行き過ぎた建設産業の「重層下請構造」
建設産業が抱える大きな課題の一つである行き過ぎた重層下請構造。過度に重層的なピラミッド構造は、施工に関する役割や責任の所在が不明確になるほか、品質や安全性の低下、下請の対価の減少や労務費へのしわ寄せなど、さまざまな影響や弊害が指摘されています。
しかし、建設産業の過度な重層下請構造は、いまだ改善には至っていません。発注者の理解を得つつ、建設産業の「働き方改革」を進めるためにも、発注者にとってブラックボックス化している重層構造を改め、生産性が高く分かりやすい施工体制とすることは必要不可欠です。
その問題を解消するため、ついに国土交通省が動き出しました。現場技術者の配置要件を合理化する具体策として、「下請共同施工制度(仮称)」を打ち出したのです。下請企業での重層化による負担を軽減するための「下請共同施工制度(仮称)」とは何なのか。その内容を簡単に解説します。
下請共同施工制度を構築
下請共同施工制度とは、上位下請けの主任技術者が、下位下請けの主任技術者の業務範囲をカバーすることで、下位下請けの主任技術者の配置を不要とすることができる仕組みです。
端的に言えば、これまで一つの工種に下請け企業の数だけ配置されていた主任技術者を、代表となる上位下請けの主任技術者に集約してしまおうという考え方です。
工種単位の複数の企業がチームとして施工する専門工事の特性から、当該工種の上位企業の主任技術者が、適正な施工管理を敷くことができるのであれば、その下に連なる企業に必ずしも主任技術者の配置を求めなくても、適正な施工が担保されるのではないかという判断に基づいています。