西日本豪雨の災害復旧工事で施工管理
西日本豪雨によって、私の住む地域も被災し、勤務先では毎日、土砂災害の復旧工事の対応に追われている。土砂災害の現場は悲惨な状況で、復旧工事の人手も足りていないのが現状だ。
私は今回、実際に復旧作業に従事する中で、施工管理技士としての無力さを感じた。と同時に、災害復旧工事における施工管理の業務そのものに疑問を抱く場面に出くわすことになった。
西日本豪雨の復旧工事での、施工管理の実態を報告したい。
災害復旧工事で施工管理
私の地域の被害は、主に土砂崩れ、河川の氾濫、増水であった。
われわれ土木業の人間が担当する業務は、人命救助ではなく、市役所の指示で里道や国道の土砂を撤去し、交通を確保することである。川の浚渫工も担当している。
土木施工管理技士である私の業務は、ずばり写真整理である。この緊急事態の現場においても、普段の業務と同様、写真整理を行わなければならない。2次災害が発生する前に、一刻も早く工事を進めなければならないのに、着工前や撤去物の数量を図り、写真に収めなければならないのだ。
これには違和感を覚えないだろうか?県外から詰めかけたボランティアが、緊急を要する作業を進めている中、写真管理を行うのだ。しかし、写真を撮影するために何時間もかけている余裕は、災害の現場にはない。
だから、われわれは必要最低限の管理で復旧工事を進めることの重要性を、市役所などに訴え続けている。着工前と完成後の写真を撮影し、作業状況の写真を何枚かだけ撮影するだけでも十分ではないでしょうか、と。
ただ、災害復旧とはいえ、われわれも工事によってお金を頂いている立場である。こういった提案をわれわれ施工管理技士が丁重に訴え、それを実現していかなければならない、という苦労に直面している。
普段の施工方法が通用しない災害復興工事
災害の復旧工事は一刻を争う作業である。普段の工事であれば、材料を準備して従来通り施工すれば、問題なく作業が進行する。
しかし、災害復興の工事現場は、とにかく国道や里道の開通を最優先しなくてはならないし、材料や資材も一気に底をつく。崩壊した構造物を撤去する作業も、キレイに壊せない。作業手順を間違えれば、工事中に2次災害に合う危険性もある。構造物や擁壁の鉄筋材料が民家に突き刺さっている状態など、どこの現場も普通ではない状況なのである。
こういった異常な状況下で、施工管理技士がすべきことは、普段よりも安全管理を徹底した施工方法を選ぶことだ。私が実際に担当した被災現場の一つに、民家と擁壁の間に岩が大量に流れ込み挟まっている現場があった。民家の屋根が障害となり、バックホーなどの大型重機を使えないのである。
しかし、この猛暑の中、人力で大量に流れ込んだ岩を取り除くことは不可能であった。そこで私はやむをえず、民家の地主と話をして、屋根の一部を取り壊しさせていただく方向で話を進め、岩の撤去作業を完了した。
こういった臨機応変の施工が必要な現場は多数存在する。なるべく人力で作業をしなくても良いように、適切な状況把握と準備をしなければならないのだ。
建設業者の被災地での使命
被災地の現場に行くと、悲惨な状態の民家が並んでいる。そういった家の持ち主は、われわれの重機を発見すると、家の中の土砂を取り除いてほしいと望む。その気持ちは痛いほど分かるが、われわれは道路の開放を優先しなければならない。むしろ、住民たちの希望を無視してでも、業務遂行することに正直心が痛んでいるのが現状だ。
復興支援に駆け付けてくれているボランティアや市民団体が活動できるように、われわれ建設業者は自分たちの役割を認識し、ときには冷徹な気持ちで、一刻も早く道路を開放しなければならないのである。
一人でも多くの人が一刻も早く、安心できる生活に戻れるように、私たちは明日からも災害復興作業を続けていく。