現場監督2名体制の新築工事で地獄
引き渡しを完了したばかりの某保育園の新築工事は、近隣住民の反対運動もあって、地獄の日々でした。
現場監督2名による総工費数億円の工事でしたが、建設許可の関係で着工時期が遅れ、工事期間は約5ヶ月。
流石に保育園の新築だけあって、監理事務所の設計事務所先生は、官公庁ばかりやってきたベテランの大先生でした・・・。
設計事務所に施工計画書を再提出
まず、この保育園の新築工事では、なかなか着工に踏み切れないことが、とてつもないプレッシャーになりました。
万が一、納期に間に合わない場合、当然請け負った会社の責任は重大です。
工程表通りに、自分のペースで工事を進めないと間に合わないのに、着工できない!――そんな時の現場監督の心境たるや、その緊張感を理解できるのは、同じ現場監督のみではないでしょうか。
着工前に施工計画書を提出するも、設計事務所からは赤ペンチェックで再提出の指示。さらに訂正して提出するも、そもそも全体的に計画書のページ数が少ないと指摘され、
「それなら最初に訂正箇所を全部言ってくれよ!」
なんて、言えるはずもなく・・・
「はい、分かりました。」
と答え・・・。
そんなこんなで現場が始まったら始まったで、書類と図面と現場確認で建方が終わる頃まで、心身共に厳しい地獄の日々が始まります。
設計事務所の先生と「地獄の定例会議」
地獄の日々が続く中でも、現場監督として特に課題となるのが、毎週開催する客先と設計事務所先生との定例会議です。客先や設計事務所先生の性格にもよりますが、特注物件の場合は、定例会議の所要時間も長くなります。
この保育園の新築工事では、着工前から竣工まで長期間にわたって、毎週6時間ほど定例会議をおこないました。一般住宅の建築や、建設業界以外の方々が聞くと、そんな長時間をかけてムダが多いと思うかもしれませんが、保育園の新築工事ともなると、外壁や屋根の色からビスの形状まで、数百以上の色決め、形状決めが発生してきます。
たとえば、保育園の家具の色や廊下のクロス。とてもカラフルで、もう楽しくてしょうがないくらいの色分けをしなければなりません。
こうした定例会議の資料は、設計事務所の先生の指示のもと、すべて現場監督が準備していきます。そして、プレゼンが決定したら、定例会議の議事録も自分で作成して承認をもらっていきます。
定例会議での現場監督のテクニック
定例会議では、現場監督としてのテクニックが問われます。
たとえば、客に信頼されず、先生に嫌われれば、納期も予算も無い無い尽くめの現場は、決して上手くいくはずがありません。取引施工業者とも険悪になり、変更、やり直し等で現場は滅茶苦茶になるのは目に見えています。
余分なコストも当然高額になってきますし、何よりも僕たち監督が一番困るのが、施工図の承認が下りないこと、そして客先との建物の色決めが進まないことです。
そして、定例会議の内容は、竣工時の建物の出来栄えも左右すると言っても過言ではありません。定例会議がうまくいかないと、設計事務所の先生と客先の意見を現場サイドが汲み取った建物にならないからです。
定例会議を上手く乗り切るコツは、良い人間関係を築くことに尽きます。「どうすれば、この人達とうまくいくか?」に徹底的にこだわる必要があります。
僕なりの現場監督としてのテクニックをパターン別にまとめてみました。
現場監督は断るな!
パターン1「先週色決めした内容を、やっぱり変更したい」
決定事項の変更は、正直よくあるパターンです。こういった内容は、その場ではっきり自分から「No」と言うのはやめましょう。嫌われます。
まずは担当の業者にその場で直接電話で確認しましょう。すると業者もたいてい無理と言ってきます。
そこで、客先に「すいません。もう無理みたいっす」と言います。これです。
パターン2「話がどんどん違う方向に向かっていく」
これもよくあります。時間が無い自分達にとってはまさにストレスです。
定例会議が始まったら、今日決めたい内容を先に言っておくと話を戻しやすいです。そうしましょう。
パターン3「色決めが出来ない優柔不断なお客」
たまにいます。色見品をみて、この中間の色にしてとか言ってきます。「はぁ?無理」とか言ってはいけません。
色決めは先に全体のコンセプト、木調なのか原色系なのかを決めてから進める。それに沿ってこちらからある程度誘導していきましょう。
・・・現場監督たる者、とにかく決して断らない事。施工的に何とかしてあげる。これが全てです。
基本的に前向きな姿勢でどんどん改善の提案(時にそれがコストダウン)をしていけば、自然とみんな協力してくれます。
「はぁ?無理」と心の中で思っても、絶対言わないようにしましょう!