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社会を支える土木を知ろう!土木研究所と国総研の共催イベントが毎年盛況

11月18日「土木の日」は全国でイベント開催

11月18日は「土木の日」と呼ばれている。「土木」の2文字を分解すると「土」は「十一」、「木」は「十八」になること、また土木学会の前身である「工学会」の創立が明治12年11月18日であることに由来している。

そして毎年11月18日の「土木の日」には、全国各地で一般市民も対象としたさまざまなイベントを土木関係者が開催される。

土木研究所にある実物大のトンネル実験施設

筑波研究学園都市(茨城県つくば市)にある国土交通省の研究機関「土木研究所」と「国土技術政策総合研究所(国総研)」では、毎年土木の日に合わせて施設を一般公開し、最新の土木技術を子どもたちに紹介するイベント「土木の日 一般公開 ~社会を支える土木を知ろう~」を共催している。道路・河川などの社会基盤の整備や災害時対応の重要性の理解や、土木技術や土木事業に親しんでもらうことが目的だ。

土木研究所は、土木技術に関する研究や技術指導を行う機関で、主に「地質・地盤」「土砂」「道路」「水災害」「橋梁」「材料」などを研究する機関。一方、国土技術政策総合研究所は「下水道」「土砂災害」「道路交通」「道路構造物」などの分野のうち、国交省の政策や企画・立案に関わる技術について研究している。

いずれも土木の最先端技術を研究する施設だが、土木の日には一般市民でも楽しめるよう、さまざまな工夫が凝らされた展示を行っており、毎年盛況だ。

土木研究所と国土技術政策総合研究所では、どのように土木技術や土木構造物の重要性を、一般市民や子どもたちに説明しているのだろうか?

身近なもので土木模型を作る

土木研究所と国土技術政策総合研究所の「土木の日」イベントでは、実際の研究で使用している実験装置や、この日のために作成したミニ模型やミニ実験を使って、最新の土木技術を体験してもらう。

土木研究所の構造メンテナンス研究センター・橋梁構造研究グループでは、「杭基礎」と「免振橋」に関する展示を実施。杭頭が固定されている時と固定されていない時で、地震の揺れがどのように変わるのかを、ペットボトルとお菓子用のゼラチンという、一般の家庭にもある身近なものを使った手作りの土木模型で説明した。

ペットボトルなど身近なものを使って作った土木模型

この模型を考案したのは、土木研究所の田中芳樹主任研究員(構造メンテナンス研究センター・橋梁構造研究グループ)。模型の杭を何で固定しようかと考えていた時に、奥さんから「お菓子用のゼラチンを使ってみたら?」と、アドバイスを受けてできたものだそうだ。

また、普通の橋と「免震橋」で揺れの違いを見る実験では、ミニカーを使っていたせいか、男の子に人気だった。

「免震橋」と「普通の橋」で揺れの強さを比較

液状化現象を簡単に説明

地質・地盤研究グループ土質・振動チームでは、「液状化現象」に関する展示を行った。

土と水の入った水槽をしばらく放置し、水が土に充分染み込んだところで家の模型を土の上に置き、水槽を叩いて衝撃(地震の揺れ)を与えると、土の中から水が湧き上がってきて、模型の家が倒れてしまうという実験だ。

液状化現象のメカニズムを再現

液状化のメカニズム自体は難しいものだが、子どもたちには「水が一番軽くて、次に土、次に家の順に重いよね。だから、振動を与えると一番軽い水が一番上になって、家が一番下に沈むんだよ」と、子どもでも分かりやすい言葉を選んで説明していた。

ちなみに、この模型はあくまでも施設見学の時に説明するための簡易的なもので、実際の研究では遠心力を作用させることで実物大実験に近い結果が得られる「大型動的遠心力載荷試験装置」を使用している。

迫力満点のダム水理実験施設

今年の夏、西日本豪雨の際にダムを放流して、結果的に川が氾濫したことが大きな問題となったが、ダムの底に土砂が貯まると、その分ダムの貯水量が減るので、定期的な浚渫・排砂は必須だ。

水工研究グループ水理チームの「ダム水理実験施設」では、ダムの模型を使って、ダムの底にたまった土や砂をどうやって取り出すかについて説明していた。

洪水に耐える!「八ッ場ダム」の水流実験

水流の水位差のエネルギーを利用する電源不要の「潜行吸引式排砂管」や、既存のダムに設置することで堆砂を防ぐ「土砂バイパス施設」の模型などを公開。大型の実験施設から大量の水が流れる様を目の当たりにした子どもたちは、その迫力に目が離せないようだった。

土砂バイパス施設模型(左)と潜行吸引式排砂管(右)


丸いトンネルと四角いトンネルの違い

道路技術研究グループトンネルチームは、「丸型トンネルと四角いトンネルでは、どちらが強いか」という問いを子どもたちに投げかけ、ミニ実験を行った。

実験内容は、金属製の筒を差し込んだ、厚紙で作った丸型のトンネルと四角いトンネルの模型の上から砂をかぶせて筒を抜いた場合、砂の重みにトンネルが耐えられるかを見るというもの。

砂遊び感覚で楽しめる実験だったことや、「丸と四角のトンネル、どっちが強い?」という分かりやすい設題を選んだことが、子どもたちのハートをつかんだ。

丸いトンネルと四角いトンネル、どっちが強い?

トンネルのアーチ効果

道路技術研究グループトンネルチームでチームリーダーを務める日下敦上席研究員に、子どもたちに土木技術を分かりやすく説明するために工夫していることを尋ねてみた。

「紙でトンネルを作って補強をする工作では、ガムテープで丸く補強してくれた子には『これはアーチ効果だよ』とか、中に柱を立ててくれた子には『これは中柱だね』と、あえて専門的な説明を加えるようにしている。まずは自分で考えてやってもらい、それに解説を加えると、子どもは理解しやすいと思う」との答えが返ってきた。

トンネル作りと補強に挑戦

すべての展示を紹介することはできなかったが、当日は他にも「土石流を防ぐ方法を知ろう」「水になって旅をしよう」「土木を測ろう(トータルステーション)」「高速走行でカーブを曲がれ!」「たたいて調べて実物でみる橋の病気」「無人で走るトラックを観察しよう」などの実験や体験教室を実施していた。

どれも、実際に見たり、さわったりすることで、土木技術を身近に感じてもらい、親しみを持ってもらえるような、子供から大人まで楽しめるイベントばかりだった。

ぜひ一度は土木のイベントに足を運んでみてはいかがだろうか。きっと土木のことを見直すキッカケになるはずだ。

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建設・通販の業界紙/メディアに身を置くフリーライター。 戦前のコンクリートの“断面”を眺めるのが趣味です。

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