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現場を変えていく:「書類の簡素化」と「適切工期の確保」は可能か? 

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三ツ橋 象平
公開日:2017.07.03
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現場を変えていく:「書類の簡素化」と「適切工期の確保」は可能か? 
目次
  1. 「書類の簡素化」と「適正工期の確保」こそ、建設業界の根本的課題
  2. そもそも書類である必要はない
  3. 書類がなくなれば、適正工期も達成できる
  4. 国も考えを改めなければならない
  5. IT化のポイントは漏れなく、ダブりなく、わかりやすく

「書類の簡素化」と「適正工期の確保」こそ、建設業界の根本的課題

国土交通省は建設現場の環境改善に躍起だ。i-Constructionを始め、施工の生産性や無人化施工にも力を入れている。その背景にあるのは、施工管理技士や職人など建設業従事者の減少だ。

昔から建設現場といえば暗い、汚い、かっこ悪いの3Kと言われていたが、それでも人はなんとか集められていた。しかし昨今、建設業従事者の数は大幅に減少しており、さらに従事者の高齢化も進んでいる。若手の入職者を増やすためにも、建設現場の環境改善は国の基礎を担う国交省にとって大問題なのだ。

そこで掲げられたのが、表題の2つの課題である。「書類の簡素化」と「適正工期の確保」。これらの質問は簡単そうに見えて、なかなか奥が深い。書類の簡素化と言っても、書類に書かれている内容を減らすことはできない。適正工期にしても、何をもってして適正と呼ぶのかが問題になる。

しかし、考え方を変えれば、これらの問題を根本から解決できるかもしれない。これから話す内容は、「こうすれば」可能であるのではないかという私の仮説である。

そもそも書類である必要はない

書類の簡素化に対する回答だが、そもそも書類でなければならないのだろうか。

国土交通省が求める「営繕工事における工事関係図書」には、91種類もの書類がある。その中には図面や写真といったものも含まれるが、それ以外の書類の様式はエクセルファイルとして公開されている。

書類はエクセルで作るというのが当たり前だと思っている人も多いかもしれないが、そもそもエクセルは表計算ソフトである。A4の書類を作るツールではない。ただ写真を貼り付けたり、入力箇所がセルで明確に指定できるので便利というだけである。 現状、国土交通省の共通仕様書には、これらを図書、つまり書類で出しなさいという指定があるため、書類を作成するしかないのだが、書類を作成するのではなく、データを入力して提出する方法が確立すれば、わざわざ書類を作る必要性がなくなるのではないだろうか。

例えば「施工体系図」という書類がある。これは元請けと協力会社の関係を体系化して図として表したものだ。これと似たような書類に「下請業者編成表」というものがある。1次請の協力会社に下請会社がいる場合に作成するものだ。

「施工体系図」は1次請負各社の「下請業者編成表」を元に元請が作成する。それぞれの書類は皆エクセルで手打ちしているから元請と1次請で同じ手間が発生していることになる。

もし書類の中身をデータ化して納品できたら、このような二度手間をなくすことができる。企業の名前と直接契約している企業、その企業に属する従業員や経歴をデータベース化して紐づけることで施工体系図も下請業者編成表も作成する必要がなくなる。

入力は各社の担当者や従業員個人が行えるようにすれば、誰かひとりに過度な負担がかかることもなくなる。現場監督が作業終了後にデスクワークする負担は大幅に軽減されるだろう。

書類がなくなれば、適正工期も達成できる

デスクワークの作業が軽減されたら、その分の時間をどのように活用するべきか?

私の答えは「早く帰る」だ。日本では残業を美徳とする風潮があるが、残業しているから工期が守れないということに気付いている人が少な過ぎる。

残業というのはバッファー(緩衝材)だ。必要に迫られた時、問題が発生した時、余力を使って全体に影響を及ぼさないようにするのがバッファーの役目だ。 なのに今の建設現場では残業が常態化している。ということは、一度問題が起きれば工程全体に影響を及ぼしてしまう。現実にはそうならないよう、さらなる残業で埋め合わせをしようとする。しかしそれでは人は消耗してしまう一方だ。

熟練の技術者が減っていることが問題化されているが、なぜ減ってしまったのだろうか。それは体力が必要とされる仕事にもかかわらず、長時間にわたって酷使され続けた結果、高齢化とともにリタイアするものが相次いでいるからだ。 人間も機械も過度に使えば故障する。特に人間は使用時間だけでなく、やすらぎとゆとりが心になければ最大限の力を発揮できない生き物である。

話が逸れたが、書類にかかる時間をなくして余暇を作れば、今の状態でも工期を適正にすることは可能なのだ。結論を言えば、書類にこだわらなければ、適正工期は達成できる。

国も考えを改めなければならない

ただ問題は国の共通仕様書では図書で出せと指定していることである。この文言をなくさなければ、今までの仮説は成り立たない。なぜ国は「図書」という制限を設けているのだろうか。それは管理を今まで図書でしかやってこなかったからである。

だが、国だって本当は図書で出されても困るのだ。そこで今は電子納品しなさいと言っているが、電子納品も内実はA4の書類がPDFになっただけだ。実際に点検や管理に必要な情報を探し出すのにPDFから探すのは骨の折れる作業に違いない。ただ紙の保管スペースがなくなったというだけである。

IT化のポイントは漏れなく、ダブりなく、わかりやすく

情報化施工だ、AIだ、IoTだと最近よく言われるが、建設現場にはそれ以前にやるべきことがある。まず紙のデジタル化だ。つまり中身をデータとして取り扱うことができるようにすることだ。これがなければ、AIだろうがなんだろうが現場を変えることは不可能だ。

データの扱いの基本は漏れなく、ダブりなくである。これを専門用語でMECE(ミッシーと呼ぶ。Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive の略)と呼ぶ。

同じデータをいろんな人が何回も入力するような仕組みは無駄なだけだ。ただし必要なデータは確実に手に入れなければならない。そして集めたデータはわかりやすい形で表現されなければならない。データの羅列を見ても意味がわからないので、表現の仕方を変えて、意味をわかりやすく表現する。体系図なのが3Dモデルなのかは一概に言えないが、施主、元請、協力会社、作業員で必要な見え方は変わってくる。

このような要件を満たすような仕組みを考えれば、表題の2つの問題を根本から解決できる。それには国、民間の協力が必要だ。もし興味があり、本当に解決したいと考える企業がいれば私に連絡してほしいと思う。何か力になれることがあるはずだ。

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この記事を書いた人

三ツ橋 象平
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1987年生まれ。青山学院大学大学院理工学研究科修士。株式会社大林組に入社。設計・施工に従事後、システムの企画・開発を行う。その後、オートデスク株式会社に入社。テクニカルスペシャリストとして従事。現在は外資系コンサルティングファームにて建設業、製造業のコンサルティングに従事。
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