工事中止で一人親方の生活はどうなる?補償は? 全建総連に緊急インタビュー

工事中止で一人親方の生活はどうなる?補償は? 全建総連に緊急インタビュー

工事中止で一人親方の生活はどうなる?補償は? 全建総連に緊急インタビュー

このままでは、建設職人の生活が成り立たなくなる?

【新型コロナ】相次ぐ工事中断で、小規模建設会社は倒産・廃業か?』では、スーパーゼネコンや準大手などが工事を一斉中断したため、下請を担う小規模建設会社らの倒産・廃業を危惧する声、また建設職人らが一気に仕事を失っていることへの戸惑いの声を伝えた。

建設労働者の権利保護を訴えている全国建設労働組合総連合(全建総連)の各組合のもとには、小規模建設事業主、一人親方や請負で働く労働者から、「このままでは生活が成り立たなくなる」と日々、相談が相次いで寄せられている。

「先手を打ち、末端で建設現場を支える建設会社事業主、労働者、一人親方の救済を断行し、国からの何らかの補償について全建総連全体として要望する」と語る、全建総連 書記次長の奈良統一氏に、今の建設職人の苦境について緊急インタビューを行った。


3密どころではない、1000人を集めた朝礼も

――ゼネコンの工事現場が一斉に中断している。

奈良統一氏 最近まで、大手ゼネコンの現場では400~1,000人を集めた朝礼を普通に実施していました。その都度、組合員から感染拡大を危惧する声が上がっており、それぞれの組合で労働基準監督署、ゼネコン本社、各現場に要請をして、是正を働き掛けてきた経緯があります。

感染の懸念は建設現場でも深刻ですから、感染拡大防止の観点から現場を中断させるということは当然のことです。

一方、我々の組合員は零細事業主、そこに雇用されている方々や一人親方などですから、現場を中断した際は休業補償が必要です。しかし、現状は補償の担保がないままに現場を止められてしまっています。

政府は個人事業主やフリーランスの救済を強調していますが、一人親方はフリーランスの最たるものです。ですから、零細事業主や一人親方の方々に対して、当面は利用しやすいつなぎ融資や何らかの給付金など、いち早く補償の手立てを願いたい。

建設職人の補償は不透明という実態

――ゼネコンに対してはどのような所感を。

奈良 元請けのゼネコンも、現場を止めると完成引き渡しができないため、当然、請負代金の受け取りもできません。そのため、下請けに対してのお金の支払いには、様々な問題があります。

まず、ゼネコンは発注者と協議などをして現場を止めることができ、一定の補償もしますが、その場合、実際に雇用している労働者に限定し、作業している下請けの建設職人まで補償の対象になるかと言えば現状、まったく不透明です。

ゼネコンと下請けが明確に契約を交わしていても、国土交通省は新型コロナウイルスにより、現場を止めることについては「不可抗力」と判定しており、その契約が履行されない可能性もあるので、国も融資や給付金なりの救済策を示してほしいです。


書面による契約すらない一人親方はどうするか?

――一人親方はいかがでしょう?

奈良 私たちの組合員の多くは一人親方で、そもそも書面による契約を交わしているかどうかさえ怪しいグループ請け、人のつてで現場に入る仲間が多く、これらの一人親方は現場が止まったことをきちんと書面で明らかにし、救済を求めること自体が困難な方もいます。こういう人たちをどのように救済していくかを一番に求めたい。

一人親方の中には、仕事のある期間はその現場に入り、その現場がなくなればほかの現場に移動する方もいます。一方、専属的に働く一人親方もおり、その方は現場が止まれば生活により困窮することが容易に想像がつきます。

ただし、今回のように工事中断が一斉に雪崩を打つようにして決まるとなると、これは本当に深刻な事態です。このような一人親方が仕事をほしいと言っても、「今まで人のつてで仕事を見つけてきたのだから、自分で食い扶持を確保しなさい」と言われてしまうんです。

今回の緊急事態宣言により、スーパーゼネコンや準大手ゼネコンの現場が一気に止まったのに、職人たちは食い扶持を自分たちだけで確保しなさいというのは話がおかしい。やはり、本人の申し立てによる休業補償を国は認めて欲しい。作業現場を支えているのは、こうした一人親方ですから。

東京と地方で、建設職人の相談内容に違い

――一人親方からはどのような相談が寄せられている?

奈良 全建総連は全国組織で、各地に組合がありますが、各組合にはかなりの相談が寄せられています。特に、東京の組合員からは、事業者であれば融資を早急にできる方法、一人親方であればなんとか食いつなぐ方法を教えてほしいという声が多く集まっています。

――東京以外の、地方の組合員からの相談については?

奈良 地方では、加入組合員は住宅現場で作業することが多く、ゼネコンではなくハウスメーカーやビルダー、工務店での仕事ですから、感染症対策により現場が止まっていることはあまりありません。

そのため、地方の組合員からは差し迫った声は出てきていません。むしろ、新型コロナウイルスにより、中国の設備製品、厨房設備が入ってこないので、現場が進まないという話は聞いています。

問題は、今回の感染症対策で営業マンがお客様に説明する機会が大幅に減り、中には営業そのものを中断しているハウスメーカーやビルダー、工務店があることです。現在は工事が行われていても、このままでは住宅建設の工事が先細りする可能性があり、そのうち地方の組合員からも悲鳴が聞こえるようになる可能性があります。

実際に、新規の住宅工事の仕事がないので、5月以降どうすればいいかという話はうかがっています。簡単なリフォーム工事でも、中国から資材が来なければ納入できなくなり、工期が設定しにくい状況ため、受注も決まらないんです。


小規模建設事業主には融資、職人には給付金を

――具体的に、建設職人はどのように救済すればよいでしょうか?

奈良 請負で働く労働者、一人親方は、政府の救済から抜け落ちてしまっている実態があります。雇用保険を活用した給付金についても、雇用関係にある労働者が対象になっています。

ゼネコンの現場で働く一人親方は、日給月給の割合が半分から1/3と言われており、当組合員は3~4割が一人親方です。ですから、現場で仕事がないとすぐにでも困窮してしまうんです。職人自らも仕事を探す努力を当然しておりますが、努力にも限界があります。

政府の持続化給付金は、法人が最大200万円、個人事業主が最大100万円の給付金を受けることができるといいますが、申請はこれからです。

新型コロナウイルス感染症の影響で、売り上げが前年同月比で50%以上減少している人、資本金10億円以上の大企業を除き、中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者である事が支給の対象補償です。しかし、先ほども申した通り、そもそも請求書など書面のやりとりをしていない一人親方もおり、50%減収をどう証明できるかは不明です。

また、一部のゼネコンでは、休業補償を明確に示しているところもありますが、不明なゼネコンも多いのです。さらに請求実務はこれからで、契約書面のない一人親方まで対象となるのかは、なお不透明です。組合への相談も日ごとに増えており、感染防止の徹底と、補償とセットの休業が切実に求められています。

今回の、一斉工事中断について、一人親方や請負で働く労働者などについて、フリーランスへの救済と同様の配慮を求めることを全建総連として行っていきたいと考えております。

具体的には、重ねて申し上げますが、事業主についてはつなぎ融資、請負で働く労働者や一人親方についてはこのままでは生活が成り立たなくなりますので、給付金の付与をお願いしたいと思います。

ピックアップコメント

安定性を求めるなら公務員になりなさい。それが無理ならせめて勤め人に。税金は払いたくない。大して優秀でもない。でも保証は欲しいこれを一般的になんというのでしょう?先が分からない、不安だ、だから目先の手取りじゃなくて安心感からもサラリーマンになるもんじゃないの?雇用保険すら払いもしない立場の人が収入減の補填、って甘えすぎ優秀でさえあれば・・・遊び人気質無いなら貯蓄それなりにあるでしょ?

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。