左から、津田 ひかるさん、白石 有佳さん、川村 日成さん

首都圏の大動脈をまもる、首都高技術の麗しきドボジョたち

若手ドボジョはインフラメンテのどこに魅力を感じているか?

首都高技術株式会社(東京都港区)は、首都高速道路などの点検メンテナンスを行う首都高グループ会社の一つだ。10年ほど前までは、女性の土木技術者は皆無だったが、ここ数年は毎年のように採用を続けている。

学校で土木を学び、自分なりの「土木観」を持った新入社員にとって、点検メンテンナンスの実務がどう映っているかは、興味深い。

そこで、入社2〜4年目の女性土木技術者に集まってもらい、日々の仕事で感じたことなどについて、率直に話してもらおうと画策した。

  • 白石 有佳さん(首都高技術株式会社 技術部構造技術課)
  • 津田 ひかるさん(首都高技術株式会社 工事計画部工事計画課)
  • 川村 日成さん(首都高技術株式会社 インフラドクター部インフラドクター技術課)


大きなモノを扱う土木はカッコ良い

大石(施工の神様ライター)

現在の担当業務は?

白石さん

私は入社4年目になります。今の部署に配属されて、既設構造物の補修設計などのコンサルティング業務に携わっています。補修設計や詳細設計のほか、親会社である首都高速道路株式会社のBCPの資料づくりなども担当しています。

白石 有佳さん

津田さん

私は入社3年目で、入社以来、工事計画部に所属しています。今の部署では、首都高速道路の発注者支援業務として、積算や資料作成などを担当しています。今年度から新たに積算以外の業務も手掛けているところです。

津田 ひかるさん

川村さん

私は入社2年目です。入社した年の7月にインフラドクター部が発足し、以来ここに所属しています。インフラドクター部は、点群データを使って構造物の点検を行う部署で、私は技術開発や外販などの業務を担当しています。

川村 日成さん

大石(施工の神様ライター)

土木に興味を持ったきっかけは?

白石さん

私は千葉の出身なのですが、実家の近くに高専がありました。漠然とですが、「大きなものをつくりたいな」ということで、高専の環境都市工学科に進学しました。研究室は土質系でした。高専の敷地内には、先輩が卒業制作でつくった10数mほどの橋梁があって、これを見たときに「私も橋をつくりたい」と思いました。

津田さん

私の出身は福島です。高校1年生のときに東日本大震災で被災したのをきっかけに、防災に興味を持ち、地元の大学で土木を学びました。

最初はハザードマップの勉強がしたいと考えていたのですが、大学で学んでいるうちに、道路などのインフラを守ることに興味が移りました。研究室はコンクリート工学研究室でした。

川村さん

私は高知の出身です。曽祖父が建築家で、学校の校舎などをつくっていたという話を子どもの頃から聞いていました。それで最初は建築をやろうと思って、地元の大学に進学しました。

その大学では、1〜2年生は建築と土木両方の勉強をすることになっていました。土木を学ぶうちに、土木のほうが大きいモノを扱っているので、「カッコ良いな」と思うようになりました。耐震の研究室でしたが、私は避難シミュレーションの研究をしていました。

インフラを守る仕事は私に合っている

大石(施工の神様ライター)

首都高速技術に入社した理由は?

白石さん

私の一つ上の先輩に首都高技術に入社した方がいて、「スゴく働きやすい会社だよ」というお話を聞いたのがきっかけです。

先ほど卒業制作の橋梁の話をしましたが、当時この橋梁は古くなっていて、渡ることができませんでした。それが「もったいないな」という気持ちがあって、点検や補修を通して橋を守ることの必要性を感じていました。

公務員やコンサルにも興味はあったのですが、公務員は発注者なので、自分で直接インフラを治したり守ったりするわけではないし、またコンサルは補修には関わってはいますが、基本的に設計業務が主で、やはり直接治したり守ったりするわけではない。

そんな時、先輩の話もあって、首都高速道路を守る仕事はどういうものなのだろうという興味が湧き、首都高技術に入社しました。

津田さん

大学の研究室の先生がたまたま首都高速道路株式会社のOBだったので、首都高技術についていろいろ話を聞く機会があり、また首都高技術に入社した先輩も何人かいて、私にとって身近な会社でした。

もともと「災害のときに役立つ人間になりたい」という思いがあったので、インフラを守る首都高技術の仕事は私に合っているなと思ったので、入社することにしました。ずっと福島にいたので、「東京に行きたい」という思いもありました(笑)。

川村さん

土木の中でもとくに橋梁に興味がありました。新たな橋をつくるより、今ある橋を守ることに関心がありました。それと、ずっと高知だったので、「都会に出て働きたい」という思いもありました。就活中に、それらを実現できる首都高技術を見つけました。

説明会やインターンなどを通じて調べていくうちに、橋梁の点検などのほか、インフラドクターなどの研究開発にも興味がわき、入社を決めました。



橋を守るためには、古いことも知らないといけない

大石(施工の神様ライター)

首都高技術に入社してどうですか?

白石さん

学校では新しい橋をつくる勉強をしていたのですが、入社して面白いと思ったのは、古い橋が今の設計基準に照らして、何がどれだけ足りないのかとか、昔と今の橋の違いを踏まえた上で、発注者がどうやって橋を守っていこうとしているのかなどを全部汲んで、設計する必要があることです。大変な面もありますが、いろいろ吸収できるので、面白いです。

橋を守っていくためには、新しいことだけじゃなく、古いことも知らなければならないことを痛感しました。勉強することはまだまだたくさんあるので、引き続き吸収していきたいと考えているところです。

下水道の暗渠の上に架かる橋梁の補修設計を担当したのですが、管理が行き届いていなくて、足りない部材が多くて、大変でした。現場調査で丸一日現場にいたときは、マスクもしていたのですが、臭いがキツくて、大変な現場でした(笑)。

電話中の白石さん

津田さん

防災をしたいということで入社したのですが、やったこともない積算業務がメインでした。現場に出たこともなかったので、施工手順など何もわからない状況で設計書を組むのは、正直わけが分からなかったです。

過去の設計書を見て、先輩にアドバイスしてもらいながら、必死にやっていましたが、最初は先輩に何を聞けば良いのかもわかりませんでした。舗装を打ち替えるだけでも、たくさんの手間とお金がかかるということを知ることができたので、興味深かったですけど。

大変なのは、基準がどんどん変わることです。一度やり方を覚えても、次にやるときには同じ方法が使えなくなることもあります。そうなると、またイチから覚え直しです。正直ツライです(笑)。でも、なんでも聞けるほど、先輩方は面倒見が良いし、職場の雰囲気も良いので(笑)。

パソコン作業中の津田さん

大石(施工の神様ライター)

川村さんは?

川村さん

インフラドクターは構造物の点群データをとって、3Dモデル化することで、図面や施工に必要なデータなどを作成できるシステムです。そういう部署なので、技術開発関係の業務が多いです。私も1年目から開発関係の業務を担当していました。

私が関わったのは、舗装のひび割れなどの路面性状に関するデータを抽出するシステム開発だったのですが、それが2019年に技術的に確立したので、今それを売り出しているところです。

1年目から重要な部分を任せてもらえたのは、嬉しかったですし、今まで世の中になかった技術の開発に携われたのは、楽しかったです。次は、同じ手法を使って、トンネルのコンクリートの浮き剥離を検出するシステムを開発中です。

システム開発は初めてなので、勉強することが多いので、大変です。細かい点については、点群データをとるシステム会社の方などに直接聞いたりしています。

インフラドクターの業務は、首都高業務と外販業務とに分かれているのですが、私は外販業務の担当なので、ほとんどが外部の方々とのお仕事で、出張などで外に出ることも多いです。

カメラ目線の川村さん

インフラを守る仕事を実感するためにも、現場に出たい

大石(施工の神様ライター)

今後やりたい仕事とは?

白石さん

補修設計のスキルをもっと上げたいです。そのためには、点検のやり方、点検結果のまとめ方についてもっと理解したいと思っています。点検した人がどういう思いで、この損傷ランクをつけたのかわからないので。また、点検業務についても、もっと詳しくなりたいです。

津田さん

やっぱり現場に出たいですね。現場を知っていた方が技術力も上がるだろうし、積算をする上でも、発想が違ってくると思うのです。もともと防災をやりたかったので、インフラを守る仕事をしているという実感がもっと持てるとうれしいです。

川村さん

点検に関する基礎的な知識がないまま、インフラドクターの開発業務に携わっているので、まずは点検に関する実務を経験したいという思いがあります。
この記事のコメントを見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
「ドボクTECH」の時代が来る。ドローン点検は建設業界をテック化できるか?
「見るのではなく、”観る”」 熊谷組ひと筋34年の現場所長が語る”現場の極意”と”無人化施工”
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
【珍アイディア】「開口部をふさぐな!」100円ショップを活用して、設備用の点検口を他業者に明示する方法
トンネル点検をMRで簡単に!CIM連携も可能な「鴻池組の新技術」とは?
なぞるだけで橋梁損傷をCAD図面化できるアプリ。AI橋梁損傷診断システムも開発するオングリットとは?
基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
モバイルバージョンを終了