建設業界のブラックボックス「重層下請構造」に、やっと国交省のメス!?

監理技術者資格者証保有者は近年66~67万人で推移しているが、高齢化が進展している。(国土交通省「現場技術者配置要件の合理化について」)

建設業界のブラックボックス「重層下請構造」に、やっと国交省のメス!?

行き過ぎた建設産業の「重層下請構造」

建設産業が抱える大きな課題の一つである行き過ぎた重層下請構造。過度に重層的なピラミッド構造は、施工に関する役割や責任の所在が不明確になるほか、品質や安全性の低下、下請の対価の減少や労務費へのしわ寄せなど、さまざまな影響や弊害が指摘されています。

しかし、建設産業の過度な重層下請構造は、いまだ改善には至っていません。発注者の理解を得つつ、建設産業の「働き方改革」を進めるためにも、発注者にとってブラックボックス化している重層構造を改め、生産性が高く分かりやすい施工体制とすることは必要不可欠です。

その問題を解消するため、ついに国土交通省が動き出しました。現場技術者の配置要件を合理化する具体策として、「下請共同施工制度(仮称)」を打ち出したのです。下請企業での重層化による負担を軽減するための「下請共同施工制度(仮称)」とは何なのか。その内容を簡単に解説します。

下請共同施工制度を構築

下請共同施工制度とは、上位下請けの主任技術者が、下位下請けの主任技術者の業務範囲をカバーすることで、下位下請けの主任技術者の配置を不要とすることができる仕組みです。

端的に言えば、これまで一つの工種に下請け企業の数だけ配置されていた主任技術者を、代表となる上位下請けの主任技術者に集約してしまおうという考え方です。

下請け企業の主任技術者配置要件の合理化イメージ(国土交通省「現場技術者配置要件の合理化について」)

工種単位の複数の企業がチームとして施工する専門工事の特性から、当該工種の上位企業の主任技術者が、適正な施工管理を敷くことができるのであれば、その下に連なる企業に必ずしも主任技術者の配置を求めなくても、適正な施工が担保されるのではないかという判断に基づいています。


下請け主任技術者を代表企業に集約

下請共同施工制度の活用にあたって念頭に置いているのは、繁忙期に労務(技能者)を確保するために行う下請発注に伴った重層化の改善です。

元請けや3次下請け以下では、自社のみで施工できない工事内容が含まれていることを理由とした再下請けが多いのですが、1次下請け、2次下請けにおいては「労務不足を理由とした再下請けが多い」という調査結果が報告されています。

つまり、技能者不足を補うための下請け発注でも、現行制度では施工体制に入る各企業がそれぞれ主任技術者を配置しなければならないため、1次下請け、2次下請けは工事全体の施工体制面では余剰な主任技術者を配置せざるを得ないというケースを改善したい考えです。

請負階層別に見る再下請の理由(国交省「現場技術者配置要件の合理化について」、全国建設労働組合総連合・特定非営利法人建設政策研究所「建設産業の重層下請け構造に関する調査・研究報告書(平成29年9月)」)

下請共同施工制度の活用は、主任技術者を配置する1次下請けの下に、主任技術者の配置を求めない複数の2次下請けが連なるパターンや、下請企業によるJV方式(代表企業が主任技術者を配置)の導入などを想定しています。

適切な施工・品質を確保するために、上位下請(代表企業)が配置する主任技術者を専任とする、あるいは下請共同施工制度を利用できる企業は建設業の許可を得ている企業に限定するなど一定の要件・条件を満たす場合の選択肢として用意することを明記します。あくまで、この制度は重層下請構造を改善するためのツールであるため、制度の利用強制などは想定していません。

下請共同施工制度で生産性向上と働き方改革

下請共同施工制度が上手に活用できれば、合理的な技術者配置による企業としての生産性向上や技術者自身の働き方改革につながる効果が期待されます。

さらに、国交省では、下請共同施工制度以外にも建設キャリアアップシステムの活用を通じた技能や経験を有する技能者が社員化できる環境の整備や、施工体制台帳・施工体系図の活用による下請次数や下請企業数の「見える化」などにも取り組む方針です。

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日刊全国専門紙『建設通信新聞』で働く若き熱血記者。学生時代から記者に憧れ、某全国系経済新聞でバイトする。卒業後、証券業界で厳しく激しく育てられてから入社。一般家庭への飛び込み営業も経験しているため、少々の苦労は苦労と思わないようにしている。霞が関を根城にして活動中。
建設通信DIGITAL web刊⇒ https://www.kensetsunews.com/web-kan
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