました。

Y2「何だよ、この野郎!」

X「ふざけんじゃないぞ!やるのか、おまえ。ぶっ飛ばしてやろうか!」

Y2「やれるものならやってみろ!」

Y2はXの面前数センチのところまで顔を近づけました。するとXはY2に頭突きをし、うずくまったY2を蹴り上げ、手拳で殴打するなどした上、中腰のY2の首を右腕で締め付け(いわゆるヘッドロック)、Y2の頭部を約1メートル先のコンクリート柱にぶつけようとしました。

Y2はXの腰に手を回し、足を踏ん張ってXの動きを止めましたが、その直後、Xを斜め後ろに投げるように一緒に倒れ込みました(いわゆるバックドロップ)。

これによりXは脳挫傷等の重傷を負い、Y2、Y1に1,963万円を請求する損害賠償訴訟を提起しました。第一審はXの請求を認め、Y1、Y2らが控訴しました。控訴審において、Y2の行動は正当防衛が成立すると主張しました。なお、Xは請求額を5,664万円に拡張しています。

バックドロップは「正当防衛」か?

正当防衛が成立してY1、Y2の過失割合がゼロであれば支払う必要がないことになります。

Y1、Y2は正当防衛が成立するための4つの要件を主張しました。

  • 急迫不正の侵害:Y2はいままさに頭部を柱にぶつけられそうになっていた。
  • 防衛の意思:頭部をぶつけられると負傷するので防衛したい。
  • 防衛行為の必要性・相当性:防衛のためにはバックドロップで対抗するしかない。
  • 防衛の限度内:バックドロップしかないので防衛の限度内である。

裁判所は傷害事件が発生した原因は、XのY2に対する執拗かつ一方的な暴行にあったことはあきらかであるが、Y2にも過失があったとしました。

その理由として、

  • Y2は「やれるものならやってみろ」と言ってXの面前数センチのところまで顔を近づけて挑発した。
  • Y2はXの腰に手を回し、足を踏ん張って『Xの動きを止めた』。その時点で防衛できていた。

を挙げています。

Xを斜め後ろに投げるように一緒に倒れ込んだ(いわゆるバックドロップ)ことについては、そこまでする必要はなく、防衛の程度を超えた過剰防衛行為と言わなければならないと判断しました。

本件傷害事件は正当防衛ではなく過剰防衛であり、過失割合はX85%、Y2、Y1は15%として549万円余の支払いを命じました。

これにより本件傷害事件は正当防衛ではなく過剰防衛であり、過失割合はX85%、Y2・Y1は15%として549万円余の支払いを命じました。

■裁判所が認定したXの損害

  1. 治療費:237,935円
  2. 入院雑費:34,800円
  3. 通院交通費:43,520円
  4. 休業損害:2,090,236円
  5. 逸失利益:25,563,737円(後遺障害による意欲低下・感情鈍麻による労働能力喪失)
  6. 慰謝料:7,300,000円
  7. 弁護士費用:340,000円
  8. その他:1,000,000円
    合計:36,610,228円

36,610,228円×15%=5,491,534円(平成10年7月17日 大阪地裁)

Y2に正当防衛は認められませんでした。しかし、ヘッドロックにバックドロップで対抗して、相手の動きを止めた時点で自分も動きを止めることは、プロの格闘家でないと無理ではないでしょうか?

もちろん、ケンカをしないに越したことはないのですが……。怒りの感情をコントロールし、適切に対処するための心理的トレーニングとしてアンガーマネジメントという方法があるそうです。

アンガーマネジメントの6秒ルール

アンガーマネジメントとは、「怒らない」のではなく「上手に怒る」ことを目的としているそうです。

アンガーマネジメントの方法の一つとして、「怒りは6秒経てばピークを過ぎるので、6秒我慢すればよい」という「6秒ルール」があるそうです。日本アンガーマネジメント協会代表理事や脳科学者が推奨しています。他にも「深呼吸」「思考の転換」などの技術があるそうです。Y2に即して言えば、「首にしてもいいんだぞ」と言われた後で「何だよ、この野郎」と言う前に6秒待てばよかったということになると思います。

YouTubeにアンガーマネジメントを紹介する動画や漫才がありますのでちょっと研究したいと思います。しかし、漫才コンビ・ラランドのサーヤさんが言っていた「6秒耐えられたら、怒りじゃないジャン」という言葉にもちょっと頷いてしまいました。

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関西をベースに広告コピー、取材記事、農家レポートなどさまざまな原稿を執筆しています。ギターはスケールに挑戦中です。
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