「土木の仕事は、単純にカッコイイ!」つまらないと思うのは、土木を知らないだけ

イマドキの学生が「土木の魅力」を語る

大学の先生などと話をすると、「土木を学ぶ学生が年々減っている」という話をしばしば聞く。

10数年前は、建設業界の求人が減っていたので、学生が減るのも理解できた。しかし、最近は求人は増えているのにもかかわらず、学生が減っている。これは深刻だというわけだ。

大人にとって若者が理解不能なのは、いつの時代も同じという気はするが、理解できるできないは別にしても、若者が土木に対して、どう考えているのかについて一度じっくり話を聞いてみることは、それなりに意味があるだろうと考えた。

福岡大学工学部社会デザイン工学科で土木を学ぶ土井朋実さんに、土木を学ぶ理由、土木の魅力などについて話を聞いてきた。

明るくハキハキ話すのが印象的な土井ちゃん。アルバイトは、ヤフオクドームで「ビールの売り子」。カープファン。


高校生の頃は、土木にあまり興味なかった

――大学では何の勉強を?

土井 福岡大学工学部社会デザイン工学科で土木を学んでいます。

――好きな講義とかは?

土井 好きな講義は水理学、構造力学ですね。

もともと物理が好きだったのですが、高校物理の知識を元に、さらに専門的に深めて学べるのが楽しいです。

――土木がやりたくて工学部に?

土井 いえ、高校生の頃は、土木にはあまり興味ありませんでした。やりたい仕事のイメージもはっきり固まってなくて、「人を笑顔にできる仕事をしたい」という漠然としたものでした。

――福岡は地元ですか。

土井 出身は広島です。広島市の安佐北区で育ちました。田舎です(笑)。

今年7月7日、広島市安佐北区の県道37号線広島三次線の様子(被災者提供)

広島で土砂災害を経験し、「災害って身近なんだ」

――田舎ではないでしょ?山がちなイメージではあるが(笑)。

土井 そうなんです。山が多いんです。4年前と今年、土砂崩れが起きました。4年前、私は高校生で、土砂崩れは、家の窓から見えました。

――自宅は大丈夫でしたか。

土井 自宅は大丈夫でしたが、先輩が亡くなりました。

――ショックは?

土井 ありましたね。親しかった人が突然いなくなってしまったので。山が崩れているのを目の前にしたとき、「災害って身近なんだ」と思い知らされました。今まであった普通のまちが、たった一夜の大雨でこんなにも崩れるんだ、と思いました。

――今年も土砂災害が発生した。自宅は大丈夫だった?

土井 自宅は大丈夫でした。友達にSNSで写真を送ってもらったのですが、家の周辺のいつも利用していた道が大量の土砂で埋まり、道でなくなっているのを目にしました。自分の目で見ていないので、今でもその光景が信じられないでいます。

ここは、高齢者の方が多く住む地区なのですが、道から奥に入った場所では、ボランティアも少なく、困っているようです。友達からは日々、助けを求めるメッセージが届いています。私にできることはしたいと思っていますが、離れた場所にいると、たいしたことはできません。被災された方々には、どうか早く以前通りの暮らしを取り戻すことを祈っています。

――同じ地域で土砂災害が繰り返されたことについて、どう感じていますか?

土井 また繰り返されている災害は、今後も続くと思います。どうにか災害を最小限に抑えれるまちづくりができないものか、言葉がありません。今年の水害は、全国的にも多くの死者がでました。今回の豪雨を受けて、もう少し避難しやすい環境をつくることも大切なのではないか、と考えています。

土井ちゃんが談笑するのは、ツナガルドボクメンバーの大塚柚人くん(福岡大学大学院生)。大塚先輩くんを通じて、ツナガルドボクの存在を知ったと言う。


「もっと土木を知らなければ」と考え、ツナガルドボクに参加

――話を戻しますが、高校生の頃は土木に興味はなかったけど、大学で土木に興味を持ったのですか?

土井 そうではありません。工学部に入学したのは、たまたまです。1、2年生の頃は講義もつまらなかったです。

――つまらない?

土井 今思えば、土木のことを知らなかったからです。知らないから、勉強が楽しくなかった。でも、土木をもっと知れば、楽しくなるんじゃないかなと考えたんです。それで、いろいろな人に会ったり、いろいろ挑戦しようと決めたんです。

――挑戦?例えば?

土井 大学の先輩が主宰する「ツナガルドボク」というネットワークがあって、メンバーとして参加しました。

――ツナガルドボクとは?

土井 土木を学ぶ学生のネットワークです。福岡大学の鳥越璃奈さんという先輩が中心になって、今年5月に正式に発足しました。私は、発足する前からツナガルドボクに関わっていて、他の大学の学生をはじめ、建設コンサルタントの技術者など実際に建設業界で活躍している方々と交流するようになりました。

「土木も人を笑顔にできるんだ」と土木の魅力に気付く

――何か変わりました?

土井 変わりました。「土木も人を笑顔にできるんだ」ということに気づきました。土木は魅力ある仕事だし、「多くの人に土木の魅力を伝えたい」と考えるようになりました。

――ずいぶん風向きが変わりましたね(笑)

土井 私自身、土木のことを知らなかったんですよ。他の人もたぶん、土木を知らないから、興味がないんです。今は土木の仕事に就きたいです(笑)。

――どんな仕事?

土井 建設コンサルタントの仕事です。橋梁の維持管理をしたいです。デスクワークより外に出たい気持ちもあるので、施工管理をするゼネコンにも興味があります。その日本の技術を世界に伝える仕事もやりたいですね。

――素晴らしい。

土井 ただ、転勤がある会社の場合、「家庭を持てないんじゃないか」という不安があるんです。旦那が転勤先についてきてくれたら、良いんですけど(笑)。

――それこそ、ツナガルドボクの交流を通じて質問したら?

土井 それはまだ聞けてないんですよね。

――何を質問した?

土井 ドボジョの方々と意見交換したときには、「土木は、ある意味女性の働きやすい業界ですよ」と聞いて驚きました。よくよく考えてみれば、男性の中で働く女性だから、「確かに働きやすいのかも」と思うようになりました。

その話を聞くまでは、土木女子として「どれくらい社会で自分の力を生かせるのかな」と不安だった面があったんです。でも、「自分次第でどうにでもなれる」と聞き、さらに頑張ろうと思いました。やはり、自分は「社会でキラキラ働く女性になりたいんだ」と再認識しましたね。


現場にいるだけ雰囲気を明るくできる女性になりたい

――将来こうなりたいイメージがある?

土井 具体的に「こういう人になりたい」というものはありませんが、現場にいるだけで場の雰囲気を明るくでき、周りから見ても楽しそうに生き生きと働いている。そういう人になりたいですね。

――「女性の敵は女性」だと思う?ある女性がそう言ってたんだけど。

土井 私もそう思います。いかに女性の立場を良い意味で利用できるかが、大切だと思うんです。その点で、やはり同じ女性がライバルになるのではないでしょうか。

――なるほど。じゃ最後に、土木の魅力をPRしてください。

土井 私が土木に感じる魅力は、今ある当たり前の生活の裏側を土木が支えているということ。橋梁がなければ簡単に川は渡れないし、河川の整備をしなければ今以上に自然災害が拡大してしまいます。

皆が暮らしやすい街づくりも土木の仕事なんです。ふだんの生活では当たり前だと思っていることも、土木技術者がいなければ成り立ち得ないことだと、土木を学んでから気づきました。カゲながら社会を支える存在の土木は、単純に一言で「カッコいい」と思います。

ツナガルドボクでコンサル社員と女子会

福岡市内のおしゃれなカフェで開かれた学生とサラリーマンの女性だけの交流会(写真提供:鳥越璃奈さん)。前列右端が土井ちゃん。後列右から2人目が鳥越さん。

九州の土木系専攻の学生をメンバーとするツナガルドボク(代表:鳥越瑠奈さん)は7月4日、福岡大学で土木を学ぶ女子大学生と建設コンサルタント女性社員との女子会を福岡市内のカフェで開いた。当日、学生13名、社員6名が参加する中、建設コンサルタントの仕事のやりがい、女性の働きやすさなどをめぐって、意見交換した。鳥越代表は、女子会のねらいについて「ふだん聞けない悩みや不安を現役の女性技術者の方に直接お聞きする場を設けたかった」と話している。

※ツナガルドボクでは仲間を募集中です。詳細はお気軽にお問い合わせください。
https://0627sasa.wixsite.com/tunagarudoboku/blank-2

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基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
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