建設業に幻滅する若者たち
建設業界、とりわけ地方の建設会社では、「若者が来てくれない」「入ってもすぐ辞める」という話をよく聞く。
現代の若者たちは、建設業に何を求めて入り、何に幻滅して去っていくのか。多くの建設業界の人間が頭を悩ませている。
それを探るには本人に聞くのが一番だ。ただ、会社名、実名を出すと、なかなか本音は出せない。
ということで、現場監督見習いとしてB建設会社に入社したものの、作業員に転向した若者Aくんに、その建設業界に飛び込んだ理由や今の胸の内などを聞いてきた。
逆指名で入社したB建設会社
——もともと土木に興味があった?
高校では土木科にいましたが、土木に興味があるというよりは、なんとなく「外で働きたい」と思って、工業高校に入った感じでした。いわゆる「ドカタ」については、道路工事などのイメージしかありませんでした。
ですが、あるときB建設会社の人が学校に来て、災害復旧の仕事などについて講演をしたんです。それを聞いて「ドカタの仕事ってスゴイ!」と思い、イメージが180度変わりました。
その瞬間から「B建設会社に入りたい」と考えるようになりました。
——B建設会社で、災害復旧の現場をやりたいと思った?
はい。就活のとき、学校の先生には、他の建設会社への入社を勧められましたが、全然その気がなかったので断りました。
ぼくはB建設会社一択でした。とにかく、講演の印象が強かったからです。その結果、志望通り、B建設会社に入社できました。職種は現場監督見習いでした。
ただ、入社してどういう仕事をするのか、現場監督とはどういう仕事なのかとか、具体的なことは、そのときはまだよく分かっていませんでした。
現場監督は「なんか違うなあ」
——入社後は、現場監督見習い?
入社後、上司から「現場監督は、お金の出し入れなども管理するから面白いよ」と言われました。最初は、ぼくも「その通りだな」と思って、とりあえずは先輩に教わりながら、現場監督の仕事を覚える日々を送りました。
だけど、入社して1年ほど経った頃、パソコン操作などのデスクワークをするのが「なんか違うなあ」と思うようになりました。現場監督見習いとして1年経って、自分に任せられる仕事が増えてきたからです。
もともと外で働きたかったこともあり、だんだん苦痛になってきたんです。現場監督としての本格的な仕事、といっても測量とかですが、正直しんどかったです。
——結構早い判断だったね。
「現場監督として、現場を動かす」ことに、今でも憧れはあります。ただ、とにかく仕事の内容に馴染めなかったんです。
人と話すのは平気ですが、とにかくデスクワークがイヤでした。もともと勉強が好きじゃないので(笑)
4歳上の先輩が重機に乗って現場作業しているのを見て、「僕もああなりたい」と、むしろそっちに憧れるようになりました。
現場監督じゃ味わえない達成感
——自分から「作業員をしたい」と言ったの?
いえ。僕の仕事ぶりを見かねた上司から「ヤル気あるのか!」と言われました。僕は「現場作業員として動きたい。現場監督はムリです」と答えました。
それで作業員に変わったんです。それ以前から作業員の仕事はしていたので、それは変わらず。ただ、それ以降、現場監督の仕事にはノータッチになりました。
——現場監督と作業員は何が違う?
現場監督は指示を出すだけですが、作業員は実際に自分で体を動かして、モノをつくる仕事なので、やりがいを感じます。例えば、石積み一つとっても、自分で石を積んで、モノができあがると、「できた!」という達成感があります。
ある護岸工事で、2tのブロックを500個ぐらい積んだのですが、積み上がったのを見て、「僕がやったんだ」とスゴく達成感を感じました。
現場作業は「わかりやすい、実感が湧きやすい」のが楽しいです。これが現場監督だと「自分がやった」という達成感は味わえないと思っています。
作業員のほうが先輩作業員の人たちと一緒にモノをつくっていく感じがあって、仕事の環境も楽しいです。
まだ数か月ですが、とにかく現場の雰囲気が良いので、「作業員に変わって良かった」と心から思います。
土木は好きなことで稼げるから辞めない
——作業員としての目標は?
今では、現場作業員として、土木の仕事に関わり、必要なスキルを身に付けていきたいと考えています。持っている資格はまだ玉掛けぐらいですが、早くトラックや重機の運転免許などをとって、現場の役に立ちたいと思っています。
会社に1歳上の先輩がいるのですが、その人は今、新しい現場作業に挑戦しているので、その先輩を目標にしています。
最終的にはどんな作業でもできるようになるのが目標ですが、当面目標は、型枠の仕事をマスターすることです。今のところ補助的なことしかできませんが、早く自分のスキルにしたいと思っています。
——仕事は続けられそう?
今の会社を辞める気はないです。「会社を辞めよう」と思ったことも一度もありません。作業員としてずっとやっていくつもりです。
B建設会社は、会社の雰囲気が良いので、何かを学ぶには本当に良い会社だと思っています。良い人ばかりです。
繰り返しになりますが、体を動かすのが好きなので、好きなことやってお金を稼げることに喜びを感じながら、日々頑張っていきたいです。
——頑張ってね。
コレタイトルと内容が全然違いますよね、この若手さんは別に幻滅もしてなければ土木業を辞めてすらいないじゃないですか。個人的には彼みたいなタイプはレアケースではないでしょうか、昨今の現場作業員の待遇の悪さは様々なところで問題視されてますし外国人留学生が失踪してるのが現実です、本来ならもっと切羽詰まった事情を抱えた若者もいるはずで、そちらこそ多数派ではないでしょうか。今後、この彼が結婚や家庭を持つ将来を考えると壁にぶつかるのはむしろこれからで、今はその壁すら見えてない段階だと思います。