景観設計額を学ぶ、京大のドボジョ卵
当然だが、京都大学にもドボジョの卵がいる。ただ、その数は少なく、20名に1名程度だ。
現在、そのうちの一人がM1(修士課程1年)のナナエさん。現在、川崎研究室で景観設計学を学んでいる。
景観設計学とは、「景観工学、風土分析、都市設計、地域計画、国土マネジメントなどに関する研究」を行う学問らしい。学術的な部分の紹介は別の機会に回すとして、ナナエさんが何を求めて土木を学んでいるのかが、今回のテーマだ。
ドボジョの卵が抱く、建設業界に対するイメージなどと合わせ、話を聞いてきた。
土木を選んだのは「建築学科に入れなかったから」
――土木のきっかけは?
ナナエさん 京都大学に入ってからです。入学前は建築学科が第一志望で、地球工学科(土木系)はスベリ止めでした。入試の結果、地球工学科に入り、学び始めた感じです。
――建築を学びたいと思ったのはなぜ?
ナナエさん 絵を書くことや物理の勉強が好きだったのと、「劇的ビフォーアフター」というTV番組を観て、なんとなく建築に対して良いイメージがあったからです。
――やむを得ず土木を学ぶことになった?
ナナエさん はい(笑)。実際に学ぶまでは、土木について考えたことはなく、関心自体がありませんでした。
「地球工学科にやりたいことがあるのか」悩んでいましたが、2回生ぐらいのころに、景観設計学の山口先生から話を聞く機会がありました。それで景観設計学に興味を持ちました。
――今は何を研究しているのですか。
ナナエさん 今は、京都大学のM1で、景観設計工学を学んでいます。学び始めてまだ半年ぐらいですけど。
――景観設計学を選んだ理由は?
ナナエさん ワークショップとか実践的なことができるからです。地球工学科の研究としては、異色なところがあります。学問領域が広いのも魅力ですね。
――女子は少なかった?
ナナエさん 私のクラスは50名中女子は4名で、地球工学科全体で10名弱でした。
――土木を学ぶことについて周りの反応は?
ナナエさん 高校の友だちとかと話すと、土木の仕事の具体的なイメージがない子が多いなと感じます。建築とゴッチャになっている子もいましたね。
クジ引きで研究室に入れず、院でリベンジ
――学部のころの研究室は?
ナナエさん 河川防災の研究室でした。景観設計学の研究室に入りたかったのですが、景観設計学は結構人気のある研究室だったので、学生をクジ引きで選ぶことになりました。私は外れてしまったんです(笑)。それで「防災なら役に立つかな」と思い、河川防災を選びました。
「修士に行ったら、絶対景観設計学を学ぼう」と思っていました(笑)。学びたいことを学べないまま、卒業するのはイヤでした。院試は成績順なので、景観設計学の研究室に入れました。「やっと学べる」と思って、嬉しかったですね。
川崎研究室新入生歓迎会の様子。中央奥右側がナナエさん(写真提供:ナナエさん)
――コース選びに関しては結構不運な感じですね。
ナナエさん はい(笑)。学部のころは、必要なこととして淡々と勉強してた感じですね。今は河川防災の研究室に入ったことで視野が広がったり、建築ではなく景観設計学を学べて良かったなと思っています。
――まだ半年ほどですが、景観設計学の研究室に入ってどうですか?
ナナエさん 研究に関しては、少しずつ勉強を進めているところですが、研究以外の自主企画プロジェクトに取り組みました。京都駅東南部に東九条というエリアがあります。京都駅に近いのですが、歴史的に開発があまり進んでいないエリアで、ちょうどエリアの真ん中に川が流れていて、川沿いに空き地が点在しているような場所です。この空き地を活用して、どう活性化させていくかを考えて、地元の方々に発表して意見交換をしました。
自主企画では、ただそのエリアだけを見るのではなく、その場所の歴史やそこに住む人の生活だったり、広域的に見たその場所の立地などを考えながら、自分のアイデアをまとめていきます。その一連のプロセスが面白いと感じているところです。
ゼネコンは「私にはムリ」
――将来やりたい仕事は?
ナナエさん 今のところ、まだ固まっていませんね。ただ、インターンで、建設コンサルタント会社と設計会社、ゼネコン等に行ったことがあります。インターンを通じて、ゼネコンよりは、都市計画や設計のような、より上流の仕事に興味があると感じました。
ゼネコンは転勤や夜勤が多く「私にはムリ」と思いました(笑)。仕事自体は公共的なところがあって、やりがいは大きそうだなというイメージを持っています。
――転勤はイヤですか?
ナナエさん できればしたくないですね。どうせ仕事をするなら、自分に馴染みの深い場所で働きたいからです。「地域に貢献したい」という思いがあるので、計画づくりや都市開発などの仕事に携われたら良いなという感じです。
――長時間労働はどうですか?
ナナエさん 今は苦にならないと思っていますが、子どもができたときのことを考えると、マイナスのイメージですね。しかし、長時間労働でもやりがいを持って働いている方のお話を聞くと、そのやりがいの大きさに惹かれます。
法隆寺の並木道が私の原点
――ご出身は?
ナナエさん 奈良です。法隆寺の近くです。
――良いところじゃないですか。
ナナエさん 良いところです、本当に(笑)。境内に向かって並木道があるんですが、それが私の原風景になっていて、景観設計学を学ぼうと思った原点になっているんです。
法隆寺参道の松並木(写真提供:ナナエさん)
――最後に、川崎研究室のアピールを。
ナナエさん 川崎研究室では、土木に関する空間・仕組・使い方等のデザインやその成り立ちなど、幅広い事について学ぶことができます。
魅力の一つ目は、その中から自分に興味のあることをやらせてもらえることだと思います。先生も助言や関係する本などを紹介してくださって、興味に合わせて自分で学ぶことのできる場所です。
研究以外でも、先生の紹介でプロジェクトに参加したり学生間で自主的に集まってコンペに参加したりと、実践的な経験を多くできることが二つ目の魅力だと感じています。実践的なため分かりやすく興味が湧きやすいです。この点は、私の学科の他研究室と比べて珍しいと思います。
実際参加すると自分自身の意見を伝える機会が多く、自身で考える力が身につく貴重な経験になるなと実感しました。また、そういった機会を通じて学生間の仲も良くなっているのかなと思います。
こういった学びたいことをサポートしてくれる環境が整っていることが川崎研究室の良いところだと思います。