海外建設現場をめぐる大手商社とゼネコンの争い
ご存知の通り、日本の商社は、世界中に情報網を張っているため、建設に関する海外情報もたくさん耳に入ってくる。
「あの会社があそこに新しい工場を造る」「あの国に新たに事務所を建設する」などなど、昔は、そんな情報をゼネコンの連中に話せば、「おいしい手土産」としてかなり喜んでもらえたものだ。
しかし、商社も馬鹿ではない。ある時、こう気付いてしまったのである。
「いや、待てよ!おいしい仕事をゼネコンに譲るなんて、もったいない。商社が直接建設すれば、もっと儲かるに違いない!」と。
そして、海外での商社としての実績を元に、商社も海外で建設事業に進出し始めたワケだ。
商社と現地サブコンの関係
ちなみに、日本の商社が手掛ける建設の仕事に、日本のゼネコンは一切絡むことはない。
商社であれば、ゼネコンを使わずとも、建設現場で必要な資格などは、いとも簡単にクリアできる。商社の名前を使って求人すれば、大量の技術者を集めることも可能だ。
無論、外部から集める人間は、元ゼネコンの技術者や建築経験者となる。
そして実際の現場は、商社が直接、現地のサブコンを使って建築を進める。それを数人の日本人にコントロールさせれば良い。
そうすれば、少ない費用で、利益を上げらえる!そのほうが安くできる!と、商社マンは利益専攻の思考回路で考えたのだろう。
しかし、商社の人間は、一番肝心な「人間の心」を考えようとしなかった。全てが数字だけで、建築の現場もコントロールできると思った。
それがダメだった。
商社による海外の建設現場
どんなに現地で優秀な技術者を集めても所詮、全員が外部の人間だから、モチベーションを維持できない。
関係する技術者をとにかく手当たり次第集めて、その集団にやらせようとするが、「技術者魂」に期待している部分が大きい。
しかし、技術者たちをコントロールするために商社から送り込まれたリーダーも、半分素人だから自信をもって決断できない。
そして、そのリーダーのレベルによって、上手く進む現場と失敗する現場の差が大きいのも、商社の海外建設現場の特徴だ。
商社の馬鹿の一つ覚え「工程通り」
ゼネコン側からすれば、建築の世界は数字ばかりではない!人間は数字や理屈だけでは動かない!と知っている。
いや、正確に言えば、数字で動いてるように見えるが、それは「上っ面」だけの動きに過ぎない。
本当の建築技術者ほど、刻々と変化する現場状況に合わせて、常に最善の策を考える。工程表がどうのこうのと最初に作った予定をドンドン変えていく。
それを理解できない素人ほど、「工程通り、工程通り!」などと、馬鹿の一つ覚えのように、決まったやり方に固執する。
優秀な技術者ほど、商社を辞める?
商社も、真のやり方を理解しようともしない素人集団だから、人を評価するのも的外れの評価をする。
そして、まともなプロフェッショナルな技術者ほど、そんな現場で仕事するのは嫌になってしまう。
そして残るのは、そこそこ建築の仕事やったことがあります!というレベルの人間だけになる。
当然、建築物の品質も高くない!
それが今、商社が海外でやってる仕事の概要だろう。
ゼネコンより給与が高い商社
ただ、こうした問題点に気付き、このままじゃいけない!という商社も、当然いくつか出てきた。
最近、そんな商社の現場で、伸び伸びと仕事をしてる技術者の話を聞く機会があった。
実は私も今、そんな商社へ転職するチャンスをまた狙っているのである。
給料はゼネコンより商社のほうが高い。
ただ、それは結構狭き門で、転職のタイミングも大切になる。