『未来のけんせつ小町よ、大志を抱け!』 外大卒・先輩小町からの教示

外大出身なのに建築系技術職を選んだ私

外国語大学出身なのに、建築系技術職。これを人に話すと、大半の人に驚かれる。それもそのはず。語学系から、全く専門外の理系職種である。

まず、私は新卒で測量会社に技術職として入社する。そこで初めてCADに触れた。ある程度CADの使い方が分かってきた頃に退職(早い!)し、何社か派遣社員として勤務した後、今度は重機を扱う機械系の事務所に入社した。

そこでもCADを使用して業務をしていたのだが、そのうち、やはり自分は建築系に戻りたいと思うようになる。そして、ゼネコンにて積算業務を経験する。これがまた、難しい。

もちろん、CADを使用して図面を作成するのも慣れないうちは難しいのだが、既にある建築意匠図・構造図を見て、(私の場合は建具積算が主な担当だったのだが)数量などの拾い出しをしていかなければならない。

先輩社員が教えてくれ、数をこなせば段々と拾い出しはできてくるようにはなるものの、やはり紙切れ(図面)から、実物がどのような納まりになっているか理解するには非常に苦労した。

いや、別のゼネコンの設計部にて勤務している今でも正直苦労している。上司に怒鳴られるなんて日常茶飯事だ。

点と点が線になって繋がる日が来る

私が特に苦労しているのは、建物ができた頃にはもう既に見えなくなっている、基礎部分の鉄筋の組み方やコンクリートのボリュームなどだ。

基礎工事を行っている現場には自ら手を挙げて積極的に行かせてもらったり、また普段自分が歩いている時には、見える建物がどんな風に一から建てられたのかを想像したりして工夫している。

正直、決して楽な道のりではない。図面という一枚の紙切れから建物細部までを頭の中でイメージできるようにならなければ仕事にはならないし、これこれを勉強したから分かるようになりました、というものでもない。

現場の監理をしていれば、配筋検査や消防検査、施主様に引き渡す前の社内検査等、実に様々な検査がある。上司と現場監督、各検査機関の担当者が話しているのを必死で聞いても、最初は正直ちんぷんかんぷんだ。

ここで一つ強調したいことは、分からなければ”会社の他部署の先輩社員たちに聞く勇気も必要”ということだ。

部署という垣根を飛び越えていろいろな人に聞きに行く私を見て、嫌な顔をする社員も少なからずいる。しかし、やはり自分が分かるまでとにかく聞いて、実践して、納得して、消化させることが大切である。

(もちろん、教えて頂く前には自分なりに考えたり調べたりすることは必要だ。そして、社員の方に時間を割いて教えて頂くわけなので、先輩方の空いた時を見計らって行くことも忘れずに。)

最初は、情報が点と点でしか見えず、俯瞰できず辛く苦しい。だが、これも日々考えながら数をこなしていくうちに、段々と点と点が線になって繋がる日が来る。

しばらくは苦しく自分との闘いだ。途中で心が折れることもあるかもしれない。だが、それでもいい。

心が折れて何もやる気が起きなくなったときは、無理にやる気を起こさなくていい。ふと、また「もう一度やってみようかな。」と思える時が来る。怠けすぎず、頑張りすぎずだ。

足を運んだ分だけ、自分の肥やしになる

現場には積極的に出かけよう。現場に行った数だけ、後々の自分の肥やしになる。

現場監督が、現場サイドならではの立場で色々と教えてくれるし、中には、職人さんが作業の手を止めて部材の切れ端を持って来て、「これがこう取り付くんだ」と丁寧に教えてくれることもある。

私の場合がそうだった。時には、相手の仕事の邪魔にならない程度に「甘える」ことも大事である。

ただ、私が日々苦労していたことだが、現場に行って「あ!ここはこういう風に納まるんだな!」と納得して、オフィスに帰り、早速CAD上でいざ作業しようとする。

しかし、製図できないのだ。「何故だ?!さっき現物を見てきたのに!キーッ!!!」ということが何度かあった。これはやはり、分かったつもりにはなっていたものの、結局分かっていなかったということになってしまう。

これも、何度も何度も現場へ足を運び、その都度納まりを確認し、図面だとどういう風になるかを同時に考え、現場写真を撮り、オフィスでそれを何度も見返す。その繰り返しと根気強さで、自分が納得し分かるようになる日が来る。

それが人によっては3カ月かもしれないし、1年かもしれないし、はたまた3年、5年かもしれない。いずれも、オフィスでパソコンとにらめっこしていても進まない。

例え、普段の仕事が内勤であったとしても、まずは自らどんどん現場に足を運んで、現場と図面を見比べてみて欲しい。

人によって表情を変える”建築”の奥深さ

建築の仕事は実に奥が深い。例えば、絵画等の芸術作品なんかは、個人個人の見方や捉え方によって全く変わってくるし、それらを創っているアーティストもある意味、鑑賞者にその判断に委ねる面もある。

自分のインスピレーションに忠実に、内なるものを外に出していくわけだから、その人独特の生き様だったり個性が色濃く反映されてくる。私は建築士ではないが、いわゆる「建築家」と呼ばれる人たちの仕事もこれに近いと思う。

私は大学在学中にスペインへ短期留学したのだが、かの有名なアントニ・ガウデイの建築物は、もはや「建築」というよりは「作品」であると感じた。建物そのものがアートであり、人々の心に訴えかけるものがある。

もし、建設業界へ進むことを迷っている女性がいれば、先述したような不安があるとしても、勇気を持って飛び込んでみて欲しい。

そこで経験してみて、「あれ、やっぱりこれは自分が求めているものとは違ったな」と思えば軌道修正すればいいし、「なんだ、不安だったけど意外と自分に合っているな」と思えばその道を極めればいい。

全くの未経験から内勤技術者(積算業務、CADオペレーター等)を目指す女性たちにとって、この記事が少しでも未来のあなたの選択を広げられることを願っている。

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外国語大学卒、建築技術職という異色の経歴を持つ。現在は建築会社にて積算業務に従事しながら、駆け出しライターとして日々奮闘中。熱しやすく冷めやすい。
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