「プレミアムフライデーとは無縁」週休2日すら嫌う建設現場の実情。国が進める“週休2日制モデル”の落とし穴とは?

プレミアムフライデーどころじゃない!休日が少ない建設業界

こんにちは、『釣りバカ日誌』のハマちゃんを信奉している鯉太郎です。

建設業界における若手技術者の確保は厳しい状況が続いています。田舎は特に悲惨な状況です。

若手確保を妨げる最大障壁の一つは、建設業界における休日の少なさだと指摘されていますが、たしかに最近の若者は小学生のときから週休2日ですから、土曜出勤が“普通”の建設業界への就職を避けるのは当然かもしれません。

かくいう私も毎週土曜日が休みの仕事に就いてみたいです。

さて、私の実感だけでなく、厚生労働省の「就労条件総合調査結果」(平成27年)を見ても、建設業はいかに休みが少ないかが分かります。

  • 建設業界で「完全週休2日制」を導入している企業は40%
    ※金融保険業は91.2%
  • 建設業界における労働者1人あたりの年次有給休暇の平均取得日数は7.1日
    ※電気・ガス・熱供給・水道業は13.6日

しかもこのデータは、建設業の「事務職」も含んだデータです。

現場レベルでの参考データとして、次に日本建設業連合会(略称:日建連)の調査を見てみると、建設現場がいかに完全週休2日制から縁遠いか分かります。

  • 完全週休2日の現場は3%
  • 4週8休の現場は5%
  • 4週4休または5休の現場は83%

このデータは、国土交通省や地方自治体、高速道路会社などが発注した大型工事598件(3億円以上の2013年11月~2014年10月に竣工した工事)に関する日本建設業連合会の調査結果です。

しかも調査対象は、コンプライアンスが整っていると思われる、日建連土木本部(公共積算委員会)に所属している有名企業40社です。

最近、プレミアムフライデーなるものが話題になっていますが、建設業は週休2日すらままなりません。

国が進める「週休2日制確保モデル」とは?

建設業の休日の少なさは、若者の就業離れにつながっています。そこで国土交通省は建設業の若手就業者を増やすために「担い手3法」をはじめ、様々な待遇改善策を打ち出しています。その中で私が一番注目している施策の一つが、国交省や自治体が試行している「週休2日制確保モデル」です。

2014年度以降、ほとんどの地方整備局が発注者として「週休2日制確保モデル」を実施し、長野県や茨城県など地方自治体にも取り組みが拡大しています。

しかし、休みが増えても純粋に喜べず、むしろハタ迷惑だと思う建設技術者や建設技能者が多いのも事実です。

建設業には、週休2日間を実現するのが難しい、複雑な事情があるのです。

では、そもそも「週休2日制確保モデル」とは何なのか?

まずは「週休2日制確保モデル」をめぐる報道を抜粋します。

国土交通省は、各地方整備局が直轄事業で取り組む「週休2日モデル工事」の15年度の実施状況をまとめた。2016年1月15日現在、実施件数は51件(14年度は6件)。北海道開発局は16年度実施へ検討中。近畿地方整備局は、15~16年度に行うモデル工事を抽出中で、これが加わると全体で60件程度に達する見込み。担い手確保・育成をうたった改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針に明記された週休2日の確保に向け、モデル工事を通じて課題を把握し、解決策を検討する。
日刊建設工業新聞 [2016年1月19日1面]

国土交通省が都道府県に行ったアンケートの結果によると、週休2日のモデル事業を実施しているのは9団体。8団体が「実施の検討を行っている」と回答。既に「週休2日制確保モデル工事」の実施に取り組む東京都は、土木分野の中核となる建設局が16年度から実施件数を拡大する方針を示す。
建設通信新聞[2016年6月3日1面]

このように各地方整備局、地方自治体で取り組みが拡大している「週休2日制確保モデル」ですが、各地方整備局の中でも最も本気度が高いのが、中部地方整備局だと言われています(ドローンなどi-Constructionの取り組みも、個人的に中部地域が積極的なイメージがあります)。

中部地方整備局は、入札段階で「完全週休2日制」の実現性が確認できる入札参加者を優位に評価(10点差)し、工事成績評定にも反映させます(※2016年度は2015年度の約4倍となる21件で実施予定)。

中部地方整備局の「完全週休2日制確保モデル」とは?

中部地方整備局の「完全週休2日制確保モデル」の施行概要について、ざっくりまとめると・・・

■「完全週休2日制」を選択し、その実現性が確認できる入札参加者を施工体制確保の確実性にて優位に評価(10点差)。

■施工中は、進捗状況等が把握できる工程表を受発注者間で共有。

■受注者の責にて、土日連続の取得率が80%未満の場合は工事成績評定 にて最大10点の減点。

1.入札段階

内容
完全週休2日について選択申請 「完全週休2日制」を実施する入札参加者は「完全週休2日」の確保が確認できる「概略工程表」を参加申請時に提出(実施は任意選択)
施工体制確認型総合評価 提出された概略工程表をもとに「完全週休2日」が可能と判断される者は、「施工体制確保の確実性」にて優位に評価※

※評価基準

  • 配点15点/15点:適切な施工体制が十分確保され、要求要件を確実に実現できると認められ、「完全週休2日」を実施する場合
  • 配点5点/15点:適切な施工体制が概ね確保され、要求要件を確実に実現できると認められる場合
  • 配点5点/15点:適切な施工体制が十分確保され、要求要件を確実に実現できると認められ、「完全週休2日」を実施しない場合

2.施工段階

内容
受発注者間で工程管理を共有 工事管理スケジュール表(仮称)や進捗状況が把握できる工程表を作成し、受発注者間で工程を調整および共有

3.完成段階

内容
取得率を工事 成績に反映 申請時に「完全週休2日制」を申請し評価された者において、受注者の責によって「完全週休2日」の取得率が80%未満の場合は、工事成績評定にて最大10点の減点

以上のような感じです。

とても素晴らしい取り組みですが、現場では「絵に描いた餅」だという批判も少なくありません。

土曜日も休むと、休んでばかり?

休日に関する意見は、人それぞれです。施工管理技士コミュニティサイト『現場の神様』のコメントを見ても、多種多様な意見があります。

会社によっては土日休みの建設業界もありますし、逆に小さな建設現場では土日もやっていて近所から騒音の苦情がくるそうです。

けんせつ小町です。現場は基本、日、祝日休みなので、土曜も休みになると休んでばかりかと。笑

土曜日、祝日に休みたいと思う人はこの仕事に向きません!それでも、最近は交代で土曜休めるようなりました。明日は現場休みの予定でしたが、雨のせいで休みなくなりました。しょーがねーなと、思うくらいです。

「土日は休みたい!」そんな普通の人の感性を忘れずにもっていることこそ、これからの建設業には必要だと、私は思うけどなぁ?「今は出来ない」は、決して「これから先も絶対に出来ない」とはイコールにはなりませんし、したくないとは思いません?

最近は、週休2日制に慣れたせいか、日曜だけでは疲れが取れぬ

皆様の話しは本州なら通用するかも知れませんが、四国では無理だと思います。大手の出先なら可能かも知れませんが、地元で大手と言われるところでも、日給月給の会社や基盤の小さな会社は社員ではなく、つてで雇っている人達の大半が日給制です。

仕事内容によっては盆休みもそこそこにして仕事しています。

休みに関係なく、この業界で働きたいから働く❗じゃダメなのかしら?

モデル現場は休みでも、他の現場に回される!

そして次のデータは、長野県建設部建設政策課技術管理室が「週休2日制確保モデル」の建設現場に従事している技術者・技能者を対象に、「週休2日制についてどう思うか?」という意識調査を実施した結果(中間集計)です。

ご覧のとおり、週休2日に対する好意的な意見がかなり少ないです。

【質問】週休2日制についてどう思うか?

建設技術者の意見

・メリット、どちらかというとメリットだと思う  27%
・どちらでもない  41%
・デメリット  32%

建設技能者の意見

・好ましい  31%
・不要、どちらかといえば不要  69%

意見としては、次のようなものがあったそうです(※表現は変更しています)。

モデル現場は休みでも、会社は休みじゃないから、他の現場に回される。

天候不良を見込んだ工程表を作成できるのは良いが、台風など想定外の不稼働日が多く、結局土曜日も出勤しなければならない。

土日は休みと言いながら土曜日に出勤する場合もあるので、周囲に説明がつかない。

この長野県の調査によれば「週休2日制確保モデル」としての休工日に、ちゃんと休んだ人は65%だったそうです。

日給制が多い技能者にとっては、週休2日制は稼ぎを減らすことにしかならないので、週休2日制に反対するのは当然かもしれません。施工管理者にとっても、工期が迫ってくれば書類作成のために、土曜日に出社することもあり得ることです。

それでも「週休2日」に期待する私

「週休2日制確保モデル」は、たしかに「絵に描いた餅」なのかもしれません。しかし、これから日本の建設業界は、熟練の技能者たちが大量退職していく時代に突入します。いくらi-Constructionの普及に期待しても、若者の就業がなければ建設業を支えることはできません。国の発案で「新3K」(給与、休暇、希望)なる造語も誕生していますが、そのような言葉遊びに失笑している技術者も現場にはいます。

週休2日を確保するためには、国や自治体による制度改革に加え、建設会社も待遇改善を推進しなければなりません。建設業界全体の仕組みを変えるため、「週休2日制確保モデル」を浸透させ、課題を浮き彫りにしていっていただきたいものです。

そして週休2日の確立のために、発注者側にも工期について色々と理解して欲しいな、という甘ったれた考えも頭をよぎるのでした。

では!

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映画『釣りバカ日誌』の浜ちゃんを信奉している建設業界の平凡なサラリーマン。万年平社員こそ、わが理想としているが、年齢を重ねるとなかなかそうもいかない現実と日々これ格闘中。
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