毎年死亡事故が発生する排気漏れ
ガス漏れ、水漏れ、漏電など、いろいろな「漏れ」がありますが、私が一番恐ろしいと思うのは、やっぱり排気漏れです。厳密には排気漏れによる「一酸化炭素(CO)中毒」が最も恐ろしいです。
一般財団法人日本ガス機器検査協会の資料によると、1986年から死亡事故が起こらなかった年はありません。毎年死亡事故が発生しています。
ただ、安全装置の設置義務などといった国による法整備や、ガス機器メーカーと施工業者の技術向上によって、事故件数そのものは減ってはいます。が、もっと事故を減らすことが可能だと私は考えています。
ずばり、施工を監督する「建築側」にも、事故を減らす努力をしていただきたい!ということです。と言うのも、建築側は設備に関しては「勝手に完璧にしといてくれ」というスタンスでほったらかしが多いように感じるからです。
ほんの少しの確認で事故は減らせますので、建築の施工管理者には是非、一歩踏み込んだ管理を実践して頂きたいです。
ということで、施工管理の甘さが招いた、一酸化炭素中毒の事例を3つ紹介します。
排気口をビニールシートで覆い一酸化炭素中毒
まずは集合住宅の外壁補修工事の事例です。
外壁補修の作業者が、室内の給湯器とつながっている外壁の排気口に、ビニールシートを覆ってしまいました。
給湯器を使用した室内には、高濃度の一酸化炭素を含む燃焼排ガスが漏出し、住人がこれを吸引することになり、一酸化炭素中毒になってしまいました。
この事例では、
- 施工管理者は排気口を塞がないように指示を徹底する。
- 塞いで作業しなければならない時は、住人が給湯器を使用していないか確認できる状態で作業する。
これだけで事故は防げました。
排気管に鳥の巣ができて死亡事故
次は排気管内に鳥が巣を作ってしまった事例です。
何らかの理由で防鳥キャップをしていなかったことに加え、リフォームで長期間使用していなかったことが原因で、鳥が排気管内に巣を作ってしまいました。
さらに排気管が腐食していたので、リフォーム完了後、給湯器を使用すると高濃度のCOが室内にあふれてしまいました。
結果、死亡事故に至りました。
私の手元にある施工業者向けの資料では目視、あるいは内視鏡(ファイバースコープ)を使って配管内を確認するよう書かれていますが、防鳥キャップがあるかどうかぐらいは誰でも確認できます。
給湯器に排気筒がつながっておらず救急搬送
室内用給湯器は、給湯器と排気筒が容易に外れないよう、ビスやロックピンで抜け防止の措置がされています。
しかし新築でもリフォームでも、大工工事やクロス貼りの関係で、配管や固定金具を取り外すことがあります。
この場合、特監法で定められた有資格者であるガス消費機器設置工事監督者が脱着すべきなのですが、この事例では無資格者がそれを行いました。
その結果、排気漏れが発生して住人の方が一酸化炭素中毒で救急搬送される事故につながりました。
この事例では運よく死亡事故には至りませんでしたが、一酸化炭素というのは猛毒でほんの僅かな量でも死に至ります。
こちらがその数値です。
CO(一酸化炭素)中毒の症状
細かい数値ではわかりづらいかもしれないので具体的な例を示すと、一般的な広さのお風呂場に2Lのペットボトル分の一酸化炭素を混ぜると大体0.04%です。
たったこれだけで吐き気などの症状がでます。それほど一酸化炭素は強力な毒性の気体なのです。
他の設備工事も実態は同じ
一酸化炭素中毒だけでなく、同じような事故がガスや給排水でも起こっています。
指示や確認の徹底、無資格者による工事は絶対にさせない。
これだけで防げる事故がありますので、施工管理者、現場監督の皆様には、排気漏れによる事故防止を徹底して頂きたいと思います。