土木の自由化
新元号が「令和」に決定した。初めて日本の古典「万葉集」から選ばれたらしい。
新しい時代の土木業界はどうなるか?土木技術者の理想像について、私の「妄想」を語らせてほしい。
賛否や多少の誇張もあるだろうが、細かいことは気にせず、あくまでもフィクションということで想像して楽しんでいただきたい。
業界団体の反対を押し切って建設業界を大改革
時は20××年、平成から引き続き異常気象による自然災害が多発する日本列島。
国や自治体の建設関係者はもとより、土木技術者の人手不足はますます深刻化し、技術者が常駐している地域の偏りも慢性的となった。
災害復興やインフラ復旧は追いつかず、見捨てざるをえない地域も増え、国民の日常生活にも支障をきたした。
ようやく国民は土木の重要性に気付く。土木を蔑ろにしてきたツケが回ってきたのだ。
そこで「DB9(ドボク仮名)」という民間の土木ベンチャ—企業が立ち上がり注目を集める。
やがてDB9社は政府と協力し、従来の既得権益である業界団体の猛反対を押し切り、20××年、建設業界大改革を実施する。
5年間の猶予期間を設定し、土木の自由化に踏み切ったのだ。
土木技術者たちの勇士
その結果、官民を問わず、約90%の土木技術者がDB9社に属し、独立起業した。そして国や自治体の災害現場やインフラ整備に駆けつける。
大きく分けて、陸上技術部、海洋技術部、航空技術部に分類された技術者たちは、全国の災害や震災現場に出動して現場管理をこなす。それぞれ得意の分野で技術を発揮することとなる。
日々メディアに映し出される土木技術者たちの勇士。土砂一面に埋まった災害現場に派遣され、ハイテクな測量機器を使いこなし、埋もれた道路の位置をマーキングしていく。
i-Constructionはもう古い言葉、死語となっている。
重機部の無人バックホーを空輸。航空輸送機で土砂を搬出。生活道路を短時間で確保。今まではメディアにも出る機会のなかった土木技術者は優れた能力を持つ職種と評価される。
なりたい職業トップは土木技術者
土木技術者の活躍は日本の現場だけではない。海外にも技術指導や復興に出向く。
日常から技術訓練を行い、災害時は地域のまとめ役にもなる。IT 技術や得意な理数学を利用して後継者養成学校の講師にもなる。
書類作りは慣れたもの。自治体の役員もこなし、地域のために尽くす。シビルエンジニアの真骨頂だ。
土木技術者のみならず建設従事者は社会で欠かすことのできない職種となり、社会的地位も向上。建設従事者の待遇も同時に大きく改善される。
20××年、「なりたい職業」では常に建設業がトップに入る。あこがれの職種も土木技術者は上位にランクイン。
ついに土木技術者も「先生」と呼ばれることになる。
平成の土木現場
ふと、まだ平成の我に返る・・・。
絶対的に人手不足な土木現場。今日も一人、自動追尾機能のトータルステーションを使い、暗くなるまで丁張設置。現場事務所に戻れば書類整理が待っている。
防ぐことが困難な発電機の騒音で住民さんに頭を下げる。材料屋さんのクレーン車が電話の引き込み線を切断。事故報告書と始末書で頭が痛い。
さらに長引く降雨と職人不足で作業が遅れ原価がかさむ。工程表とにらめっこ。
他人の失敗も、自然の長雨も、すべて現場代理人の責任。逃げ場なしの四面楚歌。ため息が止まらず胃腸薬が欠かせない。
一日も早くこのような土木技術者の地位と制度が改善されて、魅力溢れる職種となって欲しいと願うばかりだ。
「令和」の土木業界は、平成より良くなるだろうか?