流域全体での治水へパラダイムシフト
近年、東北地方でも風水害が頻発化・激甚化している。特に「令和元年東日本台風」では阿武隈川や吉田川で大洪水をもたらし、気候変動による厳しい現状を改めて突きつけられている。
令和元年東日本台風の教訓をもとに、2020年からは大きな河川はもちろん、小さな支流も含む「流域全体」で国・自治体・企業・住民などあらゆる関係者が協働して治水対策に取り組む「流域治水」への転換をはかったことは河川行政にとって大きなトピックスと言える。
2021年4月28日には特定都市河川浸水被害対策法など9本の法律を束ねて改正する「流域治水関連法」が成立し、「流域治水」の取組みを全国で展開できるようになった。
国土交通省は、2020年7月にとりまとめた「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」を踏まえ、2021年3月には全国109の一級水系全てにおいて「流域治水プロジェクト」を策定・公表している。「流域治水」の現場レベルの取り組みが本格化するなか、国交省東北地方整備局河川部の栗原太郎河川計画課長に「流域治水」の意義等について話を聞いた。
東北地方を相次いで襲う風水害の実態
――東北地方を襲った風水害に対する考えについて
栗原太郎氏(以下、栗原) 平成27年9月関東・東北豪雨では吉田川、2017年7月の洪水では雄物川、令和元年東日本台風では阿武隈川と吉田川、そして、2020年7月豪雨では最上川と、近年、東北地方でも毎年のように大規模な洪水・氾濫が発生しています。
雄物川では、2017年7月の洪水以降の10か月の間に3回氾濫が発生しましたし、全国109水系のうち、6位の延長を持つ阿武隈川や7位の最上川といった全国屈指の大河川で、ごく一部の区間ではなく、数十kmから100kmの単位で、連続的に既往最高水位を観測するという規模の洪水が発生し大きな被害が出ている状況から、東北地方の河川が気候変動の影響による厳しい現実を突きつけられていると感じています。
東北地方においては、気候変動は将来のことではなく、現実に起こっていることとして対応しなくてはならない時に来ています。経験したことがない豪雨が毎年のように、しかもかなり広域的に降り、それが水害や土砂災害を引き起こす要因となっています。
今年の雨の時期に備え、昨年・一昨年のような大洪水が今年も必ず来るという前提でできる準備をしようと、管内の担当者会議で話をしたところです。
人命はもちろんのこと、社会の生活基盤は治水があってこそです。地域全体の治水の安全度を高めることが地域の発展につながることを改めて肝に銘じ、整備局一丸となって、これからの気候変動の時代に立ち向かっていかなくてはなりません。