職人とトラブルになる新人現場監督
新人の現場監督たちも、5月も半ばとなれば、そろそろ現場に慣れてきた頃だろう。私が新入社員として現場監督になったのも4月なので、現場で初々しい監督をみると、とても懐かしい気持ちになる。
――そんな初々しい新人監督たちが、現場で一番最初にぶつかる問題は、やはり職人とのトラブルである。
20代そこそこの若造が、年配の職人にあれこれと指示を出すのだから、内心ではビビるのは当然だし、職人側も若造の指示には、どうしても不安や不満を抱くものだ。
しかし、現場監督と職人がぶつかり合うのは、いわば「動物の摂理」。そう諦めるしかない。その上で、トラブルの原因を理解しておけば、余計ないさかいは事前に回避できるというものだ。
職人とトラブルになりやすい理由BEST3を紹介する。
時間にルーズな現場監督になるな!
まず、前日が飲み会で寝坊してしまった、朝が元々弱くて寝坊しやすいなど、朝に限らず時間にルーズな現場監督は、とにかくトラブルを招きやすい。
「現場は職人さえいれば回るだろう」などという、考えは大きな間違いだ。職人は現場監督の指示で動いているのであって、頭で作業内容を理解していたとしても、朝の作業確認を済ませてから作業を進めたいと考えている。
それは「職人は自分の頭で考えられない」というわけではない。現場監督がいない状況で、職人が勝手に作業を進めて、それが間違っていれば、職人とその所属会社の負担となることが目に見えているからだ。
現場監督には急な仕様変更の情報が入っているのに、職人には知らされていなかったり、たまたま違う職長が来ている日で、作業内容の詳細が伝わっていなかったり。現場監督と直接打ち合わせできない、ということは、職人にとって負うべきリスクが高すぎる。
また、朝の安全確認や、他の職人との絡みなど、現場監督の判断が必要なことは山ほどある。だから、どんなに体調が悪くとも、朝の打ち合わせだけは参加すべきである。
ましてや、遅刻を繰り返す現場監督は、言語道断だ。
人員と材料の手配をミスる現場監督になるな!
工程表通りに進めば良いが、実際はそう簡単ではないのが、建設現場の世界だ。
雨や突発的な休工がつきまとうため、職人たちの先々の日程までは、正直、調整しきれない。なので職人たちには、大まかな作業の時期を伝えた上で、作業日の1~2週間前に再度連絡するのが通常だ。
そんなときに起こりがちなのが、人員の手配ミス。特に2社にまたがって行う作業の場合、1社への連絡を忘れるだけで、もう1社の職人は無駄足を踏むことになってしまう。現場の規模が大きければ大きいほど、その会社や職人は甚大な被害をこうむることになる。
日給制で働いている職人たちにとって、無駄足を踏むのは自分の給与に直結する重大問題である。一度のミスであれば許してもくれるかもしれないが、何度もミスを重ねるようだと、現場監督としての信頼を失い、誰もついて来なくなる。
また、材料の手配でのミスも厳禁だ。せっかく職人たちが現場に集まっても、材料が届いていなければ、その日を棒に振ることになる。そんな一大事に発展すれば、現場監督の職務怠慢として、職人たちから怒鳴られても仕方ない。
材料も人員も手配を忘れないよう、リストにしておくなどの予防策が大切である。
工程管理で「休日作業」を分散できる現場監督になれ!
工期が迫ってくると、週休1日すら取る暇がなくなる。建設業の表立った「働き方改革」などとは裏腹に、休日作業になることも実際にはある。
台風が連続して突撃したり、予期せぬトラブルが発生したり、工期が圧迫されてしまうことは仕方の無いことだ。
やむを得ぬ事情は職人も理解してくれるが、いつも工程の最後のほうが詰まってしまい、最後の工程の職人ばかり、休日作業が続くとなると、話が変わってくる。
工程が最初のほうでつまずいたのであれば、ある程度は休日作業の負担を分散させることができる。また、現場監督でも作業できる場所があれば、監督自身が作業することも必要だ。
もちろん、監督職として作業を行うのは理想的ではないが、「監督が作業を行わなければいけないくらい切羽詰った状況なんだ」というのが見て取れれば、職人も「しょうがねえな」という気持ちになってくれるものだ。ポーズとして、というわけではなく「一緒に頑張っているよ」という態度を見せるのも、現場監督として重要な役割である。
現場監督職は「自分も管理」しろ!
以上、職人とトラブルになりやすい理由を3つあげたが、監督職は現場を管理することが仕事だ。根本的にはすべて「管理」の一言にまとめられる。「自分を管理」「現場を管理」「工程を管理」という、当たり前のことさえできれば、職人とも信頼関係を築くことができ、いいパートナーとなれる。
大手ゼネコンの新入社員も1年で半分近くが退職してしまうと聞いたこともあるが、若手の現場監督たちには、職人に怒鳴られたぐらいで、くよくよせず、建設業界を支えるべく頑張ってもらいたい。