「お客様は怖い」という認識は間違っている
お客様に対して、多くの現場監督が間違えて認識していることがあります。それは「お客様は怖い」という認識です。そう思っている現場監督は、おそらく過去にお客様からひどい叱責を受けた経験があり、それがトラウマになっているのだと思います。
しかし、私の経験上、その認識は間違っていると断言できます。
お客様から叱責されたことがある場合、なぜその時に叱責を受けたのか?そこから考えていく必要があります。人はどのような時に怒りを覚えるのか。それは、自分の意にそぐわない言動をされた時ではないでしょうか?
あなたはその時、お客様の期待を無意識に裏切っていた可能性があります。そうでなければ、自分の家を管理してくれている大事な人に対し、強い叱責など浴びせようなどとは思わないはずです。
つまり、お客様が何を望み期待をしているのか、常日頃からイメージしてそれに沿うように誘導してあげることが必要なのです。そうすれば怒りはおろか、厚い信頼関係が生まれることすらあり得るのです。
言葉遣いや言葉選びには注意が必要
現場監督と施主は、法的には同等の立場です。施主が資金を出して、監理者である現場監督がその経験と知識を使い建物を建てていく。つまり、お互いの協力のもと、ひとつの建物を作り上げていくという考え方に間違いはありません。
しかし、施主は協力者である以前にお客様です。ましてや施主自身、協力者であるという認識を持っている人はほとんどいません。なので、その背景をしっかり認識しながら現場監督は施主をお客様と捉え、気持ち良く引渡しを迎えてもらうことに専念する必要があります。
工事が始まると、施主と監督が会話を交わす機会が何度も発生します。工程の連絡や内容変更の擦り合わせ、近隣の方とのやりとりがあればその報告など、そこでの会話術は非常に重要です。
ただの世間話くらいの感覚で会話をすると、とんでもない誤解が生まれたり、信用を失い聞く耳を持ってもらえなくなったりと、正常な関係でいられなくなることもあります。なので、言葉遣いや言葉選びには気を使わなければなりません。
相手を思いやれば、言葉も変わる
お客様とのコミュニケーションには、会話やメールを使います。つまり、言葉を使って相手を誘導してあげるしか方法はなく、そこを間違えてしまうと、うまくいかなくなってしまいます。言葉の選択は非常に重要です。
例えば、現場のキーボックスの番号を教えてほしいとの要望があった時、あなたならどのように対応しますか?通常であれば現場の管理上、施主も含め工事関係者以外には鍵の番号は伝えてはいけないのがルールです。
「社内のルールで、お客様に鍵の番号をお伝えできないことになっているので、教えることはできません。」
相手の気持ちを汲めない現場監督はこう言うでしょう。自分が施主だった場合、少し嫌な気持ちになりませんか?伝え方を変えるのは、とても簡単です。相手を思いやれば言葉も変わります。
「万一、なんらかのトラブル(盗難、火災など)が発生した時にお客様が鍵の番号を知っていると、不要なご迷惑をお掛けしてしまう可能性がございます。立ち寄られる際、お声がけいただければ入場できるようご配慮いたしますので、鍵の管理は私どもにお任せくださいませ。」
伝える内容は同じでも、印象が全く違いますよね?あくまでも、お客様のためだというニュアンスを強調しています。自分のためを思ってのことだと分かれば、怒りもなく信頼につながると思いませんか。
お客様との会話の中で、どうしてもお客様の意に沿えない内容をお伝えしないといけない場面は必ず発生します。その時、自分たち側からアプローチした話し方をするのか、相手側からアプローチした話し方をするのかで、全く違う結果を生むことになります。
夢を持って家づくりを楽しんでいるお客様が、気持ち良く引渡しを受けるためには、私たちの配慮や気遣いが必要なのです。