リノベ業界の開拓者 住環境ジャパン
1977年に創立し、リノベーション・リフォーム会社としては業界最古参として、存在感を示す株式会社 住環境ジャパン。
創立当時、新築全盛だったが、将来必ずストック時代を迎えると予想。戸建てのリフォームから出発し、現在はマンションを中心としたリノベーション工事を手掛けている。
同業他社との差別化としては、「ワンストップリノベーションサービス」の追求。物件探しから、予算の相談、生活スタイル、間取り、デザイン、すべて顧客が実現したいライププランのリノベーションを行うため、100%に近い満足度を実現するという。
リノベ業界の開拓やそれを実現する施工のあり方について、株式会社住環境ジャパンの深見栄太常務取締役、坂田敏典部長にそれぞれ話を聞いた。
昔はリフォームではなく”増改築”
――これまでの歩みは?
深見 建築住宅一筋です。最初は、内装・インテリアの会社につとめ、24歳の時に住環境ジャパンに入社し、住宅戸建て・マンション問わず、リノベーションの業務を行っていました。
30歳には不動産会社に一度転職をし、賃貸マンションを建設し、ファンドで運用する業務に携わりました。今から10年前の34歳のときに、再度、住環境ジャパンに戻り、リフォームやリノベーション、太陽光発電などの業務を行っています。
――創業から現在までは?
深見 住環境ジャパンは父が創業し、43年になります。当時は新築全盛時代でありながら、「将来的に住宅ストックの時代が必ず到来する」と見込んだ父が、リフォーム・リノベーション専業会社を立ち上げました。リノベーション業界では最古参の会社です。
当時は、リフォームという言葉すらなく、父は”増改築”という単語で説明していました。また、20年前までの業務の多くは戸建て住宅のリフォーム・リノベーションでしたが、今はリノベーションに関しては98%がマンションで、時代の流れを感じます。
――日本におけるリノベ―ション業界の特徴は?
深見 日本の戸建て・マンションの環境は、世界的に見ても過酷なんです。四季があり、湿度が高いため、木造は20~30年を経つと改修する必要がありますし、マンションの躯体自体は長持ちしても、内装は30~40年が限界です。
実際、初期のタワーマンションのリノベーションもいくつか手掛けていますが、この10年でタワーマンションが次々と建設されており、わたしたちの出番も一層増えてくると見込んでいます。
顧客の物語をつくれることがリノベの魅力
――今、多様化しているリノベーションで重要なことは?
深見 リノベーションは、単に古い住宅を新しくすることと考えられがちですが、「用途を変える」ことも大きな目的です。つまり、「家を起点とした、家族の物語をつくっていく意識」が必要なんです。
たとえば、「リビングのドアをつけずに広くしたい」というお客様の思いがあるのなら、「なぜ広くしたいのでしょうか」まで深く伺うこと。そうすると、「リビングで子どもを学ばせたいから」という物語が浮かび上がってきます。こうしたヒアリングを積み重ねていくと、家族の歴史、つながりも見えてきます。
私たちは物語をご家族のみなさんと一緒になって考え、実現していく。これが、この多様性の時代の要求に応えることにつながります。
一方、新築の分譲住宅やマンションは、データと想像、確率論で建築していくため、どうしてもご家族の物語が欠如してしまいます。
また、人の暮らし方自体も、20~30年前と比べて次々と多様化しています。
例えば、今はテレワークや在宅勤務の普及に伴い、家の中にオフィス空間が欲しいという要望も大きくなっていますし、LGBTの方々は、片側に大きく依存しない生活の在り方や対等な生活空間の形成をリノベーションに求めている方も多いです。
元々の住居空間は画一的でしたが、弊社では住居の目的自体を変えていく、つまり住まわれる方の人生観、物語観を実現することを目指しており、このことこそがリノベーションの魅力であるとも考えています。
物語の幅を広げる”ワンストップリノベーション”
――住環境ジャパンのリノベーションは他社と何が違う?
深見 「ワンストップリノベーションサービス」ですね。弊社では、お客様に物件探しから積極的に提案しています。そのほうが実現できる”物語の幅”はさらに広がりますし、より満足度が高い物件に仕上がります。
新築や再販住宅は7割満足すれば満足度が高いほうですが、弊社では物件の立地から、予算の相談、生活スタイル、間取り、デザイン、すべてお客様が実現したいライププランや物語に合致するリノベーションを行うことで、100%に近い満足度を目指しています。
ただ、「物語をつくる」というのは美しい響きですが、とても手間がかかりますけどね(笑)。これから、ワンストップリノベーションサービスの市場を開拓し、頂点を目指していきたいと思います。
――その一方、定額制商品もそろえているが。
深見 安くて良質な不動産物件は、エンドユーザーには直接的にはなかなか回ってきません。たとえ物件があっても、ローンの金額のことを考えると決断が鈍り、そのうち不動産業者が購入してしまいます。
そこで弊社が面積ごとにリノベーション工事費用を定額にすることで、購入の決断が遅れる理由を取り払い、不動産物件も買いやすくご提案しています。
リノベーションは失敗が許されません。この予算であれば、この商材を使えば間違いないという経験から、わたしたちがトータルコーディネートしたものは顧客にも説明しやすく、理解もしていただきやすい。
すると、顧客は実現したい物語の形成や間取りに集中することができ、理想の家と物語が短時間でマッチングできます。限られた予算内に収めるための打ち合わせもミスなく、満足度も最大限引き上げることが可能です。
――建築家とも提携したが。
深見 今回、同じ世田谷区の石川素樹建築設計事務所と組んで、”建築家と作る”定額制リノベーションサービス『MADE BY ARCHITECT』を開始しました。
建築家に家をつくってもらうと、「いいけれど高くつくよね」という印象ですが、それをどうすれば安いコストでリノベーションを行うかを仕組み化しました。
今、団地のリノベーションにも力を入れつつあります。築40年でエレベータなしの団地であれば、1,000万円で購入できるかもしれません。
お客様の中には、「建築家に相談して内装にこだわり、1,500万円かけてリノベーションしたい」という要望もあります。建築家と組むことで、リーズナブルな費用で、建築家がこだわって設計したリノベーション住宅に住むことができます。
それに今、社会に埋もれている優秀な建築家はたくさんいます。そういう建築家の仕事の経験にもつながり、安定的な建築設計の仕事の供給にもつながります。
建築家、顧客、われわれの三者が相互にWIN-WINの関係を築き上げるプラットフォームを実現したいと思います。