横浜市に第1棟目として完成した防災配慮型賃貸住宅「ぼ・く・ラボ賃貸 FEEL(フィール)」

横浜市に第1棟目として完成した防災配慮型賃貸住宅「ぼ・く・ラボ賃貸 FEEL(フィール)」

賃貸住宅を「地域の防災拠点」へ。大東建託が本気で進める「防災town」構想とフェーズフリー戦略

賃貸住宅管理戸数トップシェアを誇る大東建託株式会社(竹内啓社長)が、自社の管理物件や営業拠点を「地域の防災インフラ」として機能させる大胆な取組みを加速させている。

同社が推進する防災プロジェクト「ぼ・く・ラボ」の一環として、このほど神奈川県横浜市にカップル・ファミリー向け防災配慮型賃貸住宅「ぼ・く・ラボ賃貸 FEEL(フィール)」の第1号棟が完成。3月23日、報道陣や関係者に向けた現地見学会が開催された。

「FEEL」は、水害対策特化型の「niimo(ニーモ)」、地域防災拠点型の「yell(エール)」、都市部アウトドア志向の「DOMO(ドーモ)」に続く、シリーズ第4弾となる集合住宅商品。最大の特徴は、日常の暮らしがそのまま非常時の備えとなる「フェーズフリー」の概念を軸に、「在宅避難」を前提とした設計が施されている点だ。

耐震等級3相当の堅牢性をベースに、平時から自然に備蓄ができるゆとりある収納スペースを配置。オプションで太陽光パネルや蓄電池を設置すれば、停電下でもスマートフォンやラジオの充電が可能な非常用USBコンセントを各住戸で利用できるなど、実務的な工夫が随所に盛り込まれている。

現場見学会では、グループ4社(⼤東建託、⼤東建託パートナーズ、ガスパル、ケアパートナー)が担う災害⽀援拠点を連携・高度化させ、地域を⾯で⽀える⾼密度防災エリア「防災town(タウン)」を、2030年度までに全国10都市へ拡⼤する方針も表明。管理物件や拠点を軸に、⼊居者のみならず地域住⺠も広く⽀援する「地域の防災インフラ」として、ソフト・ハード両⾯のネットワーク構築を急ぐ。

見学会には、大東建託の総務部防災管理課長である仲宗根昌則氏、商品開発部商品開発課長の櫻井正雄氏、そして同課チーフの泉川仁史氏が登壇。同社が掲げる防災ビジョンから、地域を面で支える「防災town(タウン)」構想、そして現場の知見が詰まった「FEEL」の技術詳細まで、多角的な解説が行われた。

グループ4社の専門性を結集。地域社会を面で支える「防災town」構想

左から、大東建託商品開発部商品開発課の櫻井正雄課長、同課の泉川仁史チーフ、総務部 防災管理課の仲宗根昌則課長

まず仲宗根課長から語られたのは、グループ全体の指針となる「防災ビジョン2030」だ。これは単なる一企業の災害対応を超え、賃貸住宅管理戸数トップシェアの強みを活かして「社会の防災インフラ」としての役割を担うという意欲的な構想である。

最大の特徴は、自社物件に留まらず、「地域社会全体の防災力向上」を標榜し、2030年に向けた「防災の日常化」を目指す点にある。従来、大東建託グループ各社が個別に行っていた防災活動を一元化し、「有事と平時」「自助と共助」を掛け合わせた3つの柱(①事業継続による生活インフラ維持と、被災地の早期復興牽引、②全国の事務所・管理物件を拠点とした、地域住民への災害時支援、③高齢化社会を見据えた、次世代を担う地域防災リーダーの育成支援)を設定。理念である『地域の“もしも”に寄り添う』を具現化し、総合賃貸業を核とした地域防災活動を通じて、一人ひとりの迅速な復興と地域全体の再生への寄与を明確にした。

この理念を実現する要となるのが、独自の「防災town」構想だ。役割の異なるグループ4社(大東建託、大東建託パートナーズ、ガスパル、ケアパートナー)の拠点を連携させ、地域を「面」で支える高密度な支援ネットワークを構築するというものだ。

具体的には、発災直後にケアパートナーが介護事業所の特性を活かして帰宅困難者へ水やトイレを提供し、大東建託は支店を拠点にHV車等による給電や備蓄物資を自治体へ供給する。避難フェーズに入れば、ガスパルが災害対応ユニットを活用して地域住民へ温かい食事と電力を無償提供。そして復旧期には、大東建託パートナーズが営業所や空室を活用した倉庫を拠点にエアコンや高圧洗浄機をあらかじめ配備し、被災後の生活環境を迅速に回復させる(管理物件が対象)。

現在、全国213拠点に広がる災害支援拠点は、2030年度までに約2割増となる250拠点へと拡充される予定だ。すでに兵庫県姫路市など3地域でこの「面」の支援体制が稼働しており、2026年度中には第4弾として愛知県名古屋市での展開も控えている。質疑において仲宗根氏は「今後は災害リスクの高い地点や主要都市への設置を強めていきたい」と、さらなる拡大への展望を語った。

こうした地域支援の基盤となるのが、建物そのものの「守る力」だ。東日本大震災を契機に、安否・被害状況の早期確認や復興支援を最優先とする迅速な初動対応を確立してきた同社だが、そのハード面の強さは、記憶に新しい2024年1月の能登半島地震でも実証されている。震度7の激震に見舞われた石川県内において、グループ管理物件の倒壊は0件を記録(石川県内管理建物2,204棟)。隣家倒壊に巻き込まれた損傷被害が重大被害につながった1棟を除き、その堅牢性を実証した。

奥が大東建託の管理物件(現在は非管理)。両隣の建物が倒れ込んだものの、倒壊は免れた。

仲宗根氏は、公的避難所が抱える収容能力の不足やプライバシーの問題といった限界を指摘した上で、こうした堅牢な建物を活かした「在宅避難」の重要性を提言。日常と非常時の壁を取り払う「フェーズフリー」の合理性を強調し、賃貸住宅を単なる住まいから「街を守るインフラ」へと進化させる姿勢を鮮明にした。


日常のゆとりが非常時の備えに。フェーズフリー住宅「FEEL」1号棟が竣工

後半では、櫻井商品開発課長から防災配慮型住宅シリーズの販売戦略が解説された。

在宅避難を望む子育て世帯やペット同居層をメインターゲットに据えた「FEEL」は、今回竣工した横浜市の1号棟を含め、すでに18棟の契約実績を持つ。「販売エリアは北海道・北信・東北の積雪エリアと、沖縄を除く全国。ゆくゆくは年間30棟の契約が目標」と櫻井氏は話す。

「FEEL」は、「日常を豊かに、非常時を安全に」というコンセプトのもと、高い基本性能を実装している。耐震等級3相当の耐震性能の確保や長期優良住宅認定基準への対応に加え、ZEHオリエンテッドを標準装備。さらに、在宅避難を支える強力なオプションとして、蓄電池搭載型「DK-ZEHα」を用意し、太陽光(10kw~)と蓄電池(5kw)の連携によって非常時の自立性能を大幅に向上させている。

なお、2025年9月に発表された一般社団法人フェーズフリー協会主催の「フェーズフリーアワード2025」において「オーディエンス賞」を受賞している。一般的な2階建て賃貸住宅と比較し、家電を充電しながら収納できるコンセント付収納や、まとめ買いに対応する大容量パントリー、ほこりを持ち込まない広い玄関土間など、日常の質を高める機能が「非常時の有効性」に直結している点が高く評価された。高い基本性能を普及価格帯で実現した「汎用性」も評価の決め手となっている。

見学案内を担当した泉川チーフは、現場目線の細やかな工夫についてこう明かした。

「蓄電池は入居者の平時の利便性を考慮しつつも、非常時を見据えて残量を『最低30%』残す設定にしました。この残量でも、USB給電であれば約11時間の使用が可能です。また、集合住宅という特性上、電池の早期枯渇やブレーカー遮断のリスクを防ぐため、あえて出力容量を抑えたUSBコンセントを各住戸に選定しています」

蓄電池

今回完成した第1号棟の物件概要は、木造2×4の2階建て、間取りは1LDK・2LDK(専有面積43.23m2~57.77m2)。賃料は12万3,500円~14万7,000円の設定だ。

2025年10月の着工当初から問い合わせが相次ぎ、2026年3月の竣工時にはすでに満室稼働を達成。2025年10月の着工から、2026年3月の竣工という工程を完遂した。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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