専門以外の施工は日常的?
リフォームの現場では、予算あるいはスケジュールの関係で、自分の専門以外の仕事をすることが多々ある。
例えば、ガス屋が電気工事をしたり、キッチン屋が水道工事をしたりする。専門の職人を手配する程の工事でもないし、また専門でなくてもやれてしまうので、現場的には一見メリットしかない。
しかし、そんな旨い話ばかりではなく、専門外の仕事を任せてしまったために事故、またはクレームに至るケースもたまにある。
専門外の仕事を引き受けてしまったゆえの失敗事例はいくつかあるが、大きく2つのパターンに分けられる。1つは施工を失敗してしまう技術的なパターン。もう1つは無資格での工事が知れてしまい、施主や元請からクレームが入るパターンである。この2パターンのトラブル事例を紹介したい。
マンションの上層階で水漏れ
1つ目は、マンションで水漏れが起こってしまった事例である。
この現場はシステムキッチンの天板だけの入れ替え工事だったので、現場監督はキッチン屋の職人しか手配していなかった。システムキッチンには当然水栓が取り付けられているので、給水給湯の脱着がある。そこで現場監督はキッチン屋にその作業を依頼し、職人も断ることができず、それを引き受けてしまった。
その結果、水栓の配管をつなぐバンドが固定されていなかったため水漏れが発生。戸建だったら被害は限定的に抑えられただろうが、マンションの上層階の現場だったので悲惨な水漏れになった。しかも、責任の所在を巡って紛糾した。
工事保険には入っていたが、保険会社は被害に遭った部分しか保障しないので、被害範囲は大きいと訴える住居者側と、保障範囲をできるだけ小さくしたい保険会社側とで争うことにもなった。
当然、住居者と保険会社が直接やり取りする訳ではなく、工事を請け負った会社が間に入り調整しなければならなかった。
仕事を受けてしまう職人気質
このトラブルでは、ちゃんと水道屋や設備屋の職人が担当していれば、少なくとも配管のつなぎ方のチェックや、水漏れチェックはしていたはずである。何らかの理由で水漏れチェックができないのであれば、水道メーターを止めて帰り、後日監督に水漏れチェックを頼むべきだろう。――そのような観点から、専門の職人がやれば簡単に防げた事故だったと言える。
ただ、職人からすると、現場監督や仕事を依頼してきた人に泣きつかれると断りにくいという事情がある。私自身、仕事とは相手の役に立ってナンボ、との考えがあるので、断るのは悪いような錯覚もある。
しかし、現場のトラブルを未然に防ぐには、専門の職域以外は断るべきだし、もし仕事を受けるならば、たとえ自信があったとしても、必要な資格を取得するか、あとで専門の職人にチェックしてもらうべきである。
無資格施工がバレて大クレーム
次は、無資格で施工してしまい、大クレームになってしまった事例だ。
水道屋が無資格でガスコンロのガス接続工事をしてしまった結果、リフォームのやり直しをさせられ、工事代金も支払ってもらえなかったというパターンである。
ただ、このリフォームの現場では、接続工事には何も問題はなく、実際にガスを使用する分にも何の問題もなかった。しかし、ひょんなことから無資格工事が発覚し、大クレームに発展してしまった。
ガスの接続口には、誰がいつ接続したかわかるシールを貼らないといけない。しかし、水道屋はシールを持っておらず、シールを貼らなかった。私自身いろいろな現場を見ているが、シールを貼っていないことは珍しくないので、水道屋もさほど意識していなかったのだろう。
しかし、このシールが貼られていないことから無資格工事が発覚。施主は手抜き工事だと訴えて、最終的に工事のやり直しになったのである。
無資格施工は時代が許さなくなってきた
私がこの失敗事例で痛切に感じたのは、建設業界の人間と、業界外の一般人では、資格に対する意識や感覚にギャップがあるということである。
本来、無資格工事はいけないのだが、施工業者や職人は資格がなくとも「問題なく現場が収まれば良し」とする考え方が強い。反対に一般の方々は、無資格工事は無免許運転と同等か、それ以上に罪なことと考えている人が多い。
施工業者や職人は、クレームを避けるためにも「無資格工事は許されない時代になってきた」ということを今一度、認識すべきである。